表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/150

第15話 宿題なんて写すもの

五月四日、祝日。え~と確か…みどりの日だったかな? とにかく祝日だ。うん、ホリディ。春日との豪華ディナーの翌日。起きた俺を出迎えたのは、ご飯と味噌汁に生卵一つ。あまりのギャップに目眩がしてくる。


「これが現実……か」


朝からコーラをがぶ飲みするファンキーなじいちゃんの横で朝食をとる。はは、なんて質素な朝飯だ。キャビアの一缶ぐらい出せないものかね。俺は高級レストランで食事した将也様だぞ。様付けされたんだぞ。


「将也、宿題は終わったの?」

「うるさいなー。もう少しで終わるって」


母さんの小言を流しつつ朝食を口の中へ流しこむ。あ、味噌汁美味しかったです。


「宿題……はぁ」


GWだからとか言ってうちの担任は大量の宿題を出してきやがった。はっきり言って超迷惑だ。せっかくの連休を宿題なんかで無駄にしたくない。賢い奴なら、一日のノルマを決めて無理なくしっかりとした計画を立てるであろう。だが俺は賢くないので、まだ何も手につけていない。さて、どーしましょ?


「とりあえず、数学からやりますか」


朝食を終えた俺は自分の部屋に戻って椅子に着席。何日かぶりに鞄を開いて宿題の範囲を確認することに。


「えっと数学は……問題集のP45~P56、一年の総復習か」


よし早速やりますか。パラパラと問題集を開いてみる。そこにはぎっしりと敷き詰められた数式もとい問題文。開始数秒で問題集を閉じる。戦意喪失だよチクショー。


「……これを見るだけでやる気が0になるって………量が多すぎるだろ馬鹿担任が」


正当な怒りをぶつけて俺は他の教科の範囲も確認する。……どれもこれも大量てんこ盛りだ。これだけの量を一人で裁くのは到底無理。できる奴といえば聖徳太子ぐらいじゃないのか? いや分かんないけど。今日を入れてあと三日……終わるのか?


「……だ、大丈夫だろ。俺、三日で月の衝突を避けたことだってあるんだから」


まあ、あれはゲームだけど。


「と、とにかく! やみくもに問題を解くしかないな。行くぜ!」


数学は机からリングアウトさせて、新たに化学の問題集を開く。………あー………うんうん……あ…………あぁ!?


「化学難しい!」


モルだかモツだか知らないが化学で計算があるなんて反則だろ。モル比と係数比は同じ? 物質量? そんなの知るか。アボガドロ自粛しろ。いらん発見するな! ……あー、マズイな。数学と化学の二つで心が折られたのだ。まだ見ぬ強敵、英語は一体どれほど難しいんだ……!? ヤバイ、これ終わんない。夏休み最終日の悪夢再来だよコンチクショー。


「こうなったら助けを呼ぶしかない」


一人では無理。やはり誰かに助けを求めるしかないでしょうよ。持つべきは友、皆で力を合わせれば不可能はない! 携帯を取り出し、ボタンをプッシュ。まずは……米太郎。


「もしもし、米太郎?」

『夏休みの悪夢再来ぃー!』


ピッとすぐに通話終了。使えねえ馬鹿だったよ。そもそもあいつに助けを求めたのが間違いだった。次は……マミーこと水川ちゃん。


『もしもし?』

「あ、水川? 宿題終わった?」

『大方終わったけど』

「ナイス! ちょっと見せてくれる? 俺が水川ん家まで取りに行くからさ」

『いいけど、私いま和歌山にいるよ?』

「は?」


和歌山? なぜに?


『お母さんの実家に帰ってるんだー。和歌山にまで取りに来るならいいけど?』

「そんな所まで行けるか……なんだよマミー!」

『マミー言うな! ピッ』


………ま、まだ他にも助っ人はいるはず。携帯のコールを止めちゃ駄目だ。次は……











「……ふぅ。なんとかなった」


片っ端から電話をかけ、何人かが俺に救いの手を差し延べてくれた。明日学校に集合、皆が宿題を見せてくれる手筈だ。これで英語、化学、国語は安泰だ。ざまーみやがれクソ担任が。クラスの団結力なめるな。男子オンリーだけど。そして、あと一つだけ解決すべき問題がある。それは、


「数学をどうするかだな」


数学だけは誰も終わらせていなかった。皆も数学が大嫌いなんだね。それには共感します。これだけは自分でやり遂げようとは思うけど……無理だな。だって公式が理解できていないんだもん。基礎のできていない俺が応用問題を解けるはずがない。ギラを覚えていないのにベギラゴンを唱えられないのと同じことだ。


「数学も写すしかないな。でも他に誰が……」


椅子にもたれ掛かり、ぼんやりと携帯のアドレス帳を見つめる。と、一つ気になる名前が。


「春日……」


……まあ頭は良いと思うけど……宿題見せてくれないだろうな。そんなの自分でしなさいとか言いそう。第一クラスが違う。一組に同じ宿題が出されていないかもしれない。うーん、それでも数学を教えることは出来るよな。しかし昨日はご馳走になったばっかりだし、それはさすがに気が引けるよな。スーツ買ってもらって豪華ディナーご馳走になって、さらに勉強教えてくださいって……図々しいにも程がある。


「ん~、他には……おっ」


これはどうだろうか。ボタンをプッシュ。


『プルルルル…プルルルル…プルルルル…』


……。


『プルルルル…プルルルもしもし?』

「あ、火祭? 元気ぃ?」


俺のオアシス、火祭だ。一組だから頭は良いし、きっと教え方も上手いはずだ。つまり数学を教えてもらうには最適の人。


『元気だけど?』

「うん、元気が一番だよねっ。ところで今、時間ある?」

『うん、忙しくはないけど』

「よかったら……数学教えてくれない?」

『数学? いいよ』


おおっ! きました、やったぜ!


「ありがとぉ。じゃあ昼から学校に来れる?」

『うん、いいよ』

「恩に着るよ。じゃあ一時に教室で待っているね!」

『分かった』


よっしゃ! これで完璧だ。皆ありがとう。そして火祭ありがとう!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ