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第100話 番外編、米太郎の一日

こんにちは、腹イタリアです。


今回でへたれ犬が100話を迎えました。ここまで来れたのも今読んでくださっている皆様のおかげでございます。てことで番外編をやります。ただの自己満足~。


なんか長々と話していても面白くならないので早速いってみようと思います。

それでは、どーぞw


ちなみに今回の話は本編とは違う時間帯のお話です。夏休み前ぐらいの頃です。


どーもども皆さん。いえい! やぁふー、こんにちは。気がつけば初投稿から半年が経っ……まだ半年は経っていないのか。とにかくまあそのくらい月日の流れというのは早いのだわさー。いつも俺の活躍を見てくれてありがとう! と、読み手側に話しかけるというタブー連発をぶちかましている俺なのだが、一体誰なのかお分かりいただけるだろうか。ヒントを与えるとしたら、このナレーションしている俺はこの物語の主人公なんです。俺の視点で物語を見ていくわけだしー、それなら世界の中心は俺だ発言をしても構わないっしょ! てことで主人公は俺だぁ! なら主人公らしく能力の一つもなくてはならない。カッコイイのがいいよね、やっぱ超電磁砲とか? レベル5みたいな! でも、あまりに強すぎると敵キャラが可哀想だよな~。初めは弱い方がいいか。いやでも最近は無敵チートの異世界でハーレムなファンタジー系が人気だからな、やはり最強なやつがいいか。ん? 待て、ハーレム……そうだハーレムだ。まずはそっちだよ。能力は後々に目覚めるとして今はハーレムを形成しなくては! とはいえ現実はそんな甘くないよな。世の中やっぱ厳しいものだ。ハーレムなんてそうそうあるわけ………い~や、待て。待つんだ俺よ、ハーレムはない? そんなことはない。だって俺は知っている。ハーレムな友達を俺は知っている。そんな憎たらしい奴が俺の近くにいるのだ。忌ま忌ましいが、いるのだ。サブキャラのくせにモテモテなのだ。ムカつく、超電磁砲を放ってやりたい。よし食らえ!


「死ね将也ぁ!」

「危な、はしゃぐな米太郎」


殴ろうとした対象は横にずれ、俺の拳は空を切った。なっ、避けられただと? そしてカウンターパンチが俺の顔面を捉えぶべぇ!?


「痛い! 鼻がすごく痛い!」

「うるせー、休み時間くらい大人しくしてろ馬鹿太郎」


く、くそ……将也のくせにぃ! あ、すまない皆。この無礼な奴の紹介がまだだったね。こいつは兎月将也という俺の親友だ。さっき言っていたハーレム野郎とはこいつのこと。ちょ~っとイケメンだからって調子こいてるスカした野郎だ。サブキャラのくせに生意気な奴なんだよチクショー。そ、し、て! 長らくお待たせしました。俺が誰なのか、という最初の話に戻ろうか。つーか、途中で話の内容がズレていたよね。チートな異世界だなんて俺には縁遠い話だったよ。うぅ、コメディーからファンタジーに移籍したい。うあ、またも話が逸れたが俺の正体を明かそう。俺は……俺の名は………佐々木米太郎だ! ふふふ~、多くの方が驚いたことだろう! まあ実際は、こんな小説読んでる人なんて数人なんだけどね……おっと、ネガティブになってしまった。とにかくだ、俺は米太郎、この物語の主人公だ。野菜が大好きな高校二年生の十六歳。超イケメンで長身で運動神経抜群のクールガイなのさ。将也と比べたら遥かに良い男。うほっ!


「いつまで寝てんだよ。通行の邪魔だ、寝るなら自分のロッカーに入ってろ」


とまあ長々と話してきたけど、その間ずっと教室の床に伏せていた俺。だが、それでもカッコイイので無問題。嫉妬の声が聞こえるので起き上がろう。


「ったく、将也はらんぼーだな」

「乱暴な。俺は森を半裸で駆け巡ったりなんかしない」


華麗なツッコミ。まあこれくらいが将也の良いところだな。ツッコミの腕はそこそこだ。ボケると気持ち良く返してくれるんだよなぁ。


「で、なんで米太郎はいきなり殴りかかってきたんだ?」

「おお、そうだった。いやさ、らんぼーがモテモテだなと苛立ってよ~」

「へぇ、らんぼーはモテモテなのか。知らなかった」


他人事か。お前のことだってのー。皮肉が通じないのかよ。あー、そうだった。将也は鈍感だったんだ。ホント信じられないくらい馬鹿だからなー……二人の気持ちに気づいてないとかどんだけだよ。まあ、だからモテモテなのかもしれないのだが。


「おい、なんか馬鹿にしてるだろ」

「そんなことないさー」

「いや、その米太郎のアホな顔は俺を馬鹿にしているに違いな……ぐぅっ、痛い!? 痛たたたたたぁ!?」


突然、将也が顔を歪めて暴れだした。見慣れない人が見れば、どうしたんだろうと焦るかもしれないが……………ちっ、またかよ。見慣れている俺にしてみればこんなの日常茶飯事だ。親友が悲鳴を上げているなんて。


「痛い! か、春日、だからいきなり背後から蹴ったり抓るのはやめてぇ!」


将也がのけ反った後ろに立つのは一人の女子生徒。これがただの女子生徒ではないのだ。もうね、すげー可愛いの。ロングの黒髪は艶やかで心奪われ、綺麗に整った小顔に心奪われ、将也を睨むつり目もこれまた魅力的で心奪われ……何回ハートを奪われたことやら。それくらいに美しくて可愛いのだ。全てにおいて可愛過ぎる。ん、いや……まー、そうだな。強いて言うなら胸はあまりない。良い風に言えばスレンダーなんだろうけど、俺的には巨乳が好きなので減点だな。そこを除いてパーフェクト、そんな女子生徒。


「か、春日……痛いです」

「……」


黙ったまま将也を見つめる女子生徒。彼女の名前は春日恵。お隣り一組の生徒で、二年生の中で可愛いランキング上位に間違いなく入るであろう人だ。そしてさらに、春日さんはなんと大企業の社長の娘なのだ。えぇ、驚き。父親が社長ということで春日さんは超金持ち! セレブなのだ。この美貌でお金持ちって……すごいとしか言いようがない。ごく平凡な高校生には手も届かないお方なのですよ。しかーし! なんと、なんとぉ! こ、の、平凡でたいした取り柄もないこの将也は……春日さんと非常に仲良いのだ! はあぁぁぁっ!? ふざけるなあぁぁん!


「つぅ、なんでいつも蹴ってくるんだよ」

「……別に」

「会話が成り立たない!」


ほーら、またいつもみたく二人でイチャイチャしだした。俺の存在はどーしたんだい。それに将也ぁー、なんで春日さんが蹴ってくるかって? んなの分かるだろーよー。お前と接したいからだよ。一緒にいたいからだよ馬鹿! いつも春日さんから将也に会いに来ている。将也に会いに………あーぁ、その羨まし過ぎるポジションを大多数の男子が欲しているというのに。それが、なんでいつも蹴ってくるんだよ、だと? ふざけるな、気づけバカヤロー!


「……兎月」

「はいはいワターシの名前は兎月ぃですよー? 何か言いたいことでもありマスかー?」

「うるさい」

「痛い痛い痛い! 言いたいことはそれかよ!」


ついでに春日さんは無表情で無口でクールな人なのである。男子とは全然喋らないし、女子と話している時もそれほど表情に変化はない。感情を表に出さないのだ。その美しさに一目惚れする男子が後を絶たないのだが、春日さんはそれら全てを丁重に……というか冷淡にキッパリと断っている。一年生の時とか目が合おうものなら、ギロリと警戒心バリバリで睨んできていた。さらに噂によると、バス通学している春日さんはバスの中で席が空いていないと他の乗客から席を奪っていたとか。そんなこんなで性格はかなり屈折しているようだが、それでも春日さんの美しさにときめく男子達は別に性格なんて構わないさ! な状態で。一年生の頃から告白する男子は多くいたのだ。しかし最近それが減ってきている。いやまあ減ったと言っても、以前と比べると少ないだけで今でも告白する奴はいたりする。なぜ告白が減ってきたのか、それは将也という存在が現れたからだ。いつも春日さんは将也のところに行く。将也と一緒にいることが多いのだ。昼休みは一緒にご飯を食べて、放課後は一緒に帰って。それらの光景を見て男子達は「あぁ……駄目だ」と、落胆してしまう。だってあんだけ一緒にいられると誰でも分かってしまうよね(鈍感で馬鹿な将也を除いて)……そうなのだ、将也がいるから告白出来ないのだ。というか告白してもフラれるのは分かりきったことだから告白なんてしないのだ。しかしそれが男子達をさらなる悪夢へと突き落とす! 最近の春日さんは……もう可愛過ぎる。前までは無表情で冷たかったのが、近頃はよく笑うようになり明るくなっているからだ。将也といる時、くすりと笑った笑顔とかその時の仕種がとてつもなく超可愛いのだ! 今まで不機嫌そうだったのから楽しそうに笑う春日さん。そのギャップによって多くの男子達がキュンキュンとハートを奪われてしまった。そら惚れるわな。しかし将也がいる。あぁ……駄目だと再度思うわけだ。しかしそれでも行ってやる! そんな哀れな男子は愚かにも成功率0パーセントの勝負に特攻して砕け散る。絶対オーケーもらえるわけもないのに挑戦する。なんと可哀想な……同情するよ。そして将也よ、お前はいい加減気づけ馬鹿。春日さんからローキックを食らって床で苦しんでいるこいつにそう言ってやりたい。


「こ、米太郎助けてくれ」


出たよ。なぜ俺に助けを求める。そのままずっとラブラブしていればいいだろうに。将也の顔は困惑と疲労で染まっていた。蹴られる理由がマジで分からないみたいだ。けど知るか。テメーがどれだけ幸せなポジションにいるのかも理解していないくせに、のうのうと馬鹿みたいに助けを求めるなコンチクショー。


「俺には何もできねーヨホホ~。とにかく頑張れ」

「見捨てないでくれ痛たたたぁ!?」

「……兎月」


また抓りだした春日さん。床に不時着陸する将也。こんなの別に助けなくていいのだ。こんなのは傍観しているに限る。なぜなら……二人とも楽しそうだから。将也も嫌がっているように見えて実際のところ嬉しいのだから。顔は歪んでいるがその瞳は楽しげに輝いている。表向きには嫌がっているようにする将也も実際は嬉しいんだよな。……はあ、やってらんねー。春日さんも素直になれない典型的なツンデレさんだけど将也も将也だ。ツンデレカップルがこれまたイチャイチャと暴れだした。もう見ていられない……親友として微笑ましい光景だが、独り身としては胸に突き刺さるものがある。胸の奥から溢れ出す嫉妬と殺意の念が体を巡り、俺をダークに染め上げる………ぐううぅぅっ、将也のくせにいぃぃっ! なんでモテるんだあぁ!


「チクショー! 将也なんてらんぼーになればいいんだぁ」

「突然どうした米太郎!?」


駄目だ……これ以上ここに居られない。あと少しで俺は……俺でなくなる。この手で親友の首を絞めてしまうかもしれない。妬みと怒りに身を任せて……


「ぶべぇらぁ!?」


と、いった感じでシリアスカッコイイ雰囲気で盛り上がりかつ逃げようとしたら顔面に激痛が走った。メキィと鼻が歪んで空中に赤い滴が舞う。あ、俺の血。自身の鼻血を眺めつつ床へと撃沈!


「ご、ごめん佐々木君。大丈夫?」


痛む鼻の先には……黒髪なのにちょっとだけ赤色に輝く綺麗な長髪がフワリと絹のように宙を流れる。その美しき髪の毛を持つ人は一人しかいない。鼻血を流す俺こと米太郎の傍で申し訳なさそうにこちらを見つめるこの女子生徒。名前を火祭桜という。春日さんに負けないくらい綺麗に整った顔、くりっとキュートな瞳はどことなく色気もあり、小さな唇は見る者を虜にしてしまうような甘くてフルーティーな色を帯びている。これはもうただの美少女! そんな火祭を前に俺は鼻血を垂らしている。うんうん、火祭の魅力にやられたって言ってもいいけどさ、実際は違うから。実際は……殴られたのだから。この美少女は……喧嘩最強と呼ばれたあの有名な『血祭りの火祭』なのだ。中学時代、この名を知らぬ不良はいない。迷惑な不良を見つけては、たった一人で全てを破壊する怪物。十数人に及ぶ不良グループを一人で打ち負かした伝説は高校に入っても語られるほどだ。そして俺も中学時代に手合せしたことがある。……あの時のことはトラウマとなっていた。まあ二年生の最初の頃まで。火祭と同じ高校になって死を覚悟していたが、今となってはそんなこともない。それは俺じゃなくて他の皆も一緒だ。


「気にしないでいいさ。だって火祭だから!」

「? あ、ありがと」


ぶっちゃけ、火祭は恐れられていた。そりゃ不良十数人をなぎ倒すような奴に近づく奴なんていない。そう、火祭は孤独だったのだ。誰からも恐れられていた……ただの噂だけで。俺だって昔やられた記憶から火祭に対しては尋常ならぬ恐怖心と警戒心を持ってビクビクと学校生活を送っていた。だって恐かったから。凶暴というイメージがある奴に近づきたいなんているはずない。誰も火祭に心から接しようと思わなかった。ある二人を除いて。そして、その火祭の凶暴というイメージを変えようと決意した奴なんて一人しかいない。


「あのさ、まー君はいる?」

「ああ、教室の中にいるよ」

「ホント? ありがとっ」


嬉しそうに太陽のような眩しい笑顔で火祭はそう言った。その笑顔は俺に向けてではなく、教室の中にいるまー君に向けてなのだろう。まー君とは将也のあだ名。呼ぶのは火祭だけのようだが。そう、将也なのだ。火祭を恐れず、何も動じず、本当の火祭を理解してやった男。喧嘩最強にも臆せずにイメージだけで火祭の人物像を決めずに堂々と接した奴。さらにそんな火祭の悪い印象を変えてやろうと奮闘もした。不良にボコボコにされても将也は折れず、ただ火祭のためだけに叫び続けたのだ。それが周りの持つ火祭の悪いイメージを変えて火祭本来の姿を皆に知らしめた。本当は優しくて可愛くて清らかな心を持った乙女だということを。恐れられていた火祭も今では人気者。学校を代表する美少女だ。言い寄る男子は急速に数を増やし、ついにはファンクラブができるほどに。もちろん告白する男子も多くいる。ま、全てフラれているけどね。将也がいるうちは何やっても無駄だろうよ。


「じゃあね佐々木君。本当に怪我大丈夫?」

「別に気にすることないよ。佐々木だし」


まだ心配してくれる火祭の後ろから聞こえたひどすぎる言葉。くそっ、こいつは本当に俺のことが嫌いなのかよ! 火祭の後ろに立つのは、ショートカットの髪がよく似合う女子。名前はマミー。うん、マミーだ。


「マミー言うな」

「まだ口に出してないぞ!?」


思考を読まれた!? まあ本名は水川真美だ。これまた可愛い女の子。水川とは一年からの付き合いだ。そしてこちらのマミーが、将也に続いて火祭の理解者の二人目。水川と将也が火祭を変えたのは間違いない。そういうこともあって火祭と水川は非常に仲が良い。


「ほら桜、早く行きなって」

「う、うん」


水川に押されて火祭は教室の中へと入る。目的はもちろん将也。春日さんに続いて火祭も……本当に将也はハーレムを形成している。ああ、なんて野郎だ。親友じゃなかったら一、二発はぶん殴ってやりたい。ふん、実際は殴ろうとしてかわされて反撃を食らったけど。俺ってば惨め。


「佐々木も苦労してるよねー」

「何が?」

「兎月と恵に気を遣って教室から出たんでしょ。そこに桜の拳が飛んできて。アンタはアンタで大変でしょー」


………どうやら水川には見透かされているようだ。そうさ、俺だって本気で将也にムカついているわけではない。そんな周りの奴らと一緒にしないでもらいたいっての。何も知らない奴らと一緒にするな。春日さんについてはよく知らないが、火祭に関しては俺も近くで見ていた。火祭が今ああやって明るい笑顔で学校生活を送れるのは間違いなく将也のおかげ。男子どもが火祭の魅力に気づいたのも将也のおかげ。その将也を男子どもは僕らの火祭ちゃんの傍にいやがって、と逆恨みをしているのだ。なんつー奴ら。つい数か月前までお前らは恐がっていたじゃないか。なのに今は好きです? ファンクラブ作っちゃいます? それは都合が良すぎやしませんかって話だ。俺を含めてだけど。


「ホント火祭は変わったよな」

「そうだね。変わったというか、本来の姿を出せるようになった、の方が正しいのかも。桜は苦しかったんだよ……何を言っても誰も聞いてくれないし見てくれない。そんな状態じゃ自分の姿を出すなんて出来ないよ。誰かが見てくれない限り………その見てくれた人物ってのが」


その人物ってのは、


「兎月」

「将也」


だよなー。しかし俺はもう一人加えさせてもらう。


「アンド水川」

「私?」

「そうだろ。水川だって火祭と接していたじゃないか。イメージが変わる前から。お前と将也の二人だけが恐れずに火祭と話していたじゃんか」

「私は……普通に接していただけだよ。桜は良い子だって思ったから。でも私はそこまでだった。兎月のように桜の印象を変えようだなんて覚悟できなかった。行動に移せなかった。そこが私と兎月の違いだよ」


それは謙遜だ。確かに将也のおかげかもしれないが、そんなの49パーセントぐらいのものだ。水川が火祭のために女子達に色々とやっていたのも知っている。火祭が明るくなれたのも水川の頑張りがあったからこそだ。48パーセントぐらいは水川も貢献してるって。あと残りの3パーセントは俺のおかげ……ってことじゃ駄目……?


「うぎゃあああぁぁぁっ!?」


俺と水川が昔話(とはいえ最近の話)をしみじみと思い返していると、教室の中から将也の悲鳴が轟いてきた。どうやら始まったようだ。


「佐々木、行くわよ」

「へいへい」


水川の先導の下、再び教室へとカムバック。目の前には、苦痛に顔を歪ませる将也の変なポーズ。左手は左へと伸び、右手は右へと伸びている。悲鳴を上げる将也の両脇には春日さんと火祭が。それぞれ将也の手を握り、力強く引っ張っているではないか。


「恵……離して」

「……桜こそ」

「いやいやどっちも離してください! 痛たたたたたたたあああっ!」


その姿はまるで運動会の綱引き。将也の体がメキメキと恐ろしげな断末魔を上げており、今にも裂けそうだ。裂ける将也なんて見たくない。そんなグロテスクな親友の最後を見届けたくない俺と水川は助けに入ることに。俺は火祭の方に向かう。春日さんは将也以外の男は受けつけないからなー、俺が行くと逆に恐がって将也をさらに引っ張りそうだ。春日さんは水川に任せて俺は火祭を止めに。


「火祭よーい、落ち着いて!」

「こ、米太郎……それに水川も……ぐすん、やっぱお前ら親友だよ。フレンドだよ。これからもよろしくね!」


涙目で手を握ってくる将也。はいはい分かったから。


「で、またかよ」

「そ、そうなんだよ。また春日と火祭が暴れ出して……」


これもまた日常茶飯事。天気は晴れ、の確立くらいの頻度でこれは起きる。これとは、春日さんと火祭による将也争奪戦。また何か言い争いになって将也を奪い始めたのだろう。そして馬鹿な将也は何も分からず叫ぶのみ。はぁ、いつまでこれが続くのやら。毎回毎回止めに入る俺と水川の気持ちも考えなさい。いや、その前に春日さんと火祭の気持ちを考えろ。


「ほら恵も落ち着いて。兎月が死んじゃうよ」

「……」


また春日さんに睨まれちゃって。けどな、その睨み方は俺ら男子に向けられるものとは違うんだぞ。それにも気づけ将也。お前に対しては特別な感情を込められているんだぞ。ったく、そろそろ春日さんの気持ちに気づいてもいい頃だろ。もちろん火祭の気持ちにも。


「……兎月」

「ま、まー君っ」

「うっ……こ、米太郎ぉ。また二人が切り裂き作業に取りかかろうとする~」


はいはいそうですか。そりゃめでたい。それ見たことか。これが冒頭で俺が言っていたハーレムのことだ。二年生でトップを争う春日さんと火祭。この両者から言い寄られるオメーはハーレム野郎以外の何者でもない。ざけんな、サブキャラのくせに。………つーかこうやって振り返ると、俺ってば将也のことを中心に話していたな。自分の活躍とか全然言ってない!? ちょ、ちょっと待ってくれ。俺が主人公なのにどうして将也の話ばっかり!? これじゃまるで将也が主人公みたいじゃないか。う、うそーん。俺が主人公じゃないの? 俺が超電磁砲じゃないの!? あ、それは違うか。ううぅ、なんで俺に言い寄る女子は一人もいないんだ。俺だって頑張っているのにぃ。くそ……これも全て将也のせいだ!


「うおおおぉぉっ、将也のくせにー!」

「と、突然どうした?」


黙れ。やっぱ一発殴らないと気が済まなぶべえぇぇ!?


「……まー君は私が守る」


こちらがパンチを繰り出す前に火祭がすぐに将也の傍に移動。そしてアッパーを放つ。なんて瞬発力と破壊力だ。アゴが外れそうなくらい痛い。激痛がアゴから脳天へと走り抜ける。すげー痛い。もう意識が飛びそうだ。本日二回目となる鼻血が空を舞う、を見届けながら俺は暗い闇へと落ちていっ……………あ、あれ? これでこの話終わり? え、マジ? ただの総集編じゃ、ない、か……あぁ。



テキトーな終わり方ですいません(汗) 


どうかこれからもへたれ犬をよろしくお願いします!


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