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『すみません...弾代って学費に含まれますか?』 ~ドケチな新入生、学園の宇宙を「コスパ最強」で無双する~  作者: 染抜き
1.入学試験編

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2/7

撃ち放題の衝撃

翌日。実技試験会場となる巨大なドームには、何千人もの受験生が詰めかけていた。 中央には、卵のような形状をした『全感覚没入型シミュレーター』が数百基、整然と並んでいる。


『これより実技試験を開始する。受験生は指定されたブロックのポッドへ搭乗せよ』


アナウンスに従い、第4ブロックへ。 試験ルールは「バトルロイヤル形式」。100名ごとのブロックに分かれ、仮想空間内で潰し合う。最後まで生き残り、かつスコア上位の者が次のラウンドへ進出できるシステムだ。


使用機体は全員共通。学園指定の量産型訓練機『カデット』。 無骨なデルタ翼を持つ、標準的な宇宙戦闘機。性能差なし。純粋な操縦技術だけが問われる公平な試験...のはずだ。


指定されたポッドの脇にある端末に、学生証(ID)をかざす。


――ピピッ。 『認証完了。受験番号4096、レイ候補生。標準設定をロードします』


無機質な音声と共にハッチが開く。 周囲のポッドからも、次々とロード完了の電子音が鳴る。皆、事前に自分のIDへ保存してきた「自分専用の最適解」を読み込ませている。機体の感度、レスポンス、火器管制の癖。エリートたちはその調整に心血を注いできたはずだ。


「(設定? よく分からないけど、標準でいいや。)」


シミュレーターなんて高級な玩具は触ったことがない。実機ならエンジンの機嫌一つまで把握できるけど、あらかじめデータで調整するなんて未知の領域だ。 そのままシートに滑り込み、ヘルメットを装着する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ブゥン...。 意識が仮想空間へとダイブする。 目を開けると、そこは広大な成層圏のフィールドだった。


『システム・オールグリーン。エンジン出力安定』


360度モニターに空が広がる。操縦桿スティックを軽く握ってみる。


「ん?」


違和感。 スティックを倒してから、機体が反応するまでに、ほんのわずかな「間」がある。 コンマ数秒のラグ。 まるで水の中で動いているような鈍重さだ。


「あれ...? なんか反応遅くないか?」


実機のダイレクトな反応に慣れすぎた感覚神経が、拒絶反応を起こしている。


「(まあいいや。スペックの確認だね)」


両翼: 光子銃(フォトン・バレル)20mmガトリング砲


胴体下部: 中距離誘導ミサイル×4発


「...うわぁ」


スペック表を見て、眉をひそめる。 「反応は鈍いくせに...」


ミサイルがたったの4発。レーザーは燃費最悪。 こんな操作性の悪い機体で、貴重な弾を無駄撃ちなんてできるわけがない。


『試験開始!』


ブザーと共に、周囲100機の戦闘機が一斉に動いた。


「うおおおお! 全弾発射ぁぁ!!」 「邪魔だ平民ども! 僕のポイントになれぇ!」


開始早々、空はミサイルの白煙とレーザーの光条で埋め尽くされる。 回避機動を取ろうとスティックを倒す。


「...っ、重いな!」


ワンテンポ遅れて機体が傾く。 遅い。思考と挙動が直結していない。 舌打ちしながら、なんとか雲の中に機体を滑り込ませる。


ズォォォッ!! 突然、上空から真紅の塗装を施した機体が急降下してきた。


『おい、そこの薄汚い色の機体! コソコソ隠れてんじゃないぞ!』


識別信号を確認。子爵家の三男、ギーリッヒ。 いかにも「権力を笠に着たタイプ」だ。


『我が家の名に懸けて、貴様のような臆病者はここで排除する!』


ギーリッヒ機が光子銃を構える。 反射的に回避操作。だが――


「(くそっ、反応が遅れる...!)」


実機なら余裕でかわせるタイミングだった。でも、この初期設定のせいで機首の振りが遅い。 ジュッ! 太い光線が主翼の端をかすめ、焦げ付く警告音が鳴る。


『ははは! どうしたその不安定な動きは! 設定をいじりすぎて制御できてないんじゃないか!?』


ギーリッヒが嘲笑う。 こちらの苦戦している動きが、向こうには「極端なピーキー設定にして暴れている」ように見えているらしい。 ギリギリで体勢を立て直し、すれ違いざまにガトリングを放つ。 タタッ。 やはり照準も微妙にズレて装甲に弾かれる。


「...もったいない!」


思わず口をついて出る。 被弾した修理費。無駄になったガトリング弾。そして何より、この操作ラグのせいで無駄に消費している精神力。


『なんだその貧乏くさい戦い方は! ミサイルを使えよ!』 「...使うわけないだろ!」


操作の遅れを予測補正しながら、苛立ち混じりに返す。


「まだ敵は90機以上残ってるんだよ? 今こんなとこで使い切っちゃったら、この後の乱戦や、次の試験(第2ラウンド)はどう戦うつもりなんだよ...」 『はぁ!? 何言ってんだお前、シミュレーターだぞ!?』


ギーリッヒが呆れたように鼻で笑った。


『次のラウンドに行けば、機体のダメージも弾薬も全部リセットされて元通りだ! いくら撃ってもタダなんだよバーカ!』


手が止まる。


「...え?」 『だから、補充されるんだよ! そんなことも知らないのか田舎者は!』


リセット。再充填。無料。 その単語が、脳内で木霊こだまする。


「...つまり、修理費も燃料費も、どれだけ使っても請求書は来ないってこと?」 『当たり前だ! システムが勝手に直してくれるわ! ビビってねえで死ねぇ!!』


ギーリッヒが残ったミサイルを放ってくる。 だが、思考の中で、何かがカチリと切り替わった。


操作ラグがある? 反応が遅い? ――関係ないね。


「...悪かった。僕が間違ってたよ」


迫りくるミサイルを見据えながら、通信機越しに言う。


『あぁ? 命乞いか?』 「いや。出し惜しみなんて失礼な真似をしてたことを謝るよ!」


スロットルレバーを限界まで押し込む。 機体が悲鳴を上げるほどの急加速。


『なっ、正面から!? 自殺する気か!』


ギーリッヒのミサイルが迫る。 ラグは0.5秒。一定だ。 ならば、0.5秒未来の操作を入力しておけばいい。 本来なら空中分解するような急激な入力を!


バキバキバキッ!!


主翼がきしむ音がコクピット内に響く。 構わない。修理費はタダだもんね! ミサイルが着弾する寸前、機体は物理法則を無視したかのような角度でスライドした。


――ヒュンッ!


ミサイルが、キャノピーのわずか数センチ横を通り過ぎていく。


『は...? な、なんだ今の反応速度は...!?』


ギーリッヒの声が震える。 今の動き。向こうにはどう見えただろう。 僕にとっては「遅れて反応する機体を無理やり動かした」だけだけど――


『お前、まさか...リミッターを全カットして、反応感度をマックスにしているのか!? そんな自殺志願者みたいな設定で、よく機体がバラバラにならないな!』


勝手な勘違いをして怯えてくれる。好都合だ。 続いて放たれる光子銃の連射。


ジュッ、ジュッ、ジュッ――!


すべてが、機体の輪郭をなぞるように虚空を切り裂く。 当たらない。 ラグを逆算し、当たる軌道から直前に消えているからだ。


『当たらねえ! こいつ、完全に機体制御を掌握してやがる!』


「ここだ!」


気がつけば、敵の目の前。 もはや回避など不可能なゼロ距離。


『ひぃっ!? く、来るなぁぁっ!!』


「この距離なら、減衰なしで撃てる!」


右翼の光子銃を起動。 空中衝突寸前。 最小限の照射時間で、最大の破壊力を叩き込む。


――ジュッ。


一瞬の閃光。 ギーリッヒ機と交差するその刹那、ピンポイントでコクピットを焼き抜いた。


ドォォォォン!! 背後でギーリッヒ機が爆散し、シミュレーターからログアウトされる。


『撃破確認。レイ候補生、1ポイント獲得』


「...ふぅ。よし、黒字だね」


きしみ音を上げる翼を、スラスター噴射で強引に安定させる。 主翼の結合部に亀裂。エンジンの排熱処理、限界値ギリギリ。 この無茶な機動を続ければ、あと数分で機体は空中分解するだろう。


「...残存機数、98。」


燃え盛る戦場を見渡し、冷静に計算する。 機体が壊れるのが先か。 敵を全滅させるのが先か。


涼しげに笑い、次の獲物へと機首を向ける。 ラグがあるなら、未来を予測して動けばいい。 機体が壊れてもいいなら、限界を超えて回せばいい。


「さあ、試験の続きといこうか!」

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