第6話:思い出に…
水族館に行って、イルカと戯れて(ガラス越しだけど)ラッコとにらめっこして(ラッコにはしかとされたけど)…隣にはずっと龍樹さんがいてすごく楽しかった。私が馬鹿するたびに笑ってくれる、からかってくれる。いつもより近い龍樹さんとの距離。あぁ−、ドキドキしてしょうがないよ。
帰りの車の中、突然龍樹さんは私に問いかけて来た。
「なんで俺と遊ぼうと思ったの?」
「えっ?!」
私は内心焦りまくった。普通、このタイミングでそんなこと聞く?私はバイトを辞めるまで、自分の気持ち隠し通すつもりなんですってぇ…。
「いやっ、実はあたし恋愛について悩んでてぇ。龍樹さんにまた相談しよっかなぁ、なんて思って。」
「ふぅん、じゃあ告れ。」
「早っ!もっと話聞いてからにしてくださいよ。」
なんとかごまかせたみたいで、私はほっと息をつく。意外と私って嘘が上手なんじゃない?
「告白しないの?そいつに。」
そう言われて私は言葉に詰まった。言いたいって気持ちは溢れそうなくらいあるのに、それができないってのはすごく辛いんだ。
「…今はまだ言わないです。その人のことすごく好きだから。」
「…なんで?好きなら当たって砕けろや。」
「うぅん。その人、彼女いるし。ほら、例えば龍樹さん告白されたりとかしたら困るでしょ?」
「困る…う−ん。嬉しいことは嬉しいんじゃない?つーか、告白すんのに相手の気持ちばっかり考えてたらダメや。」
私は喉まででてきた言葉を、あと少しのところで飲み込む。好きって言いたい。でも、言ってしまったらこれから先気まずくなっちゃうし…。とりあえず今日だけは、彼氏として私といてくれるんだから、台なしにしたくない。
「本当にその人のこと好きだなぁ。あたし、その人なら思い出にエッチしたいもん!」
私は今までの雰囲気を蹴飛ばすように明るく言った。
「激しい愛だなぁ。」
龍樹さんも私に笑いかける。
「今時の女子高生はこうじゃないとね。」
「えっ、小学生じゃないの?」
「チビだからって子供扱いするなぁ!あたしだってもう立派な大人の女なんだから。」
私が怒ってそっぽを向くと、龍樹さんはぼそっとこうつぶやいたんだ。
「わかってるよ。」