第26話:萎れちゃうよ…
あの日から2週間ほど経った今、私は『浮気を許される』ことがどれだけ辛いのかを知った。
あの日、浮気を打ち明けたのはたっちゃんから離れるつもりだったわけで…許されたときのことなんて全く考えてなかったのだ。
人の気持ちはそんなに簡単には割り切れない。いくら許すと言っても、すぐに昔のような2人になれるわけではないのだ。
たっちゃんは…私に触ってくれなくなった。私から触ることに対して拒否はしないけど、自分から触ってくることはなかった。私はその現実を目の当たりにする度、自分は汚れているんだと思う。傍にいれることは嬉しいけど、それよりももっと触ってくれないことが悲しかった。
私はたっちゃんの気持ちを伺ってばかりで、自分の気持ちを何も言えなくなった。いくら好きだと伝えても信じてもらえない気がしたから。どんなに強く思っても、一度浮気した人間の想いなんて軽いものだと思われてそうで…。
毎日そんなことを考えると悲しくて涙が止まらなかった。眠りたくても嫌な考えばかり浮かんで、全然眠りに就けなかった。だいぶ睡眠不足だとは思う。ご飯も胃が痛くて食べられないし、ここ2週間で相当痩せただろう。…私よりもたっちゃんのほうがよっぽど辛そうだったけど。
そんなことを考えながらお風呂に浸かっていると、たっちゃんからメールが来た。
私は慌てて風呂からあがり、脱衣所でメールを返すと体が冷えないうちにまた風呂に戻った。今までは決してこんなことはしなかった。携帯は布団の上に置いて、お風呂にはゆっくりと浸かっていた。でも今は、すぐにメールを返さないとそれが喧嘩の原因になる。友達と遊びに行くのも変に疑われて、クラス会にも行けなかった。
まるで1日中監視されているみたいで、正直辛かった。こんなのがこれから先毎日続いたら…昔の私たちには戻れない。私も、そしてたっちゃんも笑顔なんか消えて、疑う気持ちばっかりで毎日苦しむんだろう。
本当にこれでよかったのかな…。これが幸せになるための道だったのだろうか。一緒にいても苦しめ合うだけなら、離れるべきだ。
たっちゃんはきっとわかってくれないだろうけど…。
こんな風に考えたのは多分、未来が見えなくて不安だったから。怖くて堪えられなかった。愛される保証なんかないのに傍にいる自信がなかった。
私の気持ちは萎れていったんだ…。