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第10話:偽物

あの日から始まった浮気関係は、誰にもばれることなく続いている。もう、1ヶ月近く経つかな…。

「やっぱり、夜は寒くなるなぁ。」

「んですね。」2月も終わりに近づいているが、まだ夜は震えるほど寒かった。龍樹さんとはバイトの時は至って普通の会話しかしていない。2人の時はまるで恋人同士のような会話をしてるんだけど。

「あっ…。」龍樹さんはスタンドに入って来た車に近づいていった。あっ。…あれは香織さん…龍樹さんの彼女の車だ。降りて来た香織さんは手に差し入れの袋を持って行た。

「こんばんわ。」横を通り過ぎる香織さんに私は小さく挨拶をする。香織さんはあたしに頭を下げるだけだった。女の勘…なのかな。あたしが龍樹さんを好きなこと気付かれてるのかも。

香織さんが来たのを合図に、私たちは店の中に入った。冬の夜はお客さんが少ないので、店の中で待機することが多い。もちろん、自分達が楽できるからってのもあるけど。でも、今日だけは中に入りたくないな…。

「今日カラオケ行こうよ。」香織さんの提案に龍樹さんと弟の涼太さんが賛成する。私は蚊帳の外。龍樹さんは私と目を合わせようとしなかった。私だって楽しそうに話してる2人の姿なんて見たくないけど。


香織さんが店にいる間、私は何回も外に出て閉店の準備をしていた。本当はそんなに頻繁に外に出る必要はなかったけど、2人の楽しそうな会話を聞きながら平然とお客さんを待つなんて私にはできなかったから。涙が出そうになるのを堪えるだけで精一杯。龍樹さんに笑顔で話せる自信はなかった。

目の当たりにして、やっと気付く。自分のしてることは間違いで…私たちの関係は偽物で、愛なんかないんだってこと。ずっと目を反らしてきた。考えると辛いから気付かないふりをしてきた。こんな関係続けたって未来はないんだ。


離れなくちゃいけない。香織さんのためにも、自分のためにも。

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