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第4話 ヘタレ体質

今回はちょっと短いです。


この程度のこと言わなくてもいいんですが、なんか前書きを書きたくて………


今度はもうちょっとマシなこと書きます。

「よし、今日は自転車で行けるぜ」


下僕宣言を受けた翌朝、三日ぶりの自転車通学に俺は若干テンションが上がっていた。じいちゃんも昨日はクラブで弾けた後カラオケでオールしたらしく、まだ布団で寝ている。老人にしては非常に不健康だが、元気なので良しとしましょう。せいぜい余生を楽しく過ごしな、じじい。

自転車に跨がりペダルを漕ぐ。吹き抜ける春風がなんともまあ気持ちいい。今日はなんだか良い事がありそうだ。うふふふっ。











「……これはどうしたら………?」


うちの学校は坂道を登ったところにある。その坂道の途中に俺が一番会いたくない女子がいた。そう、春日だ。こういう状況でさっきの台詞が出たわけだ。このまま通過してバレないだろうか? ……たぶんバレないだろ。非常に危険だが、春日と知り合ったのは昨日。顔も覚えられていないだろうし、ましてや自転車に乗って後ろ姿しか晒さないから気づかれないはずだ。頑張れ俺。存在感を消すのだ。地味にそしてごく自然に駆け抜けろ。

意を決して力強くペダルを漕いでいく。どんどん加速していき、そして春日を追い抜く。よし、通過したらこっちのもの!


「兎月」


急ブレーキしましょう。名前呼ばれちゃったもん。


「お、おはよう春日」

「……」


うーん……外見は完璧なのに性格が欠陥だらけなんだよな。あと、その無表情なんとかならないのかよ。もっと愛想よく笑いなさいよ。シンジ君風に言わせてもらうなら、笑えばいいと思うよ。


「アンタ、今日はバスじゃないんだ」

「まぁ、ご覧の通りチャリ通なもんで」


チリンチリンとベルを鳴らすが春日の目つきがキツくなりギロリと俺を睨んだので慌ててやめる。あー恐ろしや。


「鞄持ちなさい」

「はい」


何も抵抗できず、イエスと答えてしまった。春日の鞄をカゴに入れて再出発しようとしたが、


「アンタは私の後ろから来なさい」

「な、なんでだよ」

「来なさい」

「分かりました」


だから俺弱っ。

自転車を降りて手で押す。その前を春日が歩く。うぅ、なんと惨めな……。ガツンと言ってやると決めていたのに本人を目の前にすると言葉が出てこなかった。春日に命令されると反論できなくなってしまう。大人しく従ってしまう。なぜだ?


「はぁ……なんで言い返せないんだろ」

「それがアンタの体質よ」


……答えが返ってきた? もしかして今、声に出てた? うっわ、ヤッベ。


「い、いや今のは言い間違いで……って体質?」


なんだ体質って?


「アンタの父親って私のパパの会社の社員でしょ」


ば、バレてる! な、なんで分かったの?


「気になったから色々と調べたわ」

「気になったって何が?」

「別にアンタのことじゃないわ」


そ、そうですか。すいません。


「じゃあ何?」

「アンタが私の命令に従順な理由、分かる?」


それってやっぱ俺のことじゃね? いや、ここでツッコんでも意味ないから言わないけどさ。


「アンタは犬なのよ」

「い、犬?」

「主人に忠実な犬ってことよ」

「はぁ? なんだそれ。ふざけるな、俺はお前に尻尾を振った覚えはない」

「口答えするな」

「はい、すいませんでした」


……ってあれ? またもや簡単に謝っちゃった。嘘…ま、まさかこれが……!?


「それよ。アンタは自分の犬精神に基づいて本能的に命令に従うのよ」


う、嘘だろ? そんな体質の持ち主だったのか俺。とんだヘタレ体質じゃねーか! んな情けない体質だったなんて……うわ、ガチでへこむわ。

顔を上げると春日が微笑を浮かべていた。笑顔の春日、初めて見た。微笑だけど。ものすごい嫌な笑みだけど。


「アンタの昨日の見事な従順っぷりを見る限り、中々の犬体質だったわ」


お褒めの言葉かもしれないが、まったく嬉しくない言葉です。できれば撤回してください。お願いしますから。


「そういうわけだから」

「う、嘘だ! 俺はそんなヘタレじゃない!」

「早く行くわよ」

「はい」


………ああ……俺、ヘタレだなぁ。



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