第31話 第十一階層の攻防
石造りの階段を降り、私達は十一階層へ足を踏み入れる。階層の構造自体は十階層と大差はないようだ。
「ここから敵が強くなる。気を引き締めていくぞ」
グレッグが檄を飛ばし先へと進む。程なくして魔物が現れる。左手に剣を構えるトカゲ人間タイプだ。
「リザードマンか。カーラ、行くぞ。タクトは援護頼む」
「了解!」
私は襲い来る魔物達に魔法でプレッシャーを与え動きを鈍らせる。アーノルドの背後からカーラが動き出し、リザードマン達の身体を切り刻み翻弄する。
その後をグレッグが確実に仕留めていく。リザードマン達は次々と四散し、アイテムをまき散らす。
「カーラどんどん行け! 俺が後を始末する」
その時、空から新たな魔物が出現し私達を襲う。カーラは察知して大地を蹴り高くジャンプする。
「大丈夫。動けてる」
空中でカーラが躍動する。
「輪舞・無双華!」
連撃を飛ばして次々と魔物を打ち落としていく。だが魔物達は次から次へと容赦なく襲ってくる。
「くそっ! このままじゃきりがない」
グレッグが迎撃しながら愚痴をこぼす。防戦一方のアーノルドも含め、焦りの色が見られる。
「カーラ、範囲魔法は打てないの?」
「そんなのあればもう使ってるよ」
なるほど。打開するにはカーラよりグレッグの方が適任かもしれない。
「グレッグ、少し来てくれるか。アーノルド、もう少し耐えてくれ」
私は指示を出し、グレッグが来てくれる。
「剣に魔法をかける。剣技で一気に開放してほしい」
「お、おう。わかった」
私は氷属性と聖属性の加護をグレッグの剣に込める。
「これで魔剣のように扱える。階層の魔物の弱点を付与した。一気にやってくれ」
「サンキュー、タクト。任せろ!」
グレッグはアーノルドにスイッチの合図を送ると、皆の前に立ち剣を構える。
「奥義・飛竜破斬撃!」
氷と聖なる力をまとった広範囲斬撃波が魔物達に飛んでいく! 魔物達を切り裂く破裂音と断末魔が辺り一帯に響き渡り、やがて静寂を取り戻す。
「ハァ……ハァ……、やったぞ!」
魔物達は四散し、私達はアイテムを回収する。すぐに皆をエリアヒールで回復させて先へ進む。その後も何度か魔物達と遭遇し、交戦した。
「ああ、レベルが上がった気がする! 身体か軽いもの」
カーラが歓喜する。かなり戦闘を繰り返した成果か。
「俺もだ。アーノルドもそろそろ上がりそうか?」
「今日はもうレベルアップしたと思います」
「そうか。タクトはどうなんだ?」
グレッグが私に尋ねる。特に変わった感じはない。
「いや、私は上がってないと思う」
「そうか。けどここまでやれたのはタクトのおかげだ。サンキューな!」
「役に立ててよかったよ」
攻撃に参加できればもっと貢献できただろう。だが今の方がみんなが動いてそれぞれが役割を果たしていると感じる。
「よし、感知でボスがいないか調べるぞ」
グレッグが感知を使用する。しばらくして彼がほっと脱力する。
「よかった。今はまだ生まれていないみたいだ。今のうちに降りよう」
グレッグが先導して下への階段を探すと、程なくして見つかる。
「今日はここを降りたところで終わりにしよう」
私達は下へ降りた安全地帯でポータルを出現させる。カーラから順番にポータルへ入り、私達全員が地上へ戻った。
「私もです。こんなに動けたのは初めて。ありがとうタクト」
グレッグとカーラは魔法の効果に驚いている。私としても少し張り切ったかもしれない。
「役に立ててよかった。攻撃に参加できない分、これからもしっかりサポートするよ」
正直なところほっとしている。攻撃に参加できないもどかしさはあるが、ともかくできる事をしっかりやるだけだ。
グレッグから皆に労いの言葉がかけられる。
「みんな、今日はお疲れ様だったな。今後は一日一階層ずつの攻略にしようと思う。これからギルドに戻って戦利品の分配をしよう」
ギルドに戻りグレッグが帰還報告を行う。その後部屋を借りて私達は戦利品を分け合った。アーノルドとカーラも笑顔だ。
ただその後、グレッグがカーラにちょっかいをかけ大変なことになる。カーラが激怒してしまったのだ。
アーノルドとともに仲裁したがカーラの機嫌は直らず、一瞬にしてリーダーとして頑張ってきたグレッグの威厳は地に落ちてしまったのである。
私は見かねて『天使の羽毛』をカーラにかける。
「あ、あれ。心地いい感じだ」
カーラは何とか落ち着きを取り戻してくれた。よかった。
「グレッグ、カーラに謝ってくれ」
「わ、わかった。悪かったよ」
最後はドタバタしてしまったが、こうして記念すべき【勇ましき翼】の活動第一日目は幕を閉じたのだった。
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【まめちしき】
【天使の羽毛(Angel Feather)】……聖属性魔法。気持ちの落ち込み、ストレス、怒りを鎮め、安堵と理性を取り戻す効果がある。
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