第3話:恋の始まり
『失恋パーティー』と題した飲み会以来、ガソスタのメンバーで遊びに行くコトが多くなった。そうやっているうちに私は、すごくかっこいい人達に囲まれてるんじゃないかって気付いたんだ。
加藤さんは意地悪で、でも気配り上手でちょっと気分屋。
結婚してるけど魅力的だなぁって思う。
涼太さんは私の1つ上なのに私なんかよりずっと大人で、クールだけど実はかわいいって感じで母性本能くすぐられる。龍樹さんは精神的に落ち着いてて、頼りになるお兄さんみたいな人。癒されるんだ。あ−、迷っちゃう!…なんちゃって。そういえば、みんな魅力的だけど恋愛対象として見たことないなぁ。
私はそんな事を考えながら裏の乾燥機にタオルを取りに行った。意識してみんなを見てみるといつもより3割増でかっこよく見える。…って単純過ぎかな?
「あ、何だ先に取りに来てたのか。」
一緒にタオルを取り出しながら龍樹さんは言う。
「びっくりしたぁ。さりげなく入ってきますね。」
そう言ってくすくす笑っていると、突然龍樹さんに
「動くな。」
と言われ、私はびっくりして固まる。すると、龍樹さんは私の髪に手を伸ばした。そっと触れられて私は思わずドキッとする。
「タオルの糸か?」
ピンクの糸を親指と人差し指で摘んでじって見る。
「…あ、ありがとうございます!」
何だか恥ずかしくて、思わず私は他人行儀にお礼を言っていた。そんな私を見て龍樹さんはにやっと笑う。そしてかご一杯になったタオルを持って、一人私を残しみんなのもとへと行った。
ねぇ、単純過ぎるよね神様。そっと触れられた手が大きくて、優しくてドキドキしたなんて…見透かされたような目に、どうしようもなくなったなんて…言えないよ。
こうして一瞬にしてお兄ちゃんから男の人に変わってしまったんだ。龍樹さんっていう存在が。