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第68話 友達になりました

金田先輩が何やらお話があるということで場所を移動することに。てことでやって来たのは食堂。辺りを見渡せば体操服姿の生徒だらけ。もちろん俺も春日も金田先輩も体操服姿である。クラスマッチだからね。春日も金田先輩もテーブルに座ったことだし、目の前に置かれたメロンソーダをがっつり飲んじゃいます。この爽快な炭酸がたまらねぇ!


「メロンソーダ奢ってくれてありがとうございます」

「構わないよ。そのくらいはさせてもらうよ」

「そういえば金田先輩はクラスマッチどれに出場してるんですか?」

「僕は卓球だよ。やたら声の大きな二年生の男子に負けてしまったけど」


山倉だ。間違いなく山倉だ。


「早く話して」


こら春日。せっかく人が軽い雑談でもして、場を温めようとしているのを壊すんじゃありません。


「そ、そうだね。恵さん達に時間をとらせるわけには」

「早く話して」

「ご、ごめん」


うおおぉ、すげぇ嫌っているし……。ええぇ~? そんなあからさまに拒絶しなくてもいいじゃん。あなた達は小さい頃からの付き合いなんでしょ? だったらもうちょい愛想よくしなさいよ。春日の尋常ではない険悪な態度に俺まで萎縮してしまいそうだ。嫌な空気が沈黙として数秒流れた後、金田先輩が口を開く。頑張ってください。


「その、先週は本当にごめん。僕の勝手な都合で結婚なんて大事なことを軽率に発言してしまって。恵さんの気持ちも考えずに……申し訳ありませんでした」


お~、誠意のこもった声、きっちり垂直に頭を下げるその姿はもう立派な社会人ですな。体操服着てるけど。とにかくさすが未来社長、ホント礼儀正しいよ。


「こっちにも色々と問題があって……その……でも進一さんのおかげでなんとか収まりそうだ。本当に感謝しているよ」


進一さん? ああ、春日の親父ね。あの後何か話をしてたからな。金田先輩にも何やら深い事情があったみたいだし。春日父はそれについて思い当たる節がありそうな雰囲気だったけど……はいその辺はそちらサイドの問題ですよね。それこそ本当に俺には関係のないことー。


「それでお詫びとして何かしたいのだけど……」

「いらない」


即答で拒否。おいおい? あんまりでしょ、せっかくのご厚意だってのに……これだからお嬢様は困るぜ。喜んで受け取りなさいよ。


「で、では兎月君」


は? 俺?


「君にもお詫びしたいんだが……何か受けとってくれないか?」

「いや、このメロンソーダで十分ですよ」


庶民の俺はこれで満足してますから。


「そう言わず、何かさせてもらえないか?」


んー……とは言ってもなー。今そんな欲しい物はないし、さすがに現金はいやらしいから駄目だし。うーん……何かいいものは…………おおっ、そうだ!


「でしたら自転車買ってくれませんか?」

「自転車?」


そう自転車。人が移動手段として活用する便利なグッズ。あるシリーズのゲームではもう定番アイテムだ。あるとないとでは移動時間が大きく変わってくる。そして意外と高級品。うん、高校生にとっては高級ですぅ。自転車だなんて代物、普通はおじいちゃんとかに買ってもらうべきなのであろう。でもうちのじいちゃんは買うどころか壊しやがったし。自転車が壊れてしまってから最近はずっとバス通学だったのだ。てことで自転車が欲しい! てことで金田先輩金持ちだし、てことで思いきって頼んでみた、てことで!


「自転車だね。うん、構わないよ。一流メーカーのスーパー電動自転車を贈らせてもらうよ」

「そ、そんな高いやつじゃなくていいです。フツーの自転車でいいですから」


そんなの乗ったら逆に恥ずかしいわ!


「そうか。分かった。後日、自宅に届けるよ」

「ありがとうございます」


やった! これでまた自転車通学出来るぜ! もうじじいには乗せないからな。家で大人しくしているがいいさ!


「では僕はこれで失礼するよ。恵さん、これからはまた友人として付き合っていこう」


立ち上がって上品スマイルで手を差し出す金田先輩。しかし春日はそれを無視する。そして代わりになぜか俺の手を握ってきた。え、なぜ?


「あっ……え、えっ………?」


ほら、先輩が困ってるじゃんか。どうして俺の方の手を握るんだよ。俺が超嬉しいだけじゃねーか。


「お、俺も金田先輩と友達になっていいですか?」


自転車買ってくれるし、フォロー入れないと。


「もちろんさ」


左手は春日と、右手は金田先輩と手を繋ぐ。なんか仲良し三人組みたいになっちゃった。春日と金田先輩も手を繋いだら輪ができるんだけどな。春日は金田先輩の方を一切向かないしさ。そんなに嫌いなの? ここまでくると金田先輩が可哀想になってきたよ。


「それじゃあ失礼するよ。時間をとらせてすまなかった」


金田先輩は上品スマイルのまま食堂から去っていった。受験勉強頑張ってくださいね。目指せH大学!


「……兎月」

「どした?」


まだ手握るんだね。いや、俺はとてつもなーく嬉しいからいいけどさ。


「自転車で通うの?」

「まー、そうなるな。やっぱ運動したいし」

「……」


ん? 何か問題でも?


「……バスは?」

「いや、バスはもう乗らな………あ、そっか。春日はバスだったよな」


ここ最近は金田先輩の車で通学していたけど春日は元々バス通学だ。あー、春日を一人でバスに乗せたら……また他人の席を奪いそうだな。そりゃいかん。しかし俺も自転車で行きたい。


「良かったらさ、自転車に乗せていこうか?」


まぁ軽い冗談だって。一回乗せたことあるけど嫌がってたしね。春日が自転車の後ろに乗りたいなんて言うはずないしー、今のも本気にはしていないっしょ。


「なーんて冗だ」

「うん」

「……え?」

「乗せてくれるんでしょ?」


……………あ、ヤバい。もう戻れない。この感じ、なんかもう決定してしまった。う、うぇ? このクソ暑い中、後ろに人を乗せて自転車を走らせるとか……汗ダラダラになっちゃうって!


「……た、たまになら、ね?」

「そ」


ち、ちょっとこれは替えのシャツがいるかもしれないぞぉ?


「あ、いたいた。兎月!」


ん? サッカーのメンバーである遠藤がこちらにやって来た。なんだ遠藤か。どうしたんだい?


「あと一時間で三回戦だぞ」

「いや、まだ一時間あるし」

「練習するんだよ!」


マジ? どんだけ張り切ってんだよ。


「ちょ、俺まだ昼飯食ってないぞ」

「んなもん適当にパンでも押しこんどけ。ほら、行くぞ」


肩を掴まれ、ずるずると連行される! ぐっ、離せ。俺はまだ昼ご飯を食べていな……ぐぅ、いなーいのにっ! ぐあああ、遠くなる春日の姿。俺を無表情で見つめている。た、助けてくれないのねー。


「じゃ、じゃーな春日! またあとでメールするわ」

「イチャイチャする暇があったら練習だ」


はぁ、今更練習なんかしても意味ないと思うけどな。つーかイチャイチャしてねーし。



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