第49話 事後報告
私はグレッグ達と別れ、部屋に戻り身を清めた後、エレノーラ様の部屋を訪れる。部屋に通されると、エレノーラ様は書類を書いている最中だった。
「タクト、待っていましたよ。準備は整っていますか」
「はい、師匠。いつでもいけます」
「それはよかった。この書類を書き終えたら行きますので、お待ちくださいね」
「わかりました」
エレノーラ様は軽やかにペンを走らせ文章を書き、一分も経たないうちに書き終えて便箋に封をし、魔法でどこへともなく送ってしまう。
「さて、終わりましたので行きましょうか」
私は決意を胸にエレノーラ様に臨む。
「師匠、その前にお話が……」
「ああ、グレッグ達の件ですね。ではそこに座ってください」
「は、はい……」
思わず拍子抜けしてしまう。私の様子ですでに察しておられたのか。席に着いて十三階層での経緯をエレノーラ様へ伝える。
「そうですか。皆さんでは対処できないほどの魔物だったのですね」
「ええ。今までの階層では対処できるほどの魔物しか出現していなかったのですが、今回は大量に出現したのです。それで今回攻撃魔法を使用しました。申し訳ありません」
「いいえ、よいのですよ。それでパーティーの皆さんの様子はいかがです?」
「数が増えると処理に手間取って大変そうです。魔法による攻撃を必要としていました」
「なるほど。経験値や役割についてはどう考えているようでしたか?」
私は皆へ説明したことを話したうえで、皆の意見をエレノーラ様に説明した。
「わかりました。タクトの攻撃魔法使用を許可します。グレッグには私から話しておきますね」
「ありがとうございます、師匠」
これでダンジョンの方は解決しそうだ。エレノーラ様から話してもらった方が彼らに対して説得力があるので助かる。
「皆さんの意見を尊重しましょう。今後のことは皆さんで相談なさって結構ですよ。タクトは負担が増えますが、よろしく頼みますね」
「わかりました。それと師匠……」
次に私はダンジョンに冒険者キラーが出現し、ユーデル=カーマンとの戦闘の話を説明した。
「そんなことがあったのですか。それは大変ですね。タクトが戦わないといけないほどの相手だったのですね」
「ええ。グレッグ達では荷が重かったのでついやってしまいました」
「もちろん構いませんよ。復活の魔法も使用したのですか?」
「はい。相手は殺戮を楽しむような人間でした。ギルドに引き渡しましたが、まだ仲間がいるかもしれません」
「そうなのですか。それは物騒ですね」
「ただ彼の実力を物差しにすれば、師匠が出て行くほどの相手ではなさそうです。アビスの魔物達やメルキウス、イグノールの方が実力は上だと思います」
「ですがタクト、くれぐれも油断は禁物ですよ。狂者は知恵に長け、頭が切れるのです」
エレノーラ様は私に程よく注意喚起してくださる。
「はい、ありがとうございます」
そして更に超電の雷帝についてエレノーラ様に話す。
「師匠、これをご存じですか?」
私はインベントリから雷晶帝核を取り出して見せる。
「いいえ。見た事はありませんね」
「そうですか。超電の雷帝は……」
私は再び玉をインベントリに戻す。そして雷帝との戦い、強さについてエレノーラ様に話した。
「そのような魔人が存在するのですね。私も見たことがありませんわ」
「ここで出すと厄介なのでアビスに行ってから召喚します。報告は以上です」
「わかりました。様々なことがあって成長できたようですね。何よりですわ」
伝えるべき長めの報告が終わる。エレノーラ様は私の話にご満悦のようだ。私達は席を立ってアビスへの準備を始めるのだった。
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