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第92話 清掃服着た執行人

火祭の暴露と春日の暴行に頭と背中を痛めつつ、午後からの活動開始。午前中と同様、ゴミを拾い、拾って、拾いまくる。気づいたらゴミ袋は何十個となり山を築いていた。いやー、すげー頑張った! 俺達の頑張りがこの山を見るとすごく分かる。なんかこう、達成感があるよね。


「あ~しんどい!」

「でもなんだか清々しいよな」


今頃になって掃除の楽しさを実感しだした山倉と米太郎。午後からはサボらないように水川監視の下、誰よりも汗水垂らして働いている。そのくらいやってもらわないと午前のサボリは消化できないからな。そんな俺もシャツは汗で濡れ濡れだったりする。え、発言が気持ち悪い? すいません。とにかく! この炎天下、ひたすらゴミ拾いしていたら疲労も溜まるわけで……きっつ~…。


「火祭、春日ぁ大丈夫か?」

「大丈夫だよ」

「……」


そんなに疲労の色が見えない火祭と春日。あ、あれ? キツイのって俺だけ? 皆さん体力あるんだね……俺の運動不足っ。


「はぁ……」


自分の体力のなさにげんなりしながらも手を休めるわけにはいかない。あ~……しんどい。






「やっと終わった……」


フラフラになりつつもなんとかやり遂げた。つ、疲れた……。


「お疲れ様っ。はい、ジュース」


頑張った皆を労るかのように水川がジュースを配る。じゅ、ジュース!

水川の持つビニール袋の中に素早く目を通していち早く目標を捉える。あった、メロンソーダ! こういう時に飲むメロンソーダは格別なんだよな~。ぷぱー、激ウマ! 

そして川のせせらぎが耳を癒し、疲れを取ってくれる。せせらぎってこんなに心地好い音色だったんだな……癒されるぅ。


「しゃあ! 今から打ち上げ行こうぜ! カラオケがいいな!」


山倉は元気だな。こっからカラオケに行く体力と気力はないっつーに。あ~シャワー浴びたい。


「え~、皆さんのおかげでこれだけのゴミを集めることができました。河川が綺麗になり、我々の心も清く澄んだものになりました」


またも町内の偉い人が締めの挨拶をしているが、俺達は一切聞いていない。つーか他の皆さんものほほんと心地好い達成感に浸っていて誰も聞いていない。だって、ねぇ? もう自分らで満足しちゃってるんで、お話は勘弁してくださいってわけですよ。


「じゃ~打ち上げ行く人は山倉について行って。そうでない人はここで解散ってことで」

「おいおい兎月、何その投げやりな感じは!? まさか、お前来ないつもりか!?」


そのとーりだよ山倉くぅん。汗だくで気持ち悪くて、こんなんで打ち上げに行きたくないわ。


「ノリ悪いな~将也は。だから将也なんだよ」


米太郎も何やら言っているが、そんなの関係ない。大体なぁ他の皆だって、


「私もパス~。今日はもう帰りたいし」

「私も。山倉先輩、お疲れ様でした」

「僕らも……すいません」

「……」


ほら、皆もこう言ってるわけだし、今日はやめとこうぜ。また明日にでも行けばいいじゃないのさ。


「ちっ、どいつもこいつも付き合いの悪い奴ばっかだな! いいもん、俺と佐々木だけで行くもんね! あとから仲間に入れてって言っても入れてあげないからな!」


小学生みたいなことを言って山倉と米太郎は走り出した。元気だなこいつら。そんな汚い格好でお店に入れるのか? 申し訳ありませんと断られるのがオチだ。


「あ、将也」

「ん?」

「……気をつけろよ」

「だな!」


去り際にニヤリと悪そうな笑みを浮かべた米太郎と山倉。……な~んか嫌な予感がする。あれは何か企んでいる顔だったな。土まみれで去っていった馬鹿二人。さて、俺達は大人しく帰りましょうかね。


「火祭、俺の鞄取ってくれない?」

「うん」


あ~疲れた。早く帰ってシャワー浴びてベッドにダイブしたいや。


「……まー君」


川のせせらぎを押し潰して耳に響いたのは今までに聞いたことのない火祭の低い声。嫌悪の色が濃厚に染み出している。え……ちょ、火祭さん?


「ど、どしたの?」


見れば俺の鞄の周りに火祭、水川、矢野、春日の四人が集まっていた。そして俺を貫く白い視線が四つ。は、はい……?


「まー君……」

「サイテー」

「軽蔑します」

「……」


は? え、ちょ、なにが…あの……ま、待てい! まったく意味が分からない。なぜ俺がこんなに攻められているのか全然分からない。俺が何をしたと?


「…まー君、これは何……」

「うえ? 何を言っ………へ?」


俺の鞄を広げる火祭。中を覗けば……エロイ姿でセクシーポーズをしたお姉さんが表紙の本が。しかも何冊も束になって出てき………はあぁぁっ!?


「え、あれ、はぁ? ちょ、何これ……俺も知らないって!」


こんな大量のエロ本がなんで俺の鞄から……!? おかしい、ありえない。だって俺はエロ本を買う勇気もないヘタレ軟弱野郎。そんな俺がこんな堂々とエロ本を持ってくるはずがない。勇者にもほどがある。


「まー君……最低」

「えぇ!? いや、ちょ、待って! これは何かの間違い……」


マズイ。このままだと俺の評価は最低値にまで下がってしまう。つーかもう手遅れっぽいけど! 仲の良い女友達から嫌われ、後輩からは軽蔑の眼差し。うぅ、なんでこんなことに……。


「恵、やっちゃっていいよ」

「分かった」


水川のゴーサインと共に春日がどす黒いオーラを出しながらこっちに近づいてきた。や、ヤバイ! 鬼神・春日のフルボッコ私刑コースだ。殴る、蹴る、抓る、えぐるの百烈乱舞。し、死ぬ! あまりの恐怖に尻餅をついてしまった。こ、腰が抜けて動けない。どんどん近づいてくるよぉ!?


「ま、待って春日ぁ! 俺は潔白だ! これは何かの間違いで……」

「うるさい」


駄目だ、完全に目が据わっている。獲物を見る狩人の目をしているよ。ガチでヤバイ!


「うっ、あぁ………っ……や、矢野! お前は信じてくれるよな? 俺はこんなことしないって」

「軽蔑します」


そ、それしか言わないじゃん。俺をゴミ虫を見るかのような目で見ているし……。


「ひ、火祭なら……」

「まー君、最低。信じていたのに」


見事に見捨てられた。いつも春日の暴行から俺を守ってくれていたのに。その女神が冷たい目で俺を見放してしまった。お、俺が何をしたっていうんだ。そうしている内に春日は目と鼻の先にまで接近しており、もう既に攻撃体勢。死刑執行人の双眸が俺を見下ろす。俺の死はカウントダウンへと突入した……!


「結局、兎月も佐々木達と一緒じゃん。男は皆、獣だね~」


……米太郎………おいおい、まさか……あいつらぁ! そうだ、そうに違いない! 去り際のあの意味深な台詞、午前中の行動と俺への謎の嫉妬……あいつらが俺の鞄にエロ本を仕込んだのか! あ、あの馬鹿ども……とんでもないことしてくれたな!


「春日、これは米太郎達の陰謀だ! だから俺は無実なんだ」

「言い訳はそれだけ?」


こ、こえぇ! あわわわ、まったく聞く耳を持たない。俺を殺すことしか考えないよ! なんか春日父の姿が重なった。刀を持っているのか!?


「落ち着いて春日、それでも僕はやってない!」


頼むから信じて! ヘタレの俺が拾ったエロ本をお持ち帰りテイクアウトするわけないだろ。そこまで腐っちゃいないからさ。そして度胸もないよ!


「うるさい」


しかし弁明及ばず、春日が止まることはなかった。大きく振りかぶった右足。あまりの殺気に息が詰まった。そこからは刹那の世界。ゆっくりと近づいてくる足がギロチンのように光り、空気を置き去りにする。全てが永く感じられ、なぜか俺は天を仰いだ。あぁ、なんて綺麗な空色なんだろう。この空はどこまでも広がっている。俺の知らない世界のさらに隅々にまで。空は全てを見ている。鳥が飛ぶのも、人が歩くのも、何もかも。全てを見守っている。米太郎の馬鹿がサボっていたのも、米太郎の馬鹿が俺の鞄にエロ本を入れたのも、全て知っている。だから空よ、今から俺がボコボコにされるのも見守っていてくれ。さぞや見事なボロ雑巾になるだろう。でもどうか笑わないで見ていてくれ。あなただけが記憶するちっぽけな俺の最後を………


なんてことを思っているうちに刹那は終了。眼前には死神の鎌よろしく春日の右足が。視界は一気に暗くなり、そして俺の顔面を弾き飛ばした。バキィっと何かが折れる音が耳の内側から聞こえ……たぁぁ!


「ぎゃああぁぁっ!」


痛いぃっ! 皮膚が! 肉が! 骨が! 脳が! 顔の全てが痛いぃぃぃ!


「まだ……」


ぼやける視界が捉えたのは春日の握りこぶし。そして今度は何の猶予もなくギロチンは下ろされた。立て続けに襲う激痛に俺の脳は機能停止。ぐにゃぐにゃに曲がった空と途切れる意識の中、俺はこう思った。


………オチ……これ?


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