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第一話

 

この国では、離婚は円満離婚以外は認められていない。


円満でない離婚方法もないことはないが

離婚を言い出したものに、相応のペナルティがあるという。


ペナルティとは……


男は『イチモツ』を切り落とす。


女は『髪』を剃り上げる。


それが足かせとなり、前例は極端に少ないという。



また、婚約破棄も同様である。












「おいレオン!お前結婚するんだってな!」


「なにを藪から棒に!相手もいないのに誰と結婚するって言うんだよ。」


久しぶりに町まで来たのに、いきなり根も葉もないことを言われると温和な俺でも少し腹が立つ。


「誰ってお前、セリス・アルメリアに決まってるだろ!?」


セリス・アルメリア?

聞いたことがあるような、無いような……。

なんだか高貴そうな名前だけど、俺の友人にはいないと思うが。


「誰?その人。」


「いや、お前なにを言ってるんだよ。この街で最強……いや、国内でも5本の指に入る強さを誇る冒険者パーティー『クラリオン・ヴェール』のメンバーだろ!」


クラリオン・ベール?ヴェール?まあ、なんでもいいや。


「冒険者なんて恐ろしい職業の人のことを、農民の俺が知るわけないじゃないか。

 まして、セリスなんとかさんになんて会ったこともないから人違いでしょ。」


「ベッカのレオン・バルディアってお前以外にいるのか?」


「いや、居ないけど……。」


「じゃあ、レオ、お前のことだろっ。久しぶりに来たと思ったら、変なところすっとぼけやがって!」


「とぼけるも何も、事実無根だって!からかうのもいい加減にしてくれよ!」


不機嫌にカップを置くと、食事も残したまま店を出た。

俺は、街の出身だがその中でもはずれの方、農業が盛んな地域の出身だ。

土地が足らなくて、街より少し離れるが広大な土地のあるベッカに一人移り住んで

農作物の栽培に精を出している。


たまには、実家に寄って帰るか。オヤジ一人暮らしだしな。


「ただいま~。」


と言いながら、家に入る。


「おう、レオン来たか。」


父親も農民だが、土地をもっているため町で農業をしている。


「ああ、久しぶり。」


すると唐突に父親が


「先方さんとは、話がついたから先に婚約の手続きしておいたぞ。」


婚約?


「婚約って何?オヤジ再婚でもすんのか?」


「いや、お前のだろ。」


オヤジまで何言ってんだ?


「相手もいないのに、俺が誰と婚約するんだよ……。冗談はよしてくれよ。」


「アルメリアさんとこは、大喜びで手続きしてくれたぞ!」


「手続きって……まさか勝手に!?」


「ああ、教会で認められたぞ。」


認められた……。


「それって断れるんだよな?」


オヤジは、ぎょっとして


「そりゃ、出来ないことはないが……。切り落としだぞ。」


切り落とし?

まさかっ!


「なんで勝手にそんなことをしたんだ……。俺は、何も知らないんだぞ……。」


「俺も最初は疑ったんだが、アルメリアさんの方から来たしな。女っ気があるかないかなんぞ

離れて暮らす俺にはわからんし、そう言われたら、そうなんだと思うだろ。」


確かに、数か月も顔を出さない俺にも若干の非があるような気もするが

それにしても、巧妙な罠にまんまとひっかかった気がしてならない。


「オヤジ、俺の事だましてたりしない?」


「するわけないだろ。これが証拠だ。」


オヤジが指輪を一つ差し出す。


「これは婚約した証拠に渡される魔道具だ。2つで対になっている。見たことあるだろ?」


確かに、これはオヤジが持っているものと似ている。


「この指輪がある限り、お前はアルメリアさんのとこの娘さんと婚約していることになる。

もし、どうしても破棄するならば、二人で円満に両方の指輪を教会に持っていかなければならない。

婚約した時に、娘さんは依頼で遠方にいると言っていたから、いつ帰ってくるかわからんぞ。」


なんてこった……。すぐにでも破棄したいのに。


「俺、その人探しに行く。勝手に婚約させられて、

イチモツ切られたんじゃ、たまったもんじゃない!」


その夜、自宅に帰らず旅支度を始める。

幸い実家にもある程度の物は揃っているので、2、3週間程度の外出は問題ないだろう。


「俺は、明日、そのアルメリアって人を探しに行く。」


「待っていればそのうち帰ってくるだろ?探しに行ってなんになるんだ?」


「街の連中に嵌められている気もして、信用できない。

出来れば、知っている人の居ない土地でなんで、婚約までしたのか確かめたい。」


「なら止めんさ。納得いくようにやれ。」


「ああ、そのうち帰るから道具借りてくぞ。」


日の出を待たず、俺は依頼があったというグレイモアに向かった。


 

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