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第27話:ロボット

「お前に決める権利はねぇよ。」電話越しにたっちゃんの怒りが伝わって来た。たっちゃんが怒ってる理由は…私が今の関係を続けられないと告げたから。頑張る気持ちも、たっちゃんの優しさがなくちゃ萎れてしまう。私に触れないたっちゃんに愛があるとは思えなかった。意地になってるだけじゃないかなって…正直そう思った。

「たっちゃんはいつになったらあたしに触れる?」

「今だって触れるよ。」

「嘘だよ。たっちゃんはあたしに触ってくれない。」自分で言って悲しくなった。たっちゃんはもう私を愛していないんだ、って言ったと同じようなことだから。

「お前から触られても拒否しないだろ。」

「あたしはたっちゃんに触りたいって思うから触るよ。たっちゃんからあたしに触らないのは、触りたいって思わないからでしょ。もう…愛はないんだよ。」

「なんでお前が俺の気持ち勝手に決めつけんだっつーの。お前は浮気された側の気持ちわかんのか?」ちょっと早口で低い声で話す…きっといらいらしてるんだろう。

「あたしだったら今みたいな関係なら別れる。浮気はやっぱり許せないんだって思うよ。」

「…お前は別れたいわけ?」

「…今のままならそのほうがいいと思う。」言うのが辛かった。また、たっちゃんに怒られるのが目に見えてわかった。

「だから、時間くれって言ってんじゃん。そんなに焦んなよ。」

「…どのくらい?どのくらい待てばいい?どのくらい待てば前みたいに触ってくれる?あたし、どんどん自信無くすの。あたしはたっちゃんに辛い思いさせるだけじゃないかって…。」私の声はひどく弱々しかったと思うけど、言いたいことはちゃんと伝わったと思う。

「お前はそうやって逃げんだベ?」そう聞かれて私は何も言えなかった。そうなのかもしれない、一瞬そう思ったから。だってこんな関係を続けてたら、お互い病気になっちゃうし…楽しいと思えないのに一緒にいるなんて変じゃないのかな。

「別れたいのか?」

「それは、私が言う立場じゃないよ。」

「つーことはそう思ってるってことだな。」たっちゃんは深いため息をついた。私は肯定も否定もせず、ただずっと黙ってた。暫く沈黙が続いた後、たっちゃんは

「わかった。」と言った。つまりそれは別れるってこと。私たちはこれで終わってしまうんだ。

「お前がそう言うなら…」その後の言葉は私にも想像できた。でも、たっちゃんはその言葉を言えずに何度もため息をついていた。その言葉を言ってしまったら終わりだから、言うのが辛いんだろう。怖いんだろう。

私もきっとこんな状況だったら言えなくなってる。あと一歩のところで言葉が詰まって出てこないんだ。

たっちゃんのため息を聞いていたら、なんだか苦しくなって私は静かに泣いた。一緒にいた時間が長いから、たっちゃんが今どれほど苦しいか解っちゃうから。たっちゃんも本当はわかってるんだ。こんな関係を続けてたってお互いのためにならないって。だけど、だからって『別れる』という答えを選べない。私たちはきっと依存し過ぎたんだ。

「…やんだよ、俺。そうやってすぐ投げださねぇで支えてよ…」たっちゃんは小さい声で、でも精一杯そう言った。私は凄くびっくりした。だってたっちゃんが私に頼ってきたことなんてなかったから。私は1年も付き合ってて、たっちゃんの弱い部分なんか知らなかったんだ。

自分が情けない。今までずっとたっちゃんに甘えてきたのは私で、たっちゃんはきっと私を支えるため精一杯強がって、大人ぶってたんだろう。私はたっちゃんに支えられるのが当然だと思い込んでた。人間支え合わなきゃ生きていけないのに…私はたっちゃんにしてあげてないんだ。

「ごめんね、たっちゃん。あたしも頑張るから…だから…たっちゃんもあたしに触れるように努力してくれる?」私がそう言うと、たっちゃんは返事もせずに泣き出した。もちろん大声で泣いてたわけじゃない。でも、私は男の人がこんなに泣いてるのを聞いたのは初めてだ。

泣かないでって言おうとしたのに、私ももう声が出せないほど泣いていた。たっちゃんが泣いたのが悲しかった。苦しかった。たっちゃんが愛おしいと思った。

これが同情なのか、愛情なのか私もよくわからない。でも、たっちゃんが泣くくらいなら私はもう幸せにならなくていい。たっちゃんの幸せのために生きていくロボットみたいなもんでいい。


今度は私がたっちゃんを支えるよ。

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