第18話:不安
「ひぃも眼鏡フェチなの?」
「うん。あとSな人。」私がそう言うと、バイトの真奈ちゃんは私の肩を叩いて笑った。
「えっ、ダメ?」
「何の話してんだよ。」私たちが笑っていると、後ろから副店長がにやにやしながら近づいて来た。一応仕事中だけど、結構みんな適当で、裏で話をすることも少なくない。もちろん、仕事をしながらだけど。
「副店ってこうゆう話してると、すぐに混ざってくるよね。」真奈ちゃんの台詞に私も頷く。
「やっぱりこういう会話には、混ざっておかなきゃね。」
「なんか弱み握られそうで話たくないんですけど。」私と真奈ちゃんは副店から逃げるように、ホールに戻った。別に本気で副店が嫌で、逃げたわけじゃないけど。
副店は厳しいときは厳しいけど、若いし面白いから嫌ってる人はいないんじゃないかな…たぶん。むしろ私なんか、タイプなんですが。
「真奈ちゃんさぁ、彼氏と別れようと思うときある?」
「えぇ−、何で?別れようとかは考えないけど、真奈結構冷めてるよ。」
「そうなの?」真奈ちゃんも確か彼氏と1年くらい付き合ってるはず…やっぱり、付き合い始めの頃よりは冷めてくるもんかな。
「ひぃ彼氏と別れんの?」
「そういうわけじゃないけど…なんかあたしも冷めてきてんのかなぁ。」私は大きくため息をついた。たっちゃんは彼氏として最高だと思う。そりゃ、嫌な部分もあるけど、なんだかんだ優しいし、リードしてくれるし、面白いし。…でも、それでもなんか足りない気がするのは何でかなぁ。
「こういうときってさぁ、周りにいる男の人がかっこよく見えるよね。」そんな真奈ちゃんの言葉に私はドキッとする。そう、かっこよく見えてしまうんです。
「あぁ、確かにね。」
「ひぃは副店タイプでしょ?」
「えっ!?あぁ、かっこいいとは思うけど、どうかなぁ。」さりげなく交わしたつもりが、真奈ちゃんににやっと笑われてしまった。
「てか、真奈ちゃん、送別会来てくれんの?」慌てて私は話を反らす。
「あっ、それさぁ、あたし学生だから行けないみたいだよ。」
「そうなの?!」
「バイトは警察に捕まらないように、日中やれってさ。」真奈ちゃんは少し怒ったように言った。
実は私は2月いっぱいでこの店を辞めることになった。理由はまぁ、いろいろあったけど、本社のやり方に腹が立ったってのが1番かな。まぁ、それでみんなで送別会をやってくれるらしいんだけど、私は少し心配。
だって…お酒飲むんだもん。