第32話 聖女の呪い
私はグレッグ達と別れた後、テレポートで自室に戻り、身を清めてからエレノーラ様の部屋へ顔を出す。彼女は仕事を早く済ませ私の帰りを心待ちにしていたらしい。
「お帰りなさいタクト。待っていましたよ!」
今日からエレノーラ様と新たな修練が始まる。詳細は追ってという話だったのでこれから聞けるだろう。それにしてもやけに楽しそうだ。
だがその前にエレノーラ様に確かめねばならないことがある。
「師匠、実はお聞きしたいことがありまして……」
「どうしました?」
私はダンジョンでのオウルベアとの戦闘で起こったことをすべてエレノーラ様に説明した。彼女は聞きながら考え込んでいる。
「なるほど、そんなことがありましたか」
「はい、師匠なら何かご存じかと」
「確証があるわけではないのですが……」
エレノーラ様は少し間をおいて答える。
「もしかすると、『聖女の呪い』かもしれませんね」
「聖女の呪い? 何ですかそれは」
呪いってどういうことだ? 物騒な名前だな。エレノーラ様は続ける。
「名称は呪いですが、そんなに悪いものでもありません。私がタクトを異世界から呼び寄せたことによるペナルティという意味で、呪いと呼んでいます」
「は、はい……」
「召喚は困難を極めましたので、副作用みたいなものですね。効果自体は、敵対する者から殺意の攻撃を受けた時に、対象者を守る神がかった力が発動するというものです」
「守ってくれるのですか?」
「そうです。オウルベアがタクトを襲ってきたことで発動したのでしょう。他にも発動条件があるのかもしれませんね」
「なるほど」
知らないうちにそんなものが備わっていたのか。召喚された時点ですでにそうなっていたとしたら、不可抗力だよなあ……。
「ですがそれなら【加護】とか【祝福】でもいいのでは?」
「効果としてはそうなのですが、召喚術による弊害というところがこの名称の理由なのです」
まあ、いいのか悪いのかわからない効果だし、仕方ないか。
「今後もまた効果が発動する場面が来るかもしれませんね。前もって話をせず、ご迷惑をかけてしまい申し訳ありません」
「ま、まあ師匠は悪くないですから。よければ召喚術の書物をお借りできますか?」
「わかりました。手配しますので後日お持ちしますね」
ともかく、謎の現象の原因がわかっただけでも良しとするか。厄介なことにならないのを願うのみだ。
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