表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『すみません...弾代って学費に含まれますか?』 ~ドケチな新入生、学園の宇宙を「コスパ最強」で無双する~  作者: 染抜き
1.入学試験編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/7

割安のランチタイム

実技試験の熱気が冷めやらぬまま、僕は学生食堂カフェテリアへと足を運んだ。 そこは、ちょっとしたショッピングモール並みの広さがあった。和洋中、あらゆるジャンルの料理が並んでいるが、僕が迷わず向かったのは券売機の端っこだ。


「(『日替わりA定食・大盛り』...たったの300クレジット。しかも栄養バランス完璧)」


トレイを受け取り、空いている席に座る。 山盛りの白米。合成肉のハンバーグ。野菜の煮込み。 故郷なら、これだけで命の奪い合いが起きるレベルのご馳走だ。


「(ここは天国か...!)」


周囲の遠巻きにする視線など気にならない。 僕はスプーンを握りしめ、猛烈な勢いで食事を開始した。


「すごい勢いアルね! 見てて気持ちいいヨ!」


ドンッ! 突然、僕の目の前に蒸篭が置かれた。 顔を上げると、お団子頭にチャイナ風の制服を着た小柄な少女が、ニカっと笑って立っていた。


「ボクはメイリン・シェン! ランキング3位だヨ。よろしくネ、1位サン!」 「...どうも。僕はレイです」


口をもぐもぐさせながら会釈する。 彼女が、黄龍国出身のメイリンか。小柄だが、身のこなしに隙がない。ただの元気っ子に見えて、体術の達人特有の「芯の強さ」がある。


「戦う前も後も、ちゃんと食べなきゃダメアルよ。ほら、この肉まんあげる。特製ダヨ!」 「え、いいんですか? (タダ飯だ!)」 「もちろん! ボクの拳法は『医食同源』だからネ!」


メイリンが勝手に隣の席に座り込む。 すると今度は、反対側から優雅な紅茶の香りが漂ってきた。


「やあ。相席しても構わないかな? レイ君」


トレイに上品なティーセットとスコーンを載せた金髪の美青年――ランキング2位、アーサー・バリテンだ。 彼は僕の「激安定食」を見ても眉ひとつ動かさず、優雅に微笑んだ。


「筆記試験の時、隣の席だっただろう? あの時から君の集中力には驚かされていたが...まさか実技であれほどのスコアを叩き出すとはね」 「ああ、あの時の。どうも、筆記ではペンを貸していただいてありがとうございました」


「ふふ、気にしないでくれ。しかし、99機撃墜とは...僕でもあそこまでの蹂躙は真似できないよ」


アーサーが優雅に紅茶を啜る。 その瞬間、周囲の空気がピリリと凍りついた。


「...見つけたわ」


氷のように冷ややかな声。 現れたのは、腰まで届く美しい銀髪の少女――ランキング4位、雪乃・スメラギ。 その切れ長の瞳が、値踏みするように僕を射抜いている。


「あなたがレイね。」「ふ~ん...見た目は平凡だけど」


「ちょっと雪女! あたしの前を歩かないでくれる!?」


雪乃の後ろから、金髪碧眼の少女が不機嫌そうに現れた。ランキング5位、カチューシャ・オルロワだ。 彼女は雪乃を睨みつけた後、僕の方を見てフンと鼻を鳴らした。


「あんたが1位? ふん、どんな奴かと思えば、貧相な男ね」 「うるさいわね、駄犬。キャンキャン吠えないで」 「あぁん!? 誰が駄犬よ!この雪女!」


バチバチと火花を散らす二人。 カチューシャは好戦的で、雪乃はそれを冷たくあしらっている。メイリンが「はぁ...また始まったアル」と呆れ顔で肉まんを頬張っている。


「単刀直入に聞くわ」


雪乃がカチューシャを無視して、僕に詰め寄った。


「あの実技試験のシミュレーション。デフォルトのままだったというのは本当?」 「ええ。設定の変え方がよく分からなくて」


ハンバーグを頬張りながら答える。


「はぁ? ふざけないでよ」


カチューシャがドスの効いた低い声を出した。


「あのラグであの反応速度はおかしいわよ。計算が合わないわ。まさか、まぐれ当たりしただけで英雄気取りってわけ?」 「カチューシャ、落ち着くネ。でもボクも気になるアル。あのボロボロの機体であの動きは無理アル!」


3人の天才たちが、答えを待っている。 僕は最後の米粒を飲み込み、水を一口飲んでから、ニッコリと笑った。


「無理と言われましても……動きましたよ?」


「だから、それがおかしいって言ってるの!」


カチューシャがテーブルを叩く。 僕は困ってしまった。彼女たちが何に驚いているのか、本気で分からない。


「ラグがあるなら、その秒数ぶん早く入力しておけばいいだけじゃないですか」


「……は?」


「それに、機体がボロボロだったからこそ、やりやすかったんです。フレームがきしむ音や振動が、一番正確なセンサーになりますから」


僕はコップの水を飲み干し、至極当然のこととして続けた。


「『あと何度傾けたら翼が折れるか』が、音で正確に分かるんです。おかげで、墜落手前まで、無駄なく使い切ることができました」


シン……と、テーブルの空気が凍りついた。


「無駄なく……使い切る……?」


雪乃が呆然と呟く。 僕はニッコリと頷いた。


「はい。だってシミュレーターは武装が無料なんでしょう? せっかく使い放題なのに、武装や機体の耐久値を余らせて終わるなんて、もったいないじゃないですか」


カチューシャは「正気じゃない...」と後ずさりし、雪乃は戦慄したように目を細めた。 アーサーだけが、ゾクリとしたものを感じたようにカップを置いた。


彼は、機体が分解する恐怖を感じていないのではない。 **「死ぬ寸前まで酷使するのが一番お得だ」**と、本気で思っているのだ。 それは、平和な世界で育った自分たちには決して理解できない、生存本能の欠落した「怪物」の論理だった。


「ごちそうさまでした!」


僕は手を合わせ、空っぽになった食器を持って立ち上がる。


「あ、肉まんありがとうございます、メイリンさん。すごく美味しかったです!」 「あ、ああ...どういたしましてアル」


引きつった笑顔で見送る4人を残し、僕は返却口へと向かった。 お腹はいっぱいになった。 次は、クラス分けと自己紹介だ。


「(さて、次はどんな敵と遊べるのかな)」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ