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第37話 誰かの家に集まると遊んでしまう

「へぇ、立派な家じゃないか」


我が家を見た米太郎がそんなことを言ってきた。随分と偉そうな上目線だが、気にしないでおこう。勉強会しようぜ! という米太郎発案の下、水川と火祭の協力を得て、俺達四人は俺の家へとやって来ました。俺の立場からだと、三人を招くという形なわけです。上品に言えば、ご招待しました。不良っぽく言えば、ちょっとダチ連れてきたわ。


「兎月の家って一軒家だったんだね。てっきりマンションだと思ってた。兎月だから」


水川……俺ってマンション顔なの? つーかなんだマンション顔って。どんな顔だよ。


「とにかく入らせてもらおうかな。中を見ないと」


お前は匠か。リフォームのお願いはしてないから。お前は自分の脳の収納スペースを探しとけ。匠気取りの米太郎は無視して、俺と水川と火祭は玄関へと進む。


「ね、ねぇ。あれ……何?」


ドアを開けようとした瞬間、後ろの火祭が制服の裾を引っ張ってきた。何か気になるものでも?


「……なんだこれ」

「自転車……だよね?」


米太郎と水川も引いた物体、それは半壊した自転車だった。邪魔にならないように庭の隅に放置されている。前輪は大きく歪み、チェーンは切れて垂れ下がり、ただのスクラップ。誰がどう見ても使用不可と診断するだろう。


「じいちゃんが事故ってさ。ぶっ壊れたんだ。そのせいで自転車通学できなくてさー、ホント最悪ー」


まあバスも快適だから文句ないけどね。夏になればさらに快適だと感じることであろう。


「お前ん家って結構危ない?」

「質問の意味が分からんぞ。とりあえず普通だと思う」


そもそも自分の家が異常だなんて思いたくない。


「それでおじいさんは無事だったの?」

「じいちゃんは奇跡的に無傷。今日も友達とカラオケに行ってるらしいよ」

「……中々ファンキーなんだね」


そうなんだよ。ファンキーなんだよ。俺の自転車を無断で使って、そんで壊したんだぜ。そのくせ、えへっとか言って黒砂糖飴渡してきやがった。ふざけんな飴一つで納得するわけないだろうが。カラオケ行く金で弁償しやがれ!


「あ、俺達もテスト終わったらカラオケ行こうぜ!」

「とりあえず家の中入ろうぜ」

「俺を無視しないで将也ぁ」


腰にまとわりつく米太郎を無視しつつ、ドアを開ける。カラオケはまた今度な。今はテスト勉強だから。


「どうぞ入って」

「「「お邪魔しまーす」」」


わらわらと中に入る米太郎達。すると母さんがリビングから出てきた。おい、口元に煎餅のカスついてるぞ。


「おかえり将也……あれ? お友達?」

「ただいま母さん。うん、学校の友達」

「初めまして、クラスメイトの水川です」

「火祭です」

「佐々木米太郎です」


なんでお前はフルネームで名乗るんだよ。


「あら、初めまして。将也が友達を連れてくるなんて夢みたい」


そんなに珍しいか? でも確かに高校生になって初めてかも。つーかそんなこと言わないで。なんか俺が友達いないみたいな感じになるじゃん。大丈夫だって、友達一杯いるから!


「しかも女の子二人はどっちも美人さんだし。どっちと付き合ってるの?」

「母さん!? 恥ずかしいからやめて! そんなの求めてないから」

「えっと、こっちです」

「水川!? なんで火祭を指してるの!? 付き合ってないから!」


ほらぁ、火祭も顔真っ赤だよ。も、もしかして怒ってる? ご、ごめんね。変な勘違いされちゃって。もう母さん! 恥ずかしいからやめて!


「ちなみに僕とこちらの水川が付き合っ」

「冗談も大概にしなさい佐々木」


米太郎が言い終わる前に水川がぴしゃりと否定する。


「……すいませんでした」


マジでへこむなよ米太郎……。


「と、とにかく! 俺の部屋二階だから、こっちこっち」


このままだと埒が明かないので無理矢理三人を二階に案内する。階段を上がってると、下から母さんが叫んできた。


「ちゃんと部屋掃除してるんでしょうね。お母さん嫌だよ息子の汚い部屋を見せるの」

「それなりに綺麗にしてるから大丈夫。つーか勉強するから邪魔しないでよ」

「勉強するの? なら何か出さないとねぇ。ちょっと100%オレンジジュース買ってくるから待ってて」

「恥ずかしいからやめて! そっとしといてよ」


息子が友達連れてきたぐらいでどんだけテンション上がってんだよ。


「お母さんと仲良いんだね」


ニッコリ笑顔の火祭。家族愛だね、みたいな顔はやめてくれよ……。


「まぁ悪くはないよ。いたって普通のファミリー」

「将也って一人っ子?」

「ああ」


そんな会話をしつつ俺の部屋の前へと到着。ドアを開く。はい、ここがマイルームです。ベッドに机や本棚、ごく普通の部屋ですよ。


「へぇ、意外と綺麗にしてるじゃん」


意外とはなんだ水川。自慢じゃないが部屋の掃除は結構マメにしているんだからな。


「ここが、君の部屋……」


ひ、火祭さん……そんなじろじろ見ないでよ。恥ずかしいじゃない。


「将也ぁエロ本どこ? やっぱりベッドの下?」

「黙れ米太郎!」

「へぶぅ!?」


鳩尾に拳を叩きこむ。大人しくしとけ馬鹿。


「下から座布団とテーブル持ってくるから適当にくつろいでて」

「じゃあ適当に漁っておきまーす」


そう言って棚の本に手をかける水川。遠慮というものを知らないのか、お前は。ほって置くと部屋が荒らされそうなので急いでテーブルを取りに一階へ降りる。見られちゃマズイものはないと思うが、色々と漁られるのはあまりいい気はしない。急がなくては。


「母さん、テーブルは? って、いないし。マジで100%オレンジ買いに行ったのかよ。……えっと、確か客間にあったような」


客間のふすまを開ける。ビンゴ、テーブルがありました。テーブルと座布団三つを器用に持ち上げる。階段を上がる時は縦に持ち替えるなど結構重労働だった。米太郎にも手伝ってもらえばよかったな。あいつを客扱いした時点でミスだった。あいつはただの米太郎なのだから。


「あ~……なんかもう疲れた」


やっとのことで部屋に到着。ドアを開けると、


「えー!? これが兎月!? めっちゃ可愛いじゃん」

「う、うん!」


小学校のアルバムに夢中な水川と火祭。うおおぉぉい、どこから引っ張り出してきたの!? 恥ずかしい!


「なー将也ぁ。お前って巨乳派? 貧乳派?」

「お前はまだエロ本探してんのかぁ!」

「ぐへぇ!?」


俺式『昇竜烈波』! ベッドに倒れこむ米太郎。


「えへへー、将也君の匂いがするぅ」

「付き合いたてのカップルかっ! これ以上ツッコませないでくれぇ!」


勉強会なのに勉強する前に気力体力もう0です……はぁ。



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