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第20話:後悔

『酔っていた』そう言ってしまえばそうかもしれない。でも私は、確かな意識の中で副店に抱かれた…。

夜中の3時頃、たっちゃんからメールが来ていた。でも、私はそれを気付かないふりをして、副店の腕に抱かれて眠った。今日だけでいいから、この人の優しさに甘えたい…そう、思った。

副店は朝6時に私の家まで送ってくれた。車から出る私に、副店は優しく笑った。けれど、その顔は『ごめんな』って言ってるように見えた。家に帰ってすぐ、私は布団に寝転ぶ。枕元にはたっちゃんから貰った、白いセーターが置いてあった。私は恐る恐るセーターを触った。もう、私には触っちゃいけない神聖なものに思えて…。

どうしてあの人と寝てしまったのか、どうしてたっちゃんを裏切ることが出来たのか…考えても答えを出すことができなかった。『魔がさした』そんな言葉では片付けられない気がする。

あの人の傍にいると、昔を思い出す。何気ない言葉や行動1つ1つにドキドキしてた、あの頃。私があの人に抱いた気持ちは、恋愛に近かった…いや、もしかしたら恋愛だったのかもしれない。でも、私はたっちゃんと別れるつもりであの人と寝たわけじゃない。…じゃあ、何で?自分自身に問い掛けても、全然返事は聞こえなくて…ただ後悔の波だけがひたすら私を襲った。

私は鞄の中から携帯を取り出す。『未読メール有り』光るディスプレイにはそう表示されていた。ゆっくりとメールを開く。メール1通目。『まだ終わんないのか?俺はそろそろ寝るよ』

そして気付かなかったけど、もう1通。『何で返事よこさないんだ?先に寝てるからな』

4時13分のメールだった。私の目からは大粒の涙が溢れる。たっちゃんが心配してくれてたのが、不器用なメールから伝わって来たから。きっとずっと起きて待ってたんだろう。心配されてないなんて、私の勝手な思い込み。たっちゃんの確かな思いに、私は胸が苦しくなった。

私はセーターをきつく抱きしめながら、何度も何度も謝る。

ごめんなさい、たっちゃん…ごめんなさい…。


たっちゃんに貰ったセーターからは、もうたっちゃんの匂いはしなかった。

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