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第44話 とりあえず学園祭は体育館にいればだいたい盛り上がるから

前回でキャラ紹介は一応終わりました。

また新キャラが出てきたらすると思います。


そして感想待っております。あざとくないよね?


「それじゃあ宴の始まりだぜぇ! 皆、盛り上がろうぜー!」

「イエーッ!」

「あー、へいへい♪」


体育館のステージ。照明は落とされ、唯一の光であるスポットライトを浴びるのはクラスメイトの男子数人。拙いダンスと歌を披露している。


「うっ、ゴホッ。む、むせた……」

「お、おい、歌ないと踊れないだろ」

「い、いいから適当に音に合わせろよ。っあ、の、えっと……ぁ、ぇっと……」


あまりにグダクダすぎてリハかと思える程だ。こんな白けた空気は初めてだ。夏前だってのに寒気がした。失笑も起きない完全沈黙の観客。


「……なぁ、米太郎」

「……どうしたよ、将也」

「なんで俺たちはここにいるのだろうか」

「そりゃ遠藤達からステージで演奏するから見に来いって言われたからだろ」


ステージの中央でメジャーなアニメの主題歌を歌うクラスメイトの遠藤。声全然出てないし、他の奴らもまともにステップすら踏めていない。全員しどろもどろ状態。人に見せれる演奏じゃない。恥ずかしいならエントリーするなよ。


「どうするよ米太郎」

「ドロンしようぜ」


なんか古い表現だなそれ。完成度の低さと観客の盛り下がりが見事に比例した体育館から出ると、眼前に映る様々な屋台やお店がズラリと。


「さすがは学園祭、賑やかだな」

「今の体育館内は引く程寒いけどな」


それはもう忘れようぜ。あいつらも頑張ったんだから。あ、俺の中で過去のことになってる。


「何か買ってくか?」

「野菜の何か買おうぜ」

「野菜の何かって何だよ」


六月の始め、今日は高校の学園祭である。隘路であった中間考査も無事終わり、赤点が一つもなかったのは火祭と水川さらに春日のおかげである。勉強教えてくれてありがとう! 赤点回避に加えて、最高順位取れました!


「どこ行く?」

「とりあえず教室に戻ろうぜ」


特に行きたい場所もないしな。ラムネを飲みつつ米太郎と二人で教室へと向かう。学校は開放されており、一般の人も多く来場している。来場者のほとんどは生徒の親とか兄弟とか家族関係だと思うけど。


「……おい将也」


米太郎が小突いてきた。その顔はすごく真面目だった。はい? どした?


「なんだよ」

「前見ろ」


囁くように小さな声で話す米太郎から視線を前に切り替えると……目の前には廊下をくねくねと歩くスタイル抜群の女性が……! 谷間パネェ!


「……八十七点だな」

「おっぱい大きかったな。あれ絶対誘ってるよ。やべ、興奮してきた」


などと中学生みたいなやり取りをしているうちに教室へ到着。ちなみにいつもの教室ではなく違うクラスの教室を使ってうちのクラスは模擬店を開いている。教室に入ると一人の女子生徒がこっちに気づいた。


「あれ? 兎月と佐々木のシフトはまだでしょ?」


僕らの親友、水川だ。エプロン姿でこちらに寄って来た。


「暇だから」

「遠藤君達のステージ見に行ったんでしょ。どうだった?」

「ひどかった。普通に歌えばよかったのに無理にダンスを取り入れてさ。もう忘れたいくらい。それはそうと、結構お客さん入ってるじゃん」


ちなみにうちのクラスではドーナツ屋さんをやっている。お店で買ったドーナツをそのまま売っているだけなんだけどね。あとはジュースとか。これもお店で仕入れたやつだ。さすがにドーナツを一から作るわけにはいかないからね。これこそ学園祭クオリティー。


「手作りエプロンの効果かもねっ」


その場でくるりと一回転する水川。確かに可愛らしい。水川のスペックに加え、フリフリのキュートなピンクのエプロンがさらなるパワーアップ効果をもたらしている。その辺の店員より格段に可愛い。俺が一般の客だったら「おっ」とか言ってドーナツを注文していることだろう。


「確かに可愛いな」


米太郎も俺と同じことを考えていたようだ。


「で、これから二人はどうするの? 暇ならお店手伝ってよ」

「コーヒーと一番安いドーナツを二つずつ」


素早く注文して俺と米太郎はテーブルに着席。テーブルと言っても机を四つあわせた上にテーブルクロスを敷いた簡易なものだ。でもこれが学園祭っぽくていいよね。


「クラスメイトでもお金は取るからね」


そう言って水川はテーブルから去っていった。分かってるよ、だから一番安いやつ頼んだんだよ。


「それにしても、いい眺めじゃないか。うへへへっ」


エプロン姿のクラスメイトの女子をじろじろと観察する米太郎。口から洩れる下品な笑い声が気持ち悪い。メイド喫茶にでも入ったつもりか。周りは全員クラスメイトだぞ。


「あ、兎月君だ。お客さんなの?」


クラスメイトの一人が話しかけてきた。やっぱ手作りエプロン姿が可愛い。なんか可愛い。


「うん、普通に客として来ているよ」

「じゃあ知り合いということでドーナツ一つサービスね」


お、マジでか。いやー、なかなか気の利いたことしてくれるじゃんか。ヤバイ、好きになりそう。ドーナツが一つだけ乗った皿がテーブルに置かれる。


「え、将也だけ? なんで俺の分はないんだよ!?」


向かい側で米太郎が子供のように喚き出した。


「佐々木君、視線がいやらしい」


うわぁ、米太郎嫌われてるよ。そんな目で女子を見てたからだろ。米太郎に冷たい視線を投げかけてクラスメイトの女子は去って行った。


「うっ……は、反省します」


てことは、このドーナツも米太郎への当てつけで持ってきたんだろうな。俺のこと好きなのかな!? と浮かれた自分が恥ずかしいです……。


「あっ、桜~。来てくれたんだ」


俺達のオーダーの品を運んでいた水川が嬉しそうな声を上げた。教室の入口を見ると、女子数人と火祭の姿が。


「遊びに来たけど……かなり繁盛してるね」

「や~ん、真美ちゃんのエプロン姿かーわいーいーっ」

「えー、ありがとぉ」


女子達がキャピキャピ喋りだした。早くコーヒー持ってきてよ。ドーナツで喉パサパサになっちゃう。


「そういえば桜、ちゃんと兎月のこと誘った? あいつ野菜コンビで行動してるよ」

「い、いや誘ってないよ……」

「駄目だよ桜っ。ちゃんと言わないと」

「そうだよ。私達とじゃなくて、兎月君と回ればいいじゃん」


いつまでキャピキャピやってんだよ。また米太郎がいやらしい目で観察しだすぞ。


「ちょっとお店の人ぉ? 注文したのがまだこないんだけどぉ」


やたら甲高い声の米太郎。クレーマーみたいなキャラを演じているのだろう。テーブルをトントンと指で連打している。すると、水川と火祭がこちらへやってきた。


「おぉ、火祭。こんにちは」

「こんにちは」

「お待たせしました、ご注文の品です」

「ぐへへっ、姉ちゃん良いカラダしてるじゃねぇかよ」


四者四様の言葉が飛び交う中、米太郎の台詞と同時に働いているクラスメイトの女子全員が悲鳴が上げた。そりゃ、あんなこと言ったらそうなるわな。


「グループで回っているんだな」

「それなんだけど……」

「皆、箒持ってきて」

「待った水川! ほんのジョークだって!」


目の前で米太郎が箒でシバかれているけど、気にしないでおこう。


「よ、良かったら一緒に回らない?」

「え、火祭のグループと?」


女子しかいないじゃん。無理無理、恥ずかしくてまともに喋れないって。


「そうじゃなくて……わ、私と二人で」

「火祭と? 他の皆はいいの?」

「皆にはちゃんと言ってあるから大丈夫。……駄目かな?」


いやいや、火祭と二人で学園祭を楽しめるなんて超ハッピーイベントだよ。歓喜で雄叫び上げそうなくらいに。


「俺なんかで良かったら大歓迎だけど」

「良かったぁ」


火祭みたいな可愛い子が誘えば誰だって返事はオーケーだって。もっと自分に自信持つべきだと思うよ。


「じゃ、行こっか」

「うん」


火祭と一緒に教室から出る。


「やったね桜。その調子でカンバッ」

「いててて……あれ? 将也いないじゃんか! どこ行ったんだよ!?」



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