第5話 ステータスオープン
しばしの時が経ち、私は落ち着くことができた。外は朝日が差している。どうやら一晩寝ていたようだ。
上体を起こしベッドから降りつつ、昨日エレノーラから教わったこの世界について考えている。
「「ブレイドアンドマジック」では無さそうだけど、何か似ているんだよなあ」
違うとはわかっていても、なぜか可能性を捨て切れなかった。無駄だとは理解しつつ、私は試してみることにした。
「ステータス、オープン!」
しばらく沈黙が流れる。
「やっぱりだめか……」
あきらめかけたその時、目の前に青い半透明のウインドウが出現する。
「お、やったか!」
私が喜んだのも束の間、それは思っていたものではなかった。表示されているものはスマートフォンやペン、書類といった私の所有物のデータだった。
「これはインベントリデータなのか。けど、ステータス的なものはないな」
ゲームで獲得した馴染みの所持品や装備も見当たらなかった。残念ながら、どうやらここはブレイドアンドマジックの世界ではないようだ。
「だけど!」
この表示そのものが大きな発見だ! 私が知らないゲームの可能性もある。この世界のシステムかもしれない。ともかく、後でエレノーラに聞いてみよう。
こうなってくると基礎ステータス等ののデータが見てみたい。何かメニュー画面がないか色々探してみるが見当たらなかった。
所有物データ表示の中のスマホのようなアイコンを押してみる。確かに私のスマートフォンだ。
ダイアログボックスが現れ、「取り出しますか?」と聞いてくる。はいを選択すると、スマートフォンが目の前に具現化する。
バッテリー残量はあるので画面表示はされている。手に取り見ると、圏外で使用はできないようだ。
「まあ当然か。電波の基地局無いだろうしな」
私はパネルに向けてスマホを当ててみた。スマホはパネルに戻っていきデータ化する。
「思った通りだ。また他にも方法があるか調べよう」
インベントリからの取り出しと収納は理解できた。あとはこの世界の物を収納できるかだな。容量についても知っておく必要がある。
試しにテーブルに置いている水差しをパネルに入れてみる。水差しはパネルの中に入りデータ化される。読み込みが始まり、しばらくすると内容がデータ表示される。
「なるほど。データ化されると対象がどんなものか分かるようになるんだな」
パネルに触れ、水差しを取り出す。具現化はスムーズで手に取るまで浮遊することが分かった。
「出し入れできないものがあるか調べてみよう」
ちょうどその時ドアをノックする音が聞こえ、クララが入室してきた。
「失礼します。お食事の準備が整いました」
「ありがとう」
クララにはパネルが見えていないようで、表示を閉じて支度を済ませる。
私はクララに先導されて食堂へと向かう。食事しながらインベントリの件をエレノーラに聞いてみよう。