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第21話:嘘

世の中の浮気してる人達はどんな顔で、恋人に会ってるんだろう。

どんな声でどんな目で…私はもう綺麗じゃないのに。


携帯を見つめながら、ずっといろんなことを考えていた。難しい問題はいっぱいある。でも、今答えを出さなきゃいけないのは『嘘をつく』か『正直に言う』か。

それはつまり『別れる』か『別れない』に繋がってる。

たっちゃんと離れても平気でいる自信はない。でも、裏切っておいて何食わぬ顔でたっちゃんのそばにいるの?たっちゃんはきっと今まで通り、真っすぐ私を見るだろう。私はそれに堪えられる…?

そんなときだった。手に持っていた携帯が震え、ディスプレイにたっちゃんの名前が浮かんだ。

親指がうまくボタンを押せなくて、何回も呼び出し音が鳴る。

まだ答えが出てないのに…こんな状況で電話に出ていいの?まるで痙攣を起こしたみたいに震えが止まらない。

そんなことをしてる間にコール音は途切れた。自然にほっと息を着く。

次に携帯が鳴ったら、ちゃんと話そう。そう決めた途端、また携帯が震えた。

私は恐る恐るボタンを押す。

「…はい。」

「お前何やってんの?」たっちゃんの呆れた声が耳元で聞こえた。

「なんでメールよこさなかったの?」

「あ、ごめんなさい。凄い酔ってたから…知らない間に寝ちゃってて。」咄嗟に私はそう言ってしまっていた。

たっちゃんは何の疑いもせずに私の言葉を信じた。ただ、私が連絡しなくて心配をかけたことは反省しろ、と言って…。

一度ついた嘘を取り消すのは、始めから正直に話すよりももっと勇気がいる。今の私にはそんな勇気なかった。

正直に話したら、たっちゃんに何て言われるだろう。どんな言葉で別れを告げるんだろう。どんな目で私を見るんだろう。それを想像しただけで怖くて怖くて仕方がなくなった。

いつも怒られていても、たっちゃんの温もりをどこか感じていた。でも、きっと今回はそんな温もりなんて存在しない。私を酷く冷めた目で見るんだろう。

いつも温かかったたっちゃんにそんな目で見られて…私は堪えられるわけがない。

結局どこまでも私はたっちゃんに甘えてるんだ。裏切ったくせに、それでもまだたっちゃんの優しさに縋り付いていたいと思う。そんな自分が憎くてしょうがない。

私はたっちゃんを都合のいいように、利用してるだけなのかな。

そこに愛はもう存在しないのかな…。

なんで自分の気持ちなのに自分でわからないんだろ。


私は逃げ出せない場所まで来ていた。

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