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第58話 確かな成長

 十二本木での激闘から五日が経過した。


 今日は私に対して国王陛下からの勅命が下るとの事で、エレノーラ様と共に王城へ向かうことになっている。


 エレノーラ様からの指示もあり、パーティー【勇ましき翼】でのダンジョン攻略は毎日行われた。そのため今日は勇ましき翼の活動は休止となった。グレッグ達には鬼畜の所業に付き合わせてしまい申し訳なかったが、その甲斐あって全員がレベル五十に到達した。


 第十八階層までの攻略が完了し、様々な耐性が身についた。特に全員が毒と精神汚染に慣れたことは大きな収穫だった。魑魅(ちみ)魍魎(もうりょう)の魔物達を相手するにあたって、外見で恐怖していては話にならないからだ。


 私達は挑んだ各階層のボスと裏ボスをすべて攻略した。そして私は十四階層冥王リビングデッド、十五階層熔神(ろしん)イグナ=ロア、十六階層風哭(ふうこく)の歌姫、十七階層大地の暴君グラージア、十八階層根源の眠花帝といった裏ボスの召喚権を手に入れていった。


 グレッグとカーラ、アーノルドの三人はこの五日間ですごく(たくま)しくなった。グレッグは技のしなやかさと豪快さに磨きをかけた。そして統率力が上がった。カーラは斥候としての能力を遺憾なく発揮した。そしてアーノルドは前衛としての揺るぎない防御力と信頼を勝ち取った。


 私がグレッグ達から得たもの、それは連携の技術と厚い信頼、そしてパーティーで行動する楽しさだった。今はそれで十分だ。今後も仲良くダンジョン攻略をしていければいいと思っている。


 心残りがあると言えば午後からはエレノーラ様との修練があるため、オフで付き合いに出てやれなかったことだ。三人はそれなりに仲良くやっていたようだが。


 エレノーラ様とのアビスの修練では苛烈(かれつ)を極めた。一日八時間以上アビスに籠って悪魔達を相手に戦った。体力不足の件をエレノーラ様に相談した結果だ。


 血反吐を吐きながらも魔法を発動し続け、魔力を(しぼ)り出し、たびたび眩暈(めまい)に襲われるほどの地獄だった。お陰で魔力の効率的な使用方法と引き出し方を身に着けることができた。


 各個撃破の割合を増やすよう指示され、単体魔法と範囲魔法の使い分けを覚えることになった。更にボスやデーモンロードもすべて私が討伐することになった。少し離れた場所からエレノーラ様が常に見守ってくださっていたのだが……厳しくも温かい師匠の視線がなければ、私の心は折れていただろう。


 更にエレノーラ様から魔導書を渡され、私は『究極の睡眠アルティメットスリープ』を使用することができるようになった。常に最深部の眠りに入ることができる魔法で、これにより私の睡眠時間が一時間になった。


 快眠が取れるようになったことで、活動時間を確保できたうえ、徹夜なしで過ごすことができるようになった。もはや苦しいとも思わないほど感覚が麻痺していた。だが、それでも背中を押してくれるのはやはりエレノーラ様の存在だった。


 私はその他にも様々な魔法を習得した。特に聖属性魔法については、与えられた魔導書にあったものはほぼすべてと言っていいほど実践した。


 魔法で特筆すべきことは、魔導書の研究の際に偶然にも【次元魔法】を発見した。これはアビスが次元界に属することもあり、エレノーラ様と共に発見したのである。


 時空魔法が時間と空間に限定特化しているのと比べ、次元魔法は次元そのものに干渉する魔法だ。これまでテレポートは時空魔法だと思っていたが、次元魔法を組み込めばもっと多岐的で安定した移動が可能になることが分かった。 


 また、エレノーラ様にお願いしていた各国の聖女との会談はなかなか決まらずにいたが、ようやく都合がつきだしたとの事で、近々巡礼の旅として各国を訪れることになりそうだ。



◆◆◆



 朝食を()ませ、準備を整えた私はエレノーラ様の部屋を訪れる。


「師匠、タクトです。失礼します」


「どうぞ、お入りなさい」


 エレノーラ様はすでに準備を終え、ミリエラと共に私を待っていたようだ。部屋の奥では他のメイド達が慌ただしく働いている。 


「準備は整ったようですね。それでは参りましょうか」


「はい、師匠」


「ミリエラ、みんな、後は頼みましたよ」


「かしこまりました。エレノーラ様、タクト様、いってらっしゃいませ」


 ミリエラに見送られ、私とエレノーラ様はテレポートで国王達の待つ王城へと転移するのだった。 


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 ここまでお読みいただきありがとうございます!


 時間が経ち成長したタクト達。異常なまでのエレノーラの鬼畜指導に何とか耐え、更なる力を手にしました。


 次回、国王への謁見で事態が動くことになります。お楽しみに。



【まめちしき】


【冥王リビングデッド】……不死王。身長約四メートル、骨の巨体に漆黒の法衣をまとい、背中に六冊の浮遊する死霊書を従える。スケルトンメイジとは比べ物にならない高度な死霊術で戦場を支配する冥王級アンデッド。自己再生・呪い返し・死霊大軍召喚を同時に使いこなす。生者の命を喰らい、自身の魔紋核を分離させて無限復活する狡猾な王。


熔神(ろしん)イグナ=ロア】……熔岩(ようがん)神獣。巨大な人型の熔岩(ようがん)の巨人。溶けた鎧のように表面が常に流動している。地脈の怒りを象徴する熔神(ろしん)であり、熔岩(ようがん)流と火柱で戦場を塗り潰す。熔心(ろしん)核を狙わないと延々と蘇る厄介な火の巨神。攻撃は物理も魔法も灼熱特化で、防御は物理にやや(もろ)いが火耐性が極めて高い。


風哭ふうこくの歌姫】……霊鳥。長い銀白の羽根を持つ幻鳥形態。人型の上半身と大翼、尾羽を持つ。風と歌で人の心を砕く、空の秘境の守護精霊。物理攻撃が当たりにくく、強風で飛行し続ける遠距離型ボス。音波と風刃で攻撃しつつ、聴覚を封じるか無効化しないと操作不能になる。


【大地の暴君グラージア】……大地竜。全長十五メートル級の巨獣竜。岩石の外殻に(おお)われ、背中には巨大な地核結晶を背負う。大地の咆哮で大陸を割る古代の地竜。地震・地割れ・重力波で敵の足場と移動を完全に制御する。物理防御・属性防御共に高く、長期戦必須の鉄壁型。頭部の結晶核を破壊しないと物理がまともに通らない。


【根源の眠花帝】……幻妖植物。巨樹と花の女王が融合した異形の植物女帝。根は迷宮全体に絡みつき、花弁は虹色に輝く。全てのマンドラゴラを()べる“植物界の原種”の女帝。頭部は人型の花精霊の姿をとり、瞳は眠りを誘う花粉の光で淡く光る。周囲には常に幻惑花粉、睡眠花粉と幻覚霧が(ただよ)い、近づくだけで眠気と幻覚を呼び込む。

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