第12話:新生活
2月24日、私と龍樹さんは正式に付き合うことになった。
何となく私は龍樹さんに敬語を使わなくなったし、呼び方も『たっちゃん』に変わっていた。
どこにでもいる恋人達みたいにごく自然に。
でも、香織さんから奪ってしまったわけだから、私は舞い上がったりはできなかった。たっちゃんの彼女になれたことは素直に嬉しかったけど、その反面後ろめたい気持ちにも付き纏われた。でも、私はこの道を選んだんだ。どうしても龍樹さんが欲しくて欲しくてたまらなかったから。自分が最低な女だってわかっても、周りからなんて言われても龍樹さんの傍にいたかった。
付き合い始めて1ヶ月とちょっと。些細な喧嘩はあるけれど、私たちは仲良くやっていると思う。
そして4月、私は飲食店に就職した。
慣れないことばっかりで毎日疲れが溜まる。
あげくの果てに、勤務先は家から遠くなるし、免許も間に合わず電車で通う羽目に…。
休みは月に6回しかないし、通勤だけで時間がかかるから、自分の時間なんて全然持てなかった。なによりもたっちゃんと会う回数が減ってしまったのが、大きなストレスになった。不思議なことに、疲れているのにたっちゃんとは毎日会ってもいいと思えた。今までこんな風に思ったことは1度もないのに。寝る時間よりもたっちゃんと会ってる時間の方が体が休まるんだ。これっておかしいのかな?
そんな新しい生活が始まった矢先。残念なお知らせが1つ。
うちの親が離婚しました。