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第89話 ボランティア部+α集合

「え~、皆さん今日は暑い中お集まり頂いて真にありがとうございます」


あ~……暑い………。地獄の猛暑日が続いたかと思いきや、先週には梅雨顔負けの大豪雨に台風上陸。そしてまた身を焦がす灼熱の太陽と再会。熱い抱擁を交わすが如く熱気が纏わりつく。


「昨今、マナーの悪い人が増えてきておりゴミが平然とポイ捨てされている状況です」


よくテレビで地球がおかしくなっていると言われているが、それも頷けるってもんだ。この暑さは尋常じゃない。このままだと地球はいつか滅びてしまうのであろう。それは遠い未来なのか、はたまたすぐそこにまで近づいているのか。


「やはり綺麗な地球があってこその我々人間だと思います。その地球を壊す側に我々は傾いています。それでは駄目だ、我々は地球を守る側にいなくてはならない」


それにしても本当に暑い。遠くの方から蝉がミンミンと鳴いている声が余計に暑苦しくさせる。雄の蝉が鳴くのって雌を呼ぶためにだろ? で、交尾して子孫繁栄。すごいよね。人で言うところの、道端でいきなり「ヤラてくれ!」と叫んでいるようなものなのだから。普通に捕まるって。犯罪だもの。あ、カラスの鳴き声。ガサガサと木の枝が揺れる音。……弱肉強食だなぁ、自然界は厳しいよ。


「それでは皆さん、ただ今から『地球を守ろう河川クリーン作戦』を開催します」


色々と喋っていた町内会の偉い人の長い話も終わったことだし、話をまとめると、今日はボランティア部の活動日である。


「兎月、話聞いてなかったでしょ」


隣の水川がジト目でこっちを見てくる。おいおい、馬鹿にしないでもらおうか。


「地球を守ろう爆裂クリーンレンジャー戦隊だろ?」

「違うし!」






夏休みに入って早一週間。相変わらず補習がキツイし、春日のパシリもキツイ。そんな中、今日は地域で開催される掃除活動の日だ。河川沿いを清掃するもので、近くの住民やら中学生が多く参加している。そして俺の所属するボランティア部もこの活動に参加することになった。これが夏の一大活動だったりする。


「いやー、暑いなぁ。でも学校は公欠~」


うちの学校からはボランティア部しか参加していない……なのだが、なぜか米太郎がいる。


「なんでお前がいるんだよ。今日も補習だろうが」


今日、俺達ボランティア部は学校公認の欠席、つまり公欠で補習は出なくていいことになった。それだけでこの活動には感謝しなくちゃいけない。だがボランティア部でない米太郎がここにいるのはおかしい。


「はは、これに参加したら公欠で補習受けなくていいって聞いたからな。水川に言って押しこんでもらった」

「それならそうと俺にも言っとけよ」

「ただの平部員の将也に言っても意味ないじゃん。やっぱ部長のマミーに言わないと参加は厳しいだろ?」


なるほどね。つまりこいつは補習をサボりたいがために参加したのか。……ボランティア活動なめてるだろ?


「マミー言うな」


突如、俺の真横を白い物体が通過した。


「痛っ」


まっすぐにブレることなくその白い物は米太郎の顔面に直撃。ポトリと地面に落ちる。白い丸まったビニール袋だった。


「道具持ったら移動するよ。早く準備しろ、野菜コンビが」


野菜コンビで一括りにしないでくれ。声の主である水川にそう言い返そうと後ろを振り向けば……そこには清掃服姿の美女三人がいた。つーか水川と春日に火祭の三人。


「なんで火祭と春日もいるんだ?」

「私が呼んだから」


すげーな水川部長。ボランティア部の活動にボランティア部じゃない奴を三人も呼んでさらには公欠扱いにまでさせるとは。


「まー君が部長だと思ってたけど、違うんだね」


今日も絶好調に可愛い火祭。灰色の地味な清掃服がドレスに見えてきそうなほどだ。


「……兎月」


今日も無表情に不機嫌そうな春日。お嬢様の春日に清掃服はまるで似合っていない。……あと、そんな嫌そうにするなら参加するなよ。なんですかー、掃除終わった後のジュース目当てですかー?


「あれ? 春日、軍手は?」


火祭や水川はちゃんと両手に軍手をしているが、春日だけは何もつけていない素手のまま。今から清掃活動だってのに軍手なしはキツイだろ。草むらで手を切る恐れもあるし、絶対汚れるよ?


「……これ」


春日がポケットから取り出したのは穴の空いた軍手。随分とくたびれている……古いやつか。


「意外と参加者が多かったからな。新しい軍手はなくなったのか」


参加人数およそ七十人。平日なのに町を愛する人がこんなにも集まってくれたことに感動しつつ、その多いがゆえに道具も足りないという現状。そのままだと何も出来ないだろうし、春日の手を汚すわけにはいかないからな。……よし!


「ほら、俺のマイ軍手使っていいから」

「マイ軍手って何だよ!?」


うるせー米太郎。ボランティア部は掃除とかの活動が多いから、ある程度の道具は持っているのさ。さすがにマイ箒はないよ。ホグワーツじゃないから。


「……兎月は?」

「そっちの古いやつ使うから大丈夫。ほら、両手出して」

「……うん」


春日の両手に軍手を丁寧にはめていく。ったく、こんな繊細で綺麗な手なんだから大事にしないと。それにしても、よく周りに軍手を変えろと言わなかったな。最初会った時は席譲れとひどいワガママっぷりだったのに。偉いぞ春日。


「はい、これで大丈夫」

「……ありがと」

「どーいたしまして」

「待ちやがれ将也」


ずいっと米太郎の顔がすぐ横に現れた。キメェ、俺から離れろ。


「なんだそのラブラブムードは。今から掃除だってのに浮かれてんじゃねぇよ」


はぁ? 別に浮かれてないぞ。むしろ浮かれているのは公欠でサボれたお前だろうが。


「別にただ春日に軍手貸しただけじゃんか」

「そんなもんパッと渡せばいいだろうが。な、ん、で! お前がつけてやる必要があるんだよ?」


………あ~、確かにそうだけど……いや、その……


「…えっと……その、流れ的なやつで自然としちゃった感じ?」

「それがラブラブなんだよ! イチャイチャと両手握りやがって……そーゆーことは余所でやってろ!」


うわ、妬みかよ。寂しい奴だな~。俺みたいに誰かの下僕したらどうだ?なんなら俺と代わる? このお嬢様の相手は骨が折れるぞ~?


「……むぅ」

「火祭? ど、どうしたの?」


視線が痛いと思って春日の隣を見れば、不機嫌そうな火祭がこちらを睨んでいた。さっきまでニコニコしてたじゃん。何があったのさ……。


「み、水川なんとかしてくれ」

「まぁ、とりあえず移動しよっか」


こういう時に頼りになる水川。さすがは部長さん!






場所は変わって、河川の下流。緩やかな川の流れとせせらぎが気持ちをのほほんとさせる……と思いきや、暑くてそんなの関係ない。風流だなんて知るか。暑いものは暑い。あー、暑い。


「じゃあ人数確認するぞ! はい番号! いーち!」


クソ暑いってのに馬鹿な山倉のデカイ声で余計に暑苦しくなる。


「普通に数えるからお前は黙ってろ」

「兎月は冷たいなおい! 第76話以来の久しぶりの登場なんだから、もうちょっと見せ場くれよ!」


メタな発言は控えろ。今までそーゆーことはなしでやってきたんだから。ギャーギャーうるさい山倉は無視して人数を確認しとくか。まずは二年生から、ボランティア部の山倉と水川そして米太郎に火祭と春日。俺を含めて二年生は六人だ。続いて一年生、


「兎月先輩、早く点呼してください。私、早く掃除したくてウズウズしてるんですよ。兎月先輩と違って」


いつも通りの先輩を敬することを知らない(俺に対してだけみたいだが)、一年生女子の矢野。それと仲良し男子二人。この二人が小学校からの付き合いで大親友だという裏設定は何の伏線にもならない……というメタな発言は控えておこう。


「合わせて九人、と。よし、全員いるな。というか多いくらいか」


ちなみに三年生の駒野先輩は来ていない。引退したし、そもそも三年生は俺達以上に補習で忙しいので来れるはずもない。やはり受験生は大変だ。夏を制するものは受験を制するらしいよ?


「よし、じゃあ今から清掃活動始めるわけだが………詳しい説明は水川、よろしく」


時間とか場所などの詳細は部長である水川が全て把握している。「知らないなら、でしゃばらないでください~」と矢野から野次が飛ぶ。


「えっと、私達が担当する区分はここの下流で、時間は三時半まで。途中に昼休憩もあるから無理はしないように。あと気温も高いからこまめに水分補給して熱中症には気をつけてね」


おぉ、さすが水川部長。見事な説明に思わず感嘆の息がもれたよ。水川はこーゆーの得意だからな。やっぱ俺より部長に向いているよ。俺を部長にしなくて正解ですよ、駒野先輩っ。


「それじゃあ始めましょう。皆で地球を守るのだー!」

「おーっ!」


今の何!? それって今日のスローガンですか? もっと良いのがあったんじゃないのか?



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