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ありえない 現象起きて ケツ痛い



 「おい……どこだ……ここ」

そんな言葉が自然と自分の口からこぼれるのを耳にしつつ、俺は正面を見て視覚から情報を取り込む。

広ーーく広がっている草原の遠ーーくに城らしきものが見える。見た感じTNL(東京ネズミーランド)にあるような西洋風っぽい。正確なことはわかんないけどとりあえず日本史の教科書に載ってるようなものじゃないことだけは確かだ。


首を動かして右のほうを見る。比較的近くに、でもやっぱり遠くに町らしきものが見える。内部まではわからんが取り合えず建造物があることだけは確認できた。

あと右腕に日向がしがみついている。凶器が当たっていて幸福感がとてつもない。


首を動かして左のほうを見る。近くに広大な森が広がっている。まるでどこかの後頭部魔法使いがかろうじて生き残る為にユニコーンの銀色の血を飲んでそうな、うっそうとしていてどことなく不気味な森だ。今いる場所から大体5㎞くらいだろうか。

あと左腕に秋月がしがみついている。日向ほどではないけどそれでも十分標準を上回っているであろうあのアレが当たっていて幸福感がハンパない。


後ろを見よう…と思ったけど両サイドから抱きつかれているこの状況ではうしろに振り返ることができないから諦めた。多分草原が広がっているか、何かしらがあるのだと思う。

あと晃が後ろから両手で俺の服をギュッと掴んでいる。本来男にこんなことをされても不快なだけなのに晃だけは別だった。なんかちょっとだけ嬉しい。


本当だったら何時間でも、いやいやいつまでもこのままでいてもらいたいんだけど、流石にそんなことを言ってはいられない状況なので泣く泣く『離れてくれ』と言うとみんな俺の言葉どおりに離れてくれた。それもマッハで。

 ………いや、確かに離れてくれといったのは俺だけどさ、そんなに嫌がらなくてもいいじゃないか。

地味に泣きそうになりながらも『とりあえず話し合わなきゃ何も始まらないな』と自分を立て直そうとし、結局姉歯建築ばりのガタガタ状態になってしまいながらも体を後ろに向け、四人で輪になって口火を切る。

 「あのさ、まず…」

 「あ、そういえばお昼ご飯のときに使ったシートがあるからちょっと待って」

 「………」

 ………いやさ、確かにシートはあったほうがいいと思うけどね?このまま草の上に座り込んで服に緑色の汁(草汁?)とかがついたら落とすの大変だし。でもこのタイミングじゃなくてもよくね?てか何でコイツはこんなに落ちついてんの?俺だって冷静なフリをしつつも実はそれが焦った俺を見られたくないという意地から来ているだけであって、内心焦りまくってると言うのに。焦り焦っていると言うのに。なんかもう『焦る』という言葉がゲシュタルト崩壊しそうだって言うのに。


『はいどうぞ』と日向がカバンから取り出したシートを広げると全員が靴を脱いでシートの上に座る。そういや靴にキモ汁は…ついてないな。

 ………ふぅ、改めて気を取り直して、と。

 「…まぁ色々とわけ分かんない事ばっかりなんだけど………とりあえず順を追って話そうか」

三人とも何も言わずに頷く。

 「えっとじゃあまず事の始まりからな。え~っとさ、あの帰り道でお前らが先に行っちゃった後を追いかけようとしたらなんか黒くてドロドロしてそうなものを踏んだんだよ。その時は油か何かかと思ったんだけど……違ったんだろうね。靴にもなんもついてないし」

晃と秋月は黙って首を動かして相槌を打ったが、日向だけは自分の小さい靴の裏を確認していた。やっぱなんかずれてるな、この子。

 「んで踏んだあと右足をあげようとしたんだけど全く動かなかったんだ。そしたらそのドロドロが広がっていって左足まで達したと思ったらそっちまで動かなくなった。だからお前らを呼んだんだ。それが一回目。その時は別に焦ってなかったんだけど、しばらくしたら自分が地面に沈んでいってるのに気づいた。その時が二回目」

 「そこで私達が翔さんを助けようとして手に触れたらその黒いものが広がったんですよね」


 ――――そう、秋月の言うとおりだ。あの時みんなが俺の手に触れた瞬間、今まで俺の両足を飲み込んだあたりで動きが止まっていたあのドロドロが一瞬でブワッて三人の足元にまで広がった。そして三人も俺と同じく足が動かせなくなった。


 「そしたらいきなり足場がなくなったみたいに下に落ちていったんだよねぇ」

『う~~ん』と唸りながら腕を組んだ日向が言った。こんな時にどうでもいい話だけど、胸が大きい女の人の腕組って個人的に最高だと思う。


 「それでボク達はよくわかんないとこを落ちてきたんだよね」


二人の言葉通り、ドロドロに侵食された俺達はいきなり絞首刑が執行された時のように足場が無くなり、次の瞬間よくわからない空間を落下していた。

『ソコ』は基本的には真っ暗だったが、時折赤や緑や紫など様々な色の光が遠くや近くが見えた。また距離感が掴めなかったから一見狭そうではあるものの、光の具合から広くも見えたし、空間そのものが歪んでいるかのようにグニャグニャしていてさながら宇宙のようだった。実際にその中にいた時間は30秒くらいだったんだろうけど、もしあの中に5分もいたら酔って昼飯に食った物をもんじゃ焼きの元としてリバースしていたと思う。


 「んで下のほうに白っぽい光が見えて、落ちるに連れてその光が大きくなって、それに包まれたと思ったらココに落ちてきたんだよな」


草でいっぱいの地面を見ながらそう言った。

一応空間の中では離れ離れにならないようにくっついていたため、落ちて来てる時も右に日向、左に秋月、背中に晃がくっついているといううちの学校の男に見られたら袋叩きにされるであろう状況で落ちてきた。草原の存在に気付いた時の高さは地面から1メートルくらい。そしてケツをうった。

でも不思議だったのは空間の中でかなりの加速度がついただろうにも関わらずダメージが小さかったことだ。確かに痛かったことは痛かったけど、その痛みも『1mの高さから落ちた』時程度の痛みしかなかった。

 つーか何でケツからだったんだ?光に包まれた瞬間俺は腹ばいだったんだぞ?秋月と晃は直立だったけど。あ、日向は頭から落ちてたような気がする。


と、俺がケツについての考察にふけっている傍ら、日向、秋月、晃の三人も何かを考えているようだった。多分自分たちの身に起こったことを考えているのだろう。

 ………俺も真剣に考えよう。

そう思って三人を見習ってさっきの空間のこととかあの黒いドロドロについて考えることにする。


 ・・・よし。


でも結局3秒で止めた。

あんなものいくら考えても正体がわかるわけがない。だから俺達が今ここで頭を捻ったところでただいたずらに時が過ぎるだけだろう。うん、そうに違いない。こういうのはどっかの学者みたいな暇をもてあましたオッサンに任せればいいだろう。

 「よし、オッケーィ!」

 「え!?何かわかったの?」

 「ああ。何にもわからないって事がわかった」

 「…なにそれ」

俺に聞き返した日向も、黙っていた秋月と晃も、みんながみんなジトッとした目で見てくる。説明を省くと伝わらない、と言うことがここに改めて証明された。


だからと言ってこのままで良いわけがなく、非現実的な出来事について空想することの不必要性についてそこそこ語ると、三人は納得してくれたらしく神妙に頷く。

 「確かに翔の言うとおりか。過去じゃなくて現実に目を向けるべきだったな」

 そうそうそれそれ、俺はそれが言いたかったんだ。

 「にしてもさー、ここはどこなんだろうね?」

 「アホ!見れば判るだろ!草原だよ草原。原っぱと言い換えてもいい」

 「そーゆーことじゃないよ!地名とか国とかの意味!」

プクーと頬を膨らまして怒る日向。本人は怒っているようだけど怒られてる俺にしてみれば全く怖くも何とも無いし、むしろ小動物の威嚇を見ているみたいで和む。頬を膨らましているのも可愛い子ぶってるとかそういう理由ではなく、マジなんだろう。

 ちなみに誤解の無いように言っておくけど俺は小さい女の子にしか欲情できない特別な体質の持ち主じゃないからね。


俺がまるでペンギンの赤ちゃんを見ているような気分になっていると黙り込んでいた秋月が口を開いた。いや、正しくは考え込んでいた、だろうか。

 「とりあえず日本ではないことは確かでしょう。あそこに見えるお城の形もそうですし、近くに咲いていた花も見たことがありません。それになによりこのように草原、森、町、お城が一望できる土地なんて私の記憶にはありませんし」

 ………うおっすげぇ。よくもまあ花やら地形やらを覚えていられるもんだ。さすが秋月、学年主席の実力は本物である。


 でも………秋月の言うことが正しいとなると…やっぱここは『アレ』なのかな?


 「ん?どうかしたのか?」

 「…ちょっとこの世界について思い当たる節があったんだけど…」

俺がそういうとみんな驚いた。まあ当然の反応だ。

 「本当か!?」

 「ああ。……でもやっぱなんでもない」

晃が俺の言葉を聞いてガクッとなる。

 「なんだよそれ。ちゃんと教えてくれよ」

 「いやさ、ホントにふと思っただけなんだよ。多分聞いても信じられないと思うよ?」

 それになにより、コレを言って痛いヤツを見る目で見られたくない。

 「そんなこと聞いてみないとわからないだろう」

晃が少しムッとした表情でそう言い、『そうですよ』と秋月も同意する。日向は何も言わなかったがどうやら二人と同じ事を考えているらしい。

 ……本当は言い終わった後のみんなの顔を想像すると正直言いたくないんだけど…仕方ない。

『はぁ……』と軽く溜息をついてから俺は話し始めた。

 「えっとな、さっきはふと思ったって言ったけどさ、本当はもうチョイ前から思ってたことなんだ。んでさっきの秋月の話とかを聞いてやっぱりそうかなって思ったんだけど…」

 「さっきの話と言うと…花とかお城のことですか?」

頷いて話を進める。

 「明らかに西洋風な城、秋月に見覚えが無い花、日本にはありそうにない地形、それだけを考えればここはどっかの外国かもしれない。でも俺達がここにきた手段があんなんだったことも合わせるとその線は薄いんじゃないかと思うんだ」

三人とも真剣に聞いてくれている。美形三人に真顔で見つめられているといくら友達でも流石にちょっと恥ずかしいな。

俺はその恥ずかしさから、そして今から言うことのいい辛さから少し俯きながら話した。



 「じゃあ日本でもそれ以外の国でもないならどこかって考え時に思いついたんだ。ここは俺達が居た世界じゃない別の世界、俺達が居た次元ではないまた別の次元、つまり…『異世界』なんじゃないかってさ」



「「「………」」」



 ほぅら静かになったよ。絶対俺『コイツ何言ってんだ』的な目で見られてるよ。

でも俺の脳みそじゃこれ以外の言葉は思いつかなかったんだ。だって小説やら漫画やらゲームやらの類だと『異世界召喚系』なんてのは幾らでもあるし。まあたいていの場合一人か二人くらいしか召喚されないけどさ。

 ……つってもなぁ。やっぱりこういったものを一切やらないやつらに言ってもだめかぁ。

そう思いながらゆっくりと首を上げると……あら?予想に反して三人とも真剣な顔をしていらっしゃる。

 「『異世界』か…。あながち頷けない話でもないな」

 「…そうですね。あとは地球以外の星、ということもありえるのではないでしょうか」

 「別にどっちでもいいよぉ。どっちにしろ『わたし達がいた世界』じゃないみたいだし」

意外に『異世界』案は高評らしくてちょっと鼻高々だ。

 「もっと反論があるかと思ったけどみんな結構素直に受け入れられたんだな。『いやそれはないでしょうこの豚野郎』みたいな感じで」

俺が尋ねると秋月と晃は苦笑しながら返答した。

 「確かに、いきなり道端で『実はここ、異世界なんです』って言われても無理でしょうけど」

 「でもボク達は実際にその異世界らしき場所にいるし、その話が納得できるくらいの体験もしたからね」

 「私も楓ちゃんと晃君と同意見だよ。………でもそれだけじゃなくて…」

 「うん?それだけじゃなくてなんだ?」

 「………」

 ……中々返事がないな。聞こえなかったのか?

俺がもう一度聞き返そうとした時、日向はなにやら決意をした表情になって、そしてすぐに恥ずかしげに言った。

 「それに……その………す、好きな人のことは…信じるよ」

 「「!!?」」

 「………」





 ―――――そうか、そうだよな。


日向はこんなわけの分からない状況下で、しかも『異世界』とか変な事を言い出した俺を信じると言ってくれているのか。


 ―――――――なんていい友達を持ったんだ俺は。


こいつらは俺の友達で、友達ってのは互いに信じあうもんなんだよな。だから俺もあいつらを信じなきゃいけなかったんだ。

なのに俺は勝手に『どうせ信じてくれないだろう』って思ってた。でもそれは相手に対してすごく失礼なことだったんだ。


 ――――それを気付かせてくれた日向には感謝しなきゃ。


そう思って俺は日向を見る。視線の先にいる日向は顔が真っ赤だ。『い、言えたっ』とも呟いている。そりゃ他人に面と向かって『好きだ』なんて言うのは恥ずかしいだろう。でもその恥ずかしさを乗り越えて日向は俺に大切なことを気付かせてくれたんだ。だから俺も……伝えなきゃいけない。


節目がちにチラチラと俺の様子を伺う日向の目を見つめる。真剣に相手に何かを伝えたい時は目を見て話せってどっかの偉い人が言っていた気がしたから。

 「ありがとう、日向。俺も………お前のこと好きだ」

 「「っっ!!!?」」

 「ホ……ホント!?」

俺がそういうと日向は一瞬ポカンとした顔になり、すぐさま手で口のあたりを抑えながら

少しくぐもった声で聞いてきた。顔が赤くなっているのを自覚していてそれを隠すのにそうしているんだろうけど、顔の上半分だけでも十分にそれが伺えるのでぶっちゃけ意味をなしていない。とかなんとか言ってる俺も慣れないことを言って少々顔が熱い。

でもそれに気付かないフリをしつつ全力で言った。俺の気持ちが日向に伝わるように。俺の思いが日向に届くように。

 「ああ。お前は…最高の友達だ!!!」











-----静寂。














 「………友達?」

 「そうだ!!あぁ、二人ともそんな顔すんなって……もちろん日向だけじゃなくて晃と秋月もだってば。俺達はずっと友達だ!」

 「……『ずっと』友達、ですか…」

 むぅ……自分で言っといてなんだけどそんなに『ずっと』を強調されると少し照れる。

でもまあ俺は確かにずっとそうでいたいからそのまま頷く。

 「いやもうむしろ親友って言いたいくらいだ!」

 もちろんそれ以上の関係になれるのであれば万万歳だ!……でもそんなことは万に一つもない、か?いや、望みはあるはずだ。諦めたらそこで試合終了なんだから。

 でもまあ今すぐどうこうって話でもないし、だったら今はみんなでこうして親友として仲良くやっていきたい。それが今現在の気持ちだから。

 「うん?どうしたみんな微妙な顔をして。……もしかしてなんか気に障った?」

 少し気安すぎたのかな。

 「う、ううん、そんなことないよ!わたしも翔ちゃんの事を親友だと思ってるよ!…今は」

 「え、ええ。私もそう思っていますよ。…今は」

 「あ、ああ。ボクもだ。…今は」

 何だその『今は』ってのは。『今は親友でもいいけど今後は俺の態度次第でそれ以下にもなりますよ』ってことか。

 「……わかった。今の関係が続けられるようにがんばるからさ!」

 「「「……………」」」

『よっしゃ!』と心新たに気合を入れる。




そういやどこまで話を進めたんだっけ?

 ………ああそうだ思い出した。『異世界』ってことを言ったんだった。この話はもうこれ以上しなくていいよな。なによりこんな話をした俺が恥ずかしい。

 「よし、話が脱線しちゃったけど元に戻そう。んで次の話なんだけど…いや、これが最後の話か。これからどうするかを決めよう」

三人も真剣な表情に戻り、黙って頷く。

 「つってもとりあえず人がいるところに行かなきゃ何も始まらないから、選択肢は『町』と『城』の二つだけだけど」

『さあ、どっちがいい?』と聞くと秋月が『町ですね』と即答する。……いやまあ、話が早く進んでありがたいんだけどさ。

 「……早いな秋月。俺としてはもうちょっと悩んでもらいたかったんだけど」

 頭を抱えて悩む美少女三人(この際晃も含めちゃおう)ってのも乙じゃない?

 「じゃあ翔さんはお城の方に行きたかったんですか?」

 「…いや、町の方だけどさ」 

 「じゃあ何も問題ないです」

そう言って笑う秋月に苦笑を返すと、いまいち俺達が町を選んだ理由がわかっていない日向と晃が口をはさむ。

 「どうして町の方がいいの?お城のほうにも城下町みたいなのがあるかもしれないよ?」

 「うん。別にボクが城のほうが良いってわけじゃないけどどうしてそこまで即答できるんだ?」

二人は俺と秋月を見る。

 「そりゃアレだよお前、セキュリティの問題だよ」

 「セキュリティ?……あ、そっか。なるほど、わかったわかった」

晃の方は俺の説明を省いた理由を理解してくれたらしいが日向のほうはできていならしく、再び頬を膨らましている。

 「そんなのじゃわかんないよ!なんでいっつもいっつも翔ちゃんは過程を省くのかなぁ…ちゃんと説明してっていつも言ってるのに…」


日向がブツブツ言うように、俺は勉強にしろ他の何にしろ誰かに何かを説明する時、その過程というものを結構省く。面倒だからね。

気分が乗ってるときはむしろいらない知識まで喋ることもあるのだが、基本的にはさっきのように答えだけだ。晃のように理解力のあるやつはきっかけさえあれば答えに至れるので問題ないんだけど、ぶっちゃけた話、若干ぷー気味な日向は今みたいにむくれることになる。そしてそーゆー時は秋月に任せておけばオッケーだ。あいつは俺みたいに面倒くさがりじゃないから。

今回も秋月に『頼む』と一言言って、あぐらを崩して足を誰にも当たらないように注意しながら後ろに倒れこみ、仰向けになって空を見上げた。


 あぁ、空が蒼くて綺麗だ。こっちの世界ではまだお昼頃なのかな。


横から秋月の溜息らしきものが聞こえるけどスルーする。

秋月は『そんなに難しいことではありませんよ』と前置きしてから説明を始めた。

 「お城に住んでいるような人はたいてい地位のある人です。そしてそういった人達が治めている町、つまり城下町に入るためにはパスポートのような身分を証明出来る物が必要かもしれませんよね?でも私達はそれを持っていません。もしかしたら必要ないかもしれませんけど、可能性がある以上そちらに行くべきではありません。まあ町の方にもその手のものがあるかもしれませんけど、こちらのほうが可能性は低いですから」

日向が『なるほど~』と言って納得した後、『ああそう言えば』と俺はもう一つ理由があると付け加えた。

 「今度はちゃんと説明してよね」

 「こっちのは簡単だから大丈夫。町のほうが城より近いってだけだ」

 「…そっちの理由のほうが翔ちゃんらしいよ」


言って日向は立ち上がり、う~んと伸びをすると俺達に向かって言った。

 「行くところが決まったんなら早く行こっ!いつまでもここに居ても意味ないし」

 なっ!!マジでか!?

日向の突然の言葉に驚いて起き上がった。三時間耐久サッカーのせいで疲れている俺としてはもう少し休みたい。

でも秋月も『そうですね』と言って立ち上がろうとしている。

 「翔ちゃんも早く立って!シートが片付けられないでしょ!」

 「いやいや、もうちょい待ってよ。そんなに慌てなくても町はなくならないって。蜃気楼じゃないんだから」

 「明るいうちに向こうに到着したいの!それにほら、晃君も準備してるよ」

そう言われて横を向くと既に晃はつま先で靴をトントンと整えているところだった。

 チッ、裏切り者め。

俺は『仕方ない』と小さく一言呟いて立ち上がり、晃を軽く非難の目で見つつ靴を履き、大きく伸びをしたあたりで自分の体の異変に気付いた。まあ『異』変といっても今度は良いことだけど。


 ―――――なんか、体が軽い気がする。


確かに運動した後の精神的な疲労感はある。でも駅までの帰り道の最中感じていた要介護認定者体験用拘束具を付けた時のような重さとかダルさがなくなっている。あの時は膝を高い位置に上げることすらだるかったけど、今やって見たら全然なんともない。

俺が不思議そうな顔をしながらもも上げをするという奇妙な行動が目についたのか、秋月がどうしたのかと尋ねてきた。

 「いやね、なんか知らんけど身体が凄く軽いんだよ。座ってるときは気付かなかったんだけど。だから何でかなって思ってさ」

 「えっ?」

なにやら秋月はビックリしている。なんかおかしなことだったかな。

 「いえ、そういうわけではありませんよ。ただ私も翔さんと同じ事を思っていたものですから、少し驚いちゃったんです」

 「同じ事ってことは…アレか?暗礁に乗り上げている現在の日本経済を、次世代を担う俺達がどうやって変えていくべきかってことか?」

 「そんな高尚なことを考えていらっしゃったんですか?」

条件反射でボケた俺を秋月はなにか偉い人を見るような目で見てくる。なんだろう、凄い罪悪感だ。……あぁぁやめて。そんなキラキラした目で俺を見ないで!

日向や晃なんかはちゃんとツッコミをしてくれるのにこの子は少しズレているところがあるのでたまにボケ殺しだ。だから秋月だけの時にはあまりボケないようにしているのにとっさにボケてしまった。

 「ま、まあその話はまた今度ね。え~と秋月、お前も身体が軽いって事?」

 「はい。身体が羽で出来ているみたい…って言ったら大袈裟なんですけど、なんだか体重が五分の一くらいになったんじゃないかって気がするんです」

ニコニコしながらそう言う秋月を見て、俺は目の前の女の子が男子生徒の間で秘密裏に行われた『お嫁さんにしたい子ナンバーワン決定戦』でダントツ一位になったことを思い出した。丁寧な物腰にこの笑顔、そりゃ誰でもそう思うだろうよ。それに料理も出来るし。


ついでに言うと、日向は『妹にしたい子ナンバーワン決定戦』で、晃は『女子だったら良かったのにナンバーワン決定戦』と女生徒内での『姉さんと呼ばれたい男子生徒ナンバーワン決定戦』で1位だ。因みにこれらも秘密裏に行われたので、あいつらは各自自分が一位になったアンケートの結果を知らないだろう。俺が晃の『姉さんと呼ばれたい~』を知ったのは日向が教えてくれたからだ。公表された普通のアンケートだと確かミスコンかなんかで日向と秋月で票が割れていたらしい。

ミスターの方は全く興味がなかったし、どうせ結果は晃の総取りだってことがわかっていたのでまったく興味が無かった。

 ……俺?俺も公表されるほうで一位になったことはなったけど、三人とは違ってあまり光栄なものではなかったのでこの場では割愛させていただく。今後言う機会があるとも思えないけど。

 「……?どうかしたんですか?」

おっと、少しボーっとしすぎた。

 「いや、俺も秋月もそうならあいつらもそうなのかなって思ってたんだよ」

俺はたった今思いついたことを口にしながら後ろで会話しているであろう日向と晃を親指で指した。

 「そうですね。聞いてみましょうか」


俺は秋月の言葉に適当に肯定して二人の名前を呼びながら近づいた。なにやら二人はニコニコと談笑しており、中々に話しかけづらい空気を製造し続けているがそんなものは関係ない。なぜならとっくの当にそんなものには慣れているからだ。

 「うん?どうしたんだ翔」

 「いやさ、俺と秋月がこの世界にきて同じ事を考えていたんだよ。だからお前らもそうかなって思って」

 「……楓ちゃんと同じ事?」

なんか日向が不機嫌そうな顔をしていた。ったく、まださっきちゃんと説明しなかった事を怒ってんの?

 「私も翔さんも身体が軽くなっているように感じているんです」

秋月の言葉を聞いた二人は互いに驚いた表情で顔を見合わせ、次いでクスッと笑った。

 「俺達になにかおかしなこと言った?」

 「悪い悪い、そう言うわけじゃない。ただボク達も全く同じ事について話してるところだったんだよ」

 「そうそう。だからちょっとだけおかしくて」

 ふむ……ってことは全員身体が軽くなった気がしているってことか。これはもう偶然とかじゃなくて恐らく何らかの力が働いているとしか思えない。ただ例によって例の如く理由は考えないでおこう。頭を使う作業はまだ見ぬ偉そうなオッサンに任せたんだ。


 ―――あ、いい事思いついた。


俺はこれから起こるであろう事を想像してにやける顔を押し隠しながら、真剣そうな顔をして三人に『ちょっといいかな』と呼びかける。

 「本当に体重が減ったからなのか、それとも重力が小さいのか、はたまたそれ以外の理由なのかはわからない。でもどんな理屈にせよ全員が身体が軽いと感じているってのはどう考えても普通じゃない。多分この世界に来たことで何かが起こったんだと思う」

三人とも頷く。

 「そこでちょっと試したいことがある」

そういって少し間隔を空けて貰う。3mくらいだろうか。

 「とりあえず思いっきりジャンプして欲しいんだ。もしかしたらいつもより高く飛べるかもしれないからさ」

この言葉をあえていかにも面白そうだというような声色で言うことで三人の意識を俺の意図する事とは別に向ける。

 「つーことで、最初に秋月と日向がジャンプしてみてくれ。その後俺と晃が跳ぶからさ」

そうするとホラ、いつもなら絶対に飲まないであろうこんな要求であっても二人とも『うんいいよ』『わかりました』なんて二つ返事で受け入れてくれた。『異世界』に来たかもしれないという特殊な状況や身体の異常、いつもよりも高い身体能力を発揮できるかもしれないという興奮などが二人にとって大切なことを忘れさせているんだろう。

二人が楽しそうに『せーので跳ぼっか』『いいですよ』などと会話しているのを見て俺はワクワク感が止まらない。ロマンティックも止まらない。



 ………だっていうのにまさに二人が跳ぼうとし、俺がこれから目の前に現れるであろう絶景を目に焼き付けるべく瞼を当社比二倍で見開いた瞬間、横から大きな声が聞こえた。

 「二人とも待って!!そんな格好で跳んだらスカーt「晃ぁぁぁっっ!!!」」

 くっ!!コイツ…男の癖になんて事を言ってやがる……っっ!!

跳んだ気配のない二人のほうをゆっくり見ると………あぁあ、どうやらバレたらしい。

二人とも両手でスカートのすそを抑えつつ、若干赤くなった顔でこちらを睨みつけていた。

因みに、スカートを抑えているため前かがみになっているので必然的にいわゆる『だっちゅーの』ポーズになっており、上目遣いだ。

日向も秋月も大なり小なり怒ってはいるのだろうが、どちらも顔の造形が『綺麗系』というより『可愛い系』だし、何より顔が赤いので怖くない。

でもこのことが原因で今現在三人しか居ない仲間を無くしてしまうかもしれないということを考えるとここで嫌われてしまうのは得策じゃない。

いや、それ以上にあいつらみたいな美少女に嫌われるとかかなり精神的にクるものがある。

となると、ココは一つ何とかして誤魔化すしかないな。………よし、『何にも気付いてなかったよ大作戦』でいくしかないな!!


 「い、いや~そういや日向も秋月もスカートだったな。ジャンプの前に晃が気付いてくれて良かったよ。あのままいってたら話を振った俺が悪者になるところだったからさ、残念と言えば残念だけどまあ俺としても良かったよ」

 「「「………」」」

HAHAHAと三人に朗らかに笑いかけたのにみんな俺に『お前気付いてただろ』的視線を浴びせてくる。それにだんだんと日向と秋月の顔から赤身が無くなってきているため、流石に少し怖くなってきた。

 くっ……まだだ!まだ終わらんよ!無駄に負けず嫌いな俺の辞書には『素直に謝る』なんて言葉は載ってない!

 ……まあ普通の辞書にもそんな『文章』は載ってないけどさ。

でもこのまま適当な事を言っていても事態は好転しないような気がする………よっしゃ、今度は『なんだかんだで話を進めて有耶無耶にしてしまおう大作戦』だ!

 「よ、よし、じゃあ俺と晃がやってみることにするよ。ほ、ほら晃、危ないから向こうに行こう」

本当は全く危険ではない距離だったがこの場の空気に耐えられなかったので晃と一緒にこの場を離れようとして、ちょうど肩を組むように右手を右側にいる晃の右肩に乗せた。なんだか右ばっかりだ。


 「「―――!!」」 「―――!!」

するとどうだろう。三人がなんか変な感じになった。


よくわかんないけどとりあえず少々離れたところにいる少女二人に目を向ける。……なにやら驚いた顔を、いや『愕然とした』という表現のほうがふさわしいか、いやいやそれとはちょっと違うな、なんていうかこう…『最後にとっておいたショートケーキのイチゴを兄貴に食べられる弟』みたいな…まあそんなような形容しがたい表情をしている。

次いで首を右に動かして晃を見る。……うん?なんかコイツ赤くなってね?

俯いてはいるけど晃の女みたいに白い頬がほんのりピンクっぽくなっている。

 ってかどうでもいいけど最近赤面するやつが多いな。春だからかな?

そう思いつつ視線を前に戻すと先ほどと変わらぬ表情の女の子が二人。そこで俺は晃の赤面の理由を思いついた。


 ―――ハハーンわかった。もしかしたら女の子二人の前で同姓に肩を抱かれるってのは晃にとっては恥ずかしい事なんじゃないか?

思い出してみれば晃は普段からあまり他人との一時的接触を好むようなヤツじゃなかった。でも俺がふざけてあいつに触れたときも別に嫌がってるわけじゃないみたいだったから、多分慣れてないんだろう。そういや肩を組んだのもコレが初めてだし。うん、間違いない。

こんな感じで俺は晃に対する推測を終わらせると次は日向と秋月について考えを移す。


俺と晃が肩を組んでる光景が珍しいから?…いや、確かに少しくらいなら驚くかもしれないけどそれにしてもあんな表情はしないだろう。でもあの顔…前にも見たことがある気がするんだよなぁ。………いつだったかねぇ。

 え~っとぉ~~………う~ん…………あ、思い出した!

そうだそうだ、あれはいつかの昼休みの時だ。たしかあの時はバイトの給料日前だったから飯が殆どなかったんだ。だから晃が飲み物を買いに行くんだか何だったかで席をはずした隙にあいつの手の凝ってそうな弁当を奪って食った時も日向と秋月は今みたいな顔をしてた。あとは………晃が飲んでいたペットボトルのお茶を奪い取って飲んだ時もだ。

そこまで考えた時に、目の前の二人の少女はただこちらを漠然と見ていたわけではないことに気付く。どうやら晃の肩に置いてある俺の右腕を見ているらしい。



―――――――そして、気付いた。本当の理由に。正しい真実に。

あいつらは『弟』で、晃が『イチゴ』、そして俺が『兄貴』なんだと。



晃の飯を俺が勝手に食った時、お茶を奪った時、そして今現在、あいつらがあの顔を見せる時は全て俺が晃に対して何かをしている時だ。

そんな時にしか現れない表情の理由なんて一つしかない。


要するにあいつらのあの顔は恐らく俺に対する『嫉妬』から来るものであって………あいつらは晃のことが好きなんだろう。それもlove的な意味で。好きな人が自分以外の人間とベタベタしていたら誰だって嫌だろうし。

 ……そういや前々からそんな噂もあったな。日向と秋月が晃のことが好きで、晃はそのどっちかが好きってやつ。

俺がその噂について三人に聞いてみた時は揃って『他に好きな人がいる』って否定していた。それに『身近にいる人だ』とも。でも誰の名前を挙げても違うって言ってたし…今考えてみれば、あれは多分嘘だったんだろうな。俺がいきなり『晃だ』『日向か秋月だ』って核心ついちゃったから否定したんだと思う。


けどいくら仲がいいからって好きな人と同姓のヤツに嫉妬なんてするか?しないよな、普通。しかも抱き合ってるならまだしも肩を組んだだけで。

 ……いや待てよ、世の中には『ヤンデレ』という性質のヤツがいることを忘れてた。

もちろんあの二人がその類の人間だっていう証拠もないし、実際にヤンデレなんてのがこの世に存在するのかどうかもわからないし、何よりこんな身近にそんな特殊な性癖をもったヤツがいるなんてことはあまり信じたくない。

でも世の中何が起こるかわからないという言葉をついさっき身をもって体験したとなれば、その可能性を一概に否定することは出来ない。


 ……ってことはやっぱりあれか。こいつらのこれは……嫉妬、なのか。

そうなれば全て納得がいく。

俺がなんだったかの罰ゲームで,日向に俺のことを『お兄ちゃん♪(この音符が大切)』、秋月に『お兄様♪(この音符が大切)』と呼ばせて悦に浸ってた時の晃の顔も、みんなで俺の家で遊んだ時、やっぱり何かの罰ゲームで晃に女装+女言葉+女声で俺に『…先輩……私、先輩のことが好きなんです!!』と言わせて悦に浸ってた時の日向と秋月の顔も今なら理解できる。



晃がどっちの事を好きなのかはわからない。

けど、そんなことはどうでもいいんだ。

結局俺の友達が俺の友達を好きって事は、俺の友達の間で俺の友達同士が『恋人』という関係になるかもしれなくて、もしそうなったらそいつらは俺の友達には変わりないけれど、今までみたいな友達同士ではいられないってことなんだから。

それは俺にとって少し孤独と寂寥せきりょうを感じる未来。でもそんなこと位であいつらが幸せになれるんだったら、とても喜ばしいことなんだ。

だからもしそうなったら俺はあいつらを祝福してやりたいと思う。少しからかって、茶々を入れて、イジッて、心の底から祝ってやろうと思ってるんだ。

きっとそれが『本当の友達』って奴なんだから。









―――でもね?

こんな奇麗事を言ったけどね?やっぱり悔しいわけよ、色々と。

あんな美少女に好かれている晃に対して。俺の親友を取っていこうとする日向と秋月に対して。

そりゃあいつらが正式に恋人発言をしたらさっき言ったとおりに祝ってやろうと思ってるよ。『おめでとう』とか『末永くお幸せに』なんてからかい混じりに言ったり、なんとか二人っきりになれるような時間を作ってあげたりしてさ。その気遣いをあいつらがどう思うかは別として。

でもまだそういう関係じゃなさそうだし、仮にもう恋人同士だったとしてもそれを俺に隠しているんだったら気遣いなんてものは必要ないだろう。あいつらが堂々としないんだったらその代わりに俺が堂々としてやる。堂々と呪……祝ってやる。

つまり、それまでは俺が精々引っ掻き回してやろうということだフヒヒ。





俺は長いようで短い(肩を組んでからまだ三秒くらいしか経過していません本当です)思考を止め、ニヤリと笑ってグッと右手に力を入れた。要するに、晃にもっと密着して目の前のやつらを更に悔しがらせてやろうとしたわけさ。


でもそこで少し手違いが起きた。


別に『ゴキャッ』っと晃の肩が砕けたとかそんな大層な事ではなく、思いのほか晃がしっかり立っていなかったので力を入れたら倒れてしまいそうになったのを俺が慌てて抱き寄せただけだ。


 「「………!!!」」 「………!!!」


 ふむ、どうやら当初の計画よりも三人にダメージを与えることに成功したらしい。まあ密着以上に不味い絵だろうからね。その証拠に正面の女の子達はワナワナと震えている。

 だがしかし、俺はこんなところで攻撃を止めるような人間じゃない。ココで俺が晃の耳元で『大丈夫か?』位の言葉を囁いてやればあいつらは再起不能になるんじゃなかろうか。


そう思って晃のほうに顔を向けた瞬間、俺は目を奪われる。

何故か潤んでいる見上げるような目、肩を組んでいたとき以上に赤くなった頬、すべすべしてそうな肌、風に撫ぜられるとサラサラと揺れる男にしては長めの黒い髪。

要するにそこにはスゲー美少女がいたからだ。


『いやいやこいつはこんな顔でも歴とした男なんだ』と理性が警鐘を鳴らしている。それとは別にどこからか『もう性別とか関係ねーよ行っちまえ』なんて言葉が聞こえてくる気がする。

しかし俺は根性でそれを押さえ込み、いざ晃の耳元で囁こうと思ったところでゆっくりとこちらに向かってくる二柱(ニ人にあらず)の般若が視界に入り、かつてないほどの恐怖心を覚え慌てて晃を立たせて俺は晃から手を離す。すると支えを失った晃はその場にペタンと座り込んでしまった。

 「あ、あはは……な、なんか晃が急に調子が悪くなったみたいだから俺一人でジャンプしてみるわ。そんじゃ!」

俺は晃を置いて近づいてくる二人に背を向けてダッシュで逃げ出した。

 「ど…して晃ちゃ……あん…にくっつ……るの!ズ…イ…!」

 「そう…すよ!羨ま…過ぎ…す!」

 うん?よく聞こえないけどなにやら晃が責められてるみたいだ。

 ケッ、いい気味だよ。うちの学校には罵詈雑言でもなんでもいいからあの二人に話し掛けられたいって思ってるやつもいるくらいなんだからな!!こっち側からじゃ晃の顔が見えないけど、さぞかし泣きそうな顔になっているだろうよ!!

 ………まあいい。とりあえず全力でジャンプしてみるか。あいつらはまだ痴話喧嘩を続けてるみたいだしほっとこう。話を振っといていつもと同じくらいしか跳べなかったら恥ずかしいしな。

軽く屈伸をして、と。


よし。


せーーーのっっっ!!!!


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