第13話:離婚
「そういえば、おかぁ離婚したみたい。」私からの突然の一言に、たっちゃんは驚いて口が開いたままになっていた。こんなことをさらっと言われたら、誰だってびっくりするとは思うけど。
「ずっと喧嘩してたしね。怪しいとは思ってたんだ。しばらく帰ってこないと思ったら離婚してたんだって−。」私は半分笑い混じりにそう言う。それは少しでも暗い空気を吹き飛ばしたかったから。
「したら、おかんバツ2じゃん。つか、それみんな知ってんのか?」
「さぁ−?」
「さぁってお前…他人事じゃねぇんだから。」
「でも、私の口からみんなに言うことじゃないよ。」私の一言にたっちゃんは何も言えなくなったらしく、黙って下を向いていた。
うちは6人兄弟で、上3人が1人目の旦那との子供。下3人が2番目旦那との子供なんだ。
下の子達はみんな血が繋がってるって思ってるかもしれないけど。
1番目の父親は訳ありでヤクザになってしまい、私たちを危険な目に遭わせないために自分から離れていったらしい。
幼い頃の出来事だから、かなり記憶が曖昧だけど、おかぁが時折泣きそうな目で、おとぅを見てた気がする。もしかしたら、愛し合ったまま別れたんじゃないかな…。私はそんなおかぁを知ってるから、新しい『お父さん』が出来ても反対はしなかった。おかぁを支えてくれる人がいるのは嬉しかったから。まだ妹は赤ちゃんだったし、何も思わなかっただろうけど、1つ下の弟は私と同じ気持ちだったと思う。
で、今回の離婚は多分、おとぅが仕事に失敗したのが始まり。
おとぅは借金だらけになって、おかぁにもいろんな嘘をついていた。それは娘の私でも気付いたから、おかぁももちろん気付いていたと思う。そんな中で夫婦の信頼関係が崩れちゃったんじゃないかな。まぁ、あくまで私の推測だけど。離婚ばっかりは夫婦の問題だし、おかぁが出した答えなら私は反対したりしない。
「なんか実感沸かないなぁ。今までだっておとぅしばらく帰ってこないときあったし。明日になったら、普通の顔して家にいそぉ−。」これから一生、おとぅの顔を見ないで生きていくなんて、想像できない…。
「…もう、この話はやめよっ!」
「…わかった。なんかあったら言えよ?」
「うぃ−。」私はいつも通りの笑顔をたっちゃんに見せる。そんな私にたっちゃんは小さくキスをした。たっちゃんといると幸せ。今はそれだけでいい。私はそんなに強い人間じゃないけど、たっちゃんがいれば大丈夫だって、根拠も無いのにそう思ってた。
だけど、私は自分が思ってたよりずっと弱い人間だったんだって…そう、思い知らされたんだ。