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『すみません...弾代って学費に含まれますか?』 ~ドケチな新入生、学園の宇宙を「コスパ最強」で無双する~  作者: 染抜き
学園編

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第16話 いざ出撃! 余り物部隊

そして、2週間後。

第4宙域の端――旧資源採掘惑星帯。

漆黒の宇宙空間に、無数の巨大な岩塊や放棄された施設の残骸が浮かぶ、まさに墓場のような宙域だ。


僕たちは平和な学園都市艦セレスタを離れ、担当する作戦領域ごとに艦隊を組んで展開していた。


学園の待遇は破格にして冷酷だ。

少数精鋭の僕らA組には、たった1小隊につき1隻、最新鋭の機材と設備が整った専用の宇宙空母が「旗艦」として用意されている。戦闘用の物以外にもキッチンや娯楽施設などもある最新鋭の艦だ。


そして、そのA組の空母を中心に護衛するかのように、B組から底辺のF組までの生徒たちが乗る戦艦が周囲を取り囲み、巨大な艦隊編隊を組んで航行している。

この学園は徹底した実力主義である。A組の空母が最新鋭なのに対し、周囲を飛ぶ下位クラスの艦は目に見えてボロボロになっていき、F組の艦に至っては装甲の塗装すら剥げ落ちた年代物のスクラップ同然だった。


編成もそうだ。

僕らA組が4機1小隊なのに対し、B組は12機で1小隊、C組は18機で1小隊と増えていき、F組に至ってはもはや数える気も起きないほどの大群だ。下位クラスになるほど、個人の技量と機体性能の低さを数の暴力で補う大所帯になっていくのだ。


僕らA組F小隊を中心とした艦隊が、割り当てられたセクターの定位置につく。

出撃用カタパルトの待機エリア。

教官のオットーが、広域通信モニター越しに気だるげな声を響かせた。


「これより実戦想定演習を開始する。各艦、各小隊は割り当てられた宙域へ展開し、野良のアドヴァサリーを掃討しろ。制限時間は3時間。...死なない程度に稼いでこい。各機、発艦!」


オットー教官の全体号令と共に、広域通信チャンネルが各小隊の出撃報告で騒がしくなった。


『行くぞ皆! 我らこそがA組の模範たる十字編隊だ!』


『ふふんっ、あんたたち遅れないでよ! トップスコアはこのカチューシャ様がいただくわ!』


別の宙域で出撃したアーサーたちやカチューシャたちの声が聞こえてくる。彼女たちは僕に対抗心を燃やしているだけあって、気合が違った。


広域通信を切り、いよいよ僕らの番だ。


僕はコックピットの中でスロットルを握り、小隊専用の通信帯域を開いた。


「F小隊、配置につけ。アルテミス、ソフィア、今日の特製スイーツの残弾は十分か? 毎日違うメニューを要求される俺の身にもなってくれよ」


『...うん。今日のフィナンシェ、外側がサクサクで最高』


『...紅茶にもすごく合う。完璧』


通信機越しに、サクッ、もぐもぐという咀嚼音と、何かを啜る音が聞こえてくる。


「あのな、上質なバターとアーモンドプードルは学園の購買でもけっこう高いんだ。」


軍事惑星での軍務で染み付いた俺の貧乏性が悲鳴を上げている。


「今日まではサービスだ。だが明日からも欲しいなら材料費と手間賃をきっちり請求させてもらうぞ」


『...わかった。今回の演習の報酬スコア、換金してお菓子の人に全部振り込む。足りないならもっとクレジットを振り込む』


『...だから明日も作って。明日は、大きなホールケーキがいい』


「ふっ、毎度あり。上得意のスポンサー様のためなら、いくらでも腕を振るってやるさ」


貧乏性の僕にとって、お菓子作りが実益に繋がるなら願ったり叶ったりだ。軍務時代はタダ働き同然で上官や少年兵たちの胃袋を満たしていたが、これからは気兼ねなく稼ぐことができる。


「(演習終わったらアーサーやセオドアからも請求するか...)」


「ロレンツォ、起きているか...いや、寝てるな?」


『...すー...あと5分...』


「よし、完璧だ。...A組F小隊、出るぞ!」


僕はカタパルトの射出と同時に、メインスラスターを全開にした。


ドォォォォンッ!!


通常のパイロットなら気絶しかねない尋常ではないGをものともせず、僕の愛機は弾丸のように宇宙空間へと飛び出した。


『な、なんだあの加速は!?』


『あんな速度で突っ込んだら、僚機がついてこられないぞ!?』


周囲に展開する他クラスの艦や、広域レーダーで僕の初速を見た他の小隊から驚く声が聞こえる。

彼らの言う通りだ。僕の超高速機動に追従できる常識的なパイロットなど存在しない。


だが、僕の後ろには非常識がぴったりとくっついていた。


「...すー...」


ロレンツォの機体だ。

彼は完全に熟睡しているにも関わらず、無意識の空間把握能力だけで僕の機体が作るスリップストリームに乗り、たった数メートルの距離を維持したまま、寸分違わぬ軌道で追随してきていた。


僕がデブリを避けるために鋭く機体を傾ければ、彼も寝言を言いながら完璧に同じ動きで避ける。まさに、変態的な回避特化の天才だ。


僕は後方モニターを確認した。


出撃からしばらく飛び、割り当てられた作戦領域に入ったところで、アルテミスとソフィアの二機がピタッと停止していた。


『...お菓子の人、私たちはここから動かない。いってらっしゃい』


アルテミスが通信機越しに言う。

彼女の機体から無数の遠隔武装が切り離され、宇宙空間へと散開していく。


『...敵が近づいたら、私がマイクロミサイルでハチの巣にする。大型が来たらレールガンで撃ち抜くから。お菓子の人は、前だけ見てて』


ソフィアの機体も、翼下に懸架された無数のミサイルポッドのハッチを開放し、超長距離レールガンの砲身を前方へと向けていた。

そして二人は、それぞれのコックピットで優雅にお菓子を味わっている。


最強の矛である僕が最前線で暴れ回り、無意識の盾であるロレンツォがその後ろで寝る。

遠隔砲台のアルテミスと防衛陣地であるソフィアは作戦領域の入り口から一歩も動かず、お菓子を食べながら超長距離支援を行う。


これが、僕の特製スイーツと貧乏性が作り上げた絶対分業フォーメーションだ。


「さあ、狩りの時間だ」


僕は口角を上げ、絶対の自信とともに、廃施設の奥から湧き出てきた無数のアドヴァサリーの群れに向かって一直線に突っ込んでいった。

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