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第30話 階層ボス遭遇

 私達は更に先へ進み、魔物達を倒していった。カーラのレベルの件もあり、魔物を待ち伏せて狩ることもあった。


 相当な数の魔物を倒した私達は、安全地帯で昼食を取ったあと更に奥へ進むことにした。


 それから三十分後、先に延びる洞窟を進もうとした時だった。


「待って! ここは任せて」


 カーラが前衛の前に行き、罠を外すべく器用に立ち回る。


「よし、これでよし。行っていいよ」


「サンキュ、カーラ」


「何の罠だったんだ?」


「地面が崩れて穴に落ちるところだったの。もう大丈夫よ」


 シーフとしてカーラが暗躍する。かなりの魔物を倒し、今の彼女はレベルが上がっているのを実感しているのか、潜る前の不安さは無いようだ。


 皆の気持ちが()み合う、そんな時だった。ダンジョンに入った時からずっと感じていたかすかな違和感が増幅する。


「何か来る!」


「何だと? もしかして階層ボスか!」


 グレッグが警戒感を(つの)らせる。全長四メートル以上はありそうな大きな熊だ。前の世界のヒグマより大きいかもしれない。


「オウルベアだ! 気をつけろ!」


 熊は闇の力に包まれ魔獣と化している。太い右腕を振り上げ私達に迫る。


 グレッグとアーノルドが回避に成功する。正面の地面がえぐれて壁にぶつかる。


「何て力なの!」


 カーラが声を上げ(おび)えている。私は彼女に対し詠唱する。


「聖なる力よ、迷える魂に祝福と安らぎを。『ホーリーカーム』!」


 金色の光がカーラを包み込む。彼女の身体の震えが止まる。


「ああ。私、どうしたんだろ……」


 カーラの目に光が宿る。


「カーラ、もう大丈夫だ。グレッグ達が敵を引き付けてくれている」


 彼女は私の目をしっかり見て答える。


「うん。ありがとう。行けるよ」


 カーラはすぐさま詠唱に入る。


「食らえ! ファイヤーボール!」


 カーラが作った火球がオウルベア目がけて飛んでいき、左肩に命中して爆発する。


「やった!」


 魔獣の肩から血が出てダメージを負わせた。だが……


グルォォオオオオオオ!!!!


 魔獣の目は血走り、怒り狂う。激しく胸を叩いて気合をつけ、口からは大量のよだれが垂れ落ちる。


「ヤバい! みんな散開しろ!」


 グレッグが叫ぶも、暴走したオウルベアは勢いよく直近のアーノルドの側面を右腕で払い飛ばす。


「ぐおお!」


 アーノルドは壁に激突して止まり、地面に倒れ伏す。


 オウルベアは次にグレッグを左腕で吹き飛ばそうとする。グレッグは回避行動をとり交わしたかに見えたが、魔獣の爪が引っ掛かり体勢を崩し、二メートルほど地面を転げる。


「ああっ!!」


 目の前の光景にカーラの足がすくむ。魔法の効果が辛うじてカーラを支えていた。


 オウルベアは私達めがけて突進してくる!


「カーラ、伏せろ!」


 私は必死に声を出す。カーラはすぐ頭をかがめる。魔獣が眼前にスローモーションで迫る。


 私は如何様(いかよう)にもできた。この魔獣を吹っ飛ばすことも。魔法で動きを止めることも。


 だがしなかった。両腕を振り上げるのを成すがまま見守る。怒りをぶつけようとする目も。振り下ろす挙動も。


 だが次の瞬間、信じられない光景が広がった。


ザシュン!!!


 オウルベアの両腕は私の目の前ではじき飛び、胴体からちぎれて飛んでいく。


「は?」


ギィヤアァァァァ!!!!


 魔獣の苦悶(くもん)する咆哮(ほうこう)が響き渡る。両肩の切断面から血しぶきが勢いよく飛び散る。


「グレッグ! とどめを!!」


 私の叫びに倒れていたグレッグが意識を取り戻す。私はグレッグに近づきヒールをかける。


「グレッグ、とどめを頼む!」


「あ、ああ。わかった」


 グレッグは要を得ないまま剣を構える。


「奥義、一文字・斬!」


 右側に大きく振りかぶり左に振った一撃が、オウルベアの胴体と心臓を真っ二つにする。体が四散して消えアイテムをぶちまける。


「やったなグレッグ!」


 階層ボスは倒された。グレッグと私はその場にへたり込む。


「ああ、タクトがいなかったら全滅だった。サンキューな。それにタクトの魔法強化のおかげだ。思った通りに体が動くし、想像以上の成果を出しやがる」


「あ、ああ……」


「でもどうやって腕を飛ばしたんだ。俺は気を失ってたから……」


「それが、私にもわからないんだ。何もしていないのに突然目の前で腕が飛んで行ったんだ」


 私の返答にグレッグは困惑する。


「何だそれ? タクトが攻撃したんじゃないのか?」


「してないんだよ。エレノーラ様から止められているし……」


「そうか、そうだったよな。ま、ともかく助かった」


 グレッグは深く詮索(せんさく)せず、私をねぎらってくれた。私も気にはなったが、まずは気を失っているアーノルドをヒールで回復させる。


「おお、ありがとう」


 アーノルドが意識を取り戻す。カーラも駆け寄ってくる。


「ありがとう、倒してくれたのね」


「ああ、グレッグがやってくれた」


「お、おう! 俺様の実力よ!」


 グレッグはカーラにマウントを取ってみせる。


「本当? まあそういうことにしといてあげるよ」


「ええっ! そりゃないよぉ……」


 二人がやり取りしている間、私は魔獣の腕が飛んだことを考えていた。


「一体何が起こったんだろう……? まあ、考えても仕方ないか。今度エレノーラ様に聞いてみよう」


 地面に落ちている戦利品を見ると金貨や刀剣類、装備品が見受けられる。やはりボスともなるとよいアイテムが落ちるのか。つい「ブレイドアンドマジック」を思い出してしまう。


「タクト、剣とかは俺達がもらっていいか?」


「ああ。これからも三人で分けてくれていいよ。貨幣と魔石をもらえれば十分だ」


「すまんな。魔道具が出ればお前に回すから」


「ありがとう、グレッグ」


 戦利品をアーノルドに預け、しばし休息を取ることになった。念のため全員にエリアヒールをかけ、マジックポーションを皆で飲んでおく。


 その後私達は十一階層へ向かうことになる。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



【まめちしき】


ホーリーカーム(Holy Calm)……聖属性魔法。対象の心に聖なる光を注ぎ、混乱・恐怖・錯乱(さくらん)・発狂状態などの精神異常を(しず)め、安堵(あんど)と理性を取り戻させる魔法。強いストレスやトラウマの一時的な緩和(かんわ)にも効果がある。

ここまでお読みいただきありがとうございます!


「面白いかも!」「続きが読みたい!」「陰ながら応援してるよ!」


ほんの少しでもそう思ってくれた方は、いいねを押して、ブックマークや広告下の「☆☆☆☆☆」から評価していただけると幸いです。


作者のモチベが上がりますので、ぜひよろしくお願いいたします!

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