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第27話 勇ましき翼

 エレノーラ様の機転によってギルド本部の二階にやってきた。フロアにはたくさんの冒険者達が集まっている。


「二階はパーティーを募集している冒険者達が集まっていますわ。ここで必要な人材をスカウトするのです。少しお待ちくださいね」


 そう言い残してエレノーラ様は多くの人達の中に消えていく。結構待たされるかと思いきや、五分も経たないうちに二人の男を連れて戻ってくる。


「お待たせしましたね、タクト。ちょうど知り合いがおりましたので紹介しますわ」


 一人は金髪の優男。銀のプレートメイルを装備している。もう一人は180センチ以上はある筋肉質の大男。全体の見た目とは違い温厚そうな顔つきだ。エレノーラ様は二人に私を指し示す。


「彼のこと紹介しますわ。タクト=ヒビヤさんです。縁あって私のもとで大賢者として修業しております」


「タクトです。よろしくお願いします」


 二人に一礼する。金髪の男が名乗りを上げる。


「グレッグ=ランデールだ。ファイターをやっている。俺達二人でパーティーを組んで探索している。ちょうど魔法を使えるサポーターを探していたところだ」


「アーノルド=イルムです。君の(うわさ)は聞いていますよ。一応モンクですが、ガードタンクやってます。魔法は苦手なので助かります。アーノルドと呼んでください」


「おお、頼もしいですね。お二人の戦闘レベルはどのくらいですか?」


 私の質問にグレッグが目を輝かせる。


「お、よく聞いてくれたな。俺が三十八でアーノルドが三十七だ。今ダンジョンは第十層を攻略中だ」


「レベル的にももっと深く潜りたいのですが、二人なので行けないのです。それで人を募集しようと思いまして」


「なるほど。ちなみにパーティー名はありますか?」


 私の質問にグレッグの目がまた輝きだす。


「よくぞ聞いてくれた! 俺達のパーティーは【勇ましき翼(ブレイブウイング)】っていうんだ!」


「おお! なかなかいい名前ですね。何よりかっこいいです!」


「おお! わかってくれるか。お前、いい奴だな!」


 大したことは言っていないが好感を持ってもらえたようだ。


「いい雰囲気ですね。グレッグ、どうです? パーティーに参加してもらいますか?」


「ああ。タクトとは気が合いそうだ。勇者の噂も聞いているし、戦力になってくれそうだ」


「ありがとうございます」


 どうやら入れてくれそうだ。よかった。


「そうですか。ですが参加にあたって一つだけ条件がありますの」


「条件?」


 グレッグはエレノーラ様の言葉が気になったようだ。


「ええ。条件は彼は攻撃には参加せず、サポート役に使ってほしいという事です。どうでしょうか?」


「魔法攻撃もしないという事か?」


「はい、そうです。敵に毒付与など援護はしますが、攻撃はあくまでタクト以外の皆さんで行ってもらいます」


「ほぉ、そういう事か。いいぜ。俺達でやりゃいいんだな」


「はい。では交渉成立ですね。よろしくお願いしますね」


 エレノーラ様は私にウインクして微笑(ほほえ)んでいる。なかなかの交渉上手だ。


「よし、今後の事について話そうじゃないか」


 グレッグがそう言って空いているテーブルを探しに行く。私も彼らについていこうとした時、後ろからふと女性の声が耳に入る。


「…… あんまりだわ……」


 振り向くと奥のテーブルで一人うなだれているのが見える。


 私はふと立ち止まる。なぜかわからないがとても気になった。


「ど、どうしましたか?」


 無意識に彼女が座っている近くに歩み寄り話しかけていた。女性が苦手な私がこんな事をするのはまれだが、ここに来てからずっとエレノーラ様やクララと話しているおかげか。


「貴方は?」


 褐色の髪でポニーテールにまとめた童顔。身長は座っているのでわからないが160センチくらいか。薄い青灰色(ネイビーブルー)の身軽な服装だ。二十歳にもなってないくらいに見える。青い瞳で私を見る。


「今日冒険者になりたてのタクトと申します。貴女の声が耳に入り気になりまして」


 彼女は少し私を見ていたが、視線を下に移して話し始める。


「実は…… 所属していたパーティーのリーダーから突然解雇すると言われて。納得いかず話し合おうとしたんだけど取り合えってもらえなくて……」


「なるほど、それは(ひど)い話ですね」


 前の世界の会社ではよくある話だったが、ここでもあるんだな。


「二か月前やっとの思いで決まったパーティーだったの。ここまで頑張ってきたのに、また一人になってしまった……」


 かなり意気消沈している。よほどショックだったのだろう。


「あの…… でしたら、私達のパーティーに参加しませんか?」


「え?」


「実は私も先ほど加入したばかりなのですが、いい人達みたいで。私からもお願いしてみましょうか?」


「そんな…… いいんですか?」


「私はいいですよ。一緒に行きましょう」


 私が後ろを振り返るとちょうどグレッグが駆け寄ってくる。


「おお、突然いなくなったと思ったらこんなところにいたのか」


「グレッグさん、ちょうどよかった。実は……」


 私は彼女の事をグレッグに説明すると、あっさり快諾してくれた。


「おう、人数は多いほどいいしな。それにこんな可愛い子なら大歓迎だぜ」


「ありがとうございます!」


 彼女はグレッグ達に深々と一礼する。グレッグがいい奴でよかった。


「よかったですね」


「はい。ありがとう」


「ところで君の名前は?」


 グレッグが彼女の名前を確認する。


「あ、そうだ。私も聞いてなかった」


 グレッグに言われて気づく。そう言えば名前を聞いていなかった。


「改めまして。私はカーラ。カーラ=メネシスです」


 カーラは自己紹介するとニコッと笑顔になる。


「カーラちゃんか、いい名前だな。何の職業だ?」


「シーフです。少しですが魔法を使えます」


「斥候の人員は大きいですね。魔法を使えるのもいい」


 アーノルドが感心して喜ぶ。


「カーラ、俺達【勇ましき翼(ブレイブウイング)】は君を仲間として受け入れる。これから仲良くやっていこうぜ」


 グレッグが正式に彼女の加入を認める。


「ありがとう。みんなの力になれるよう頑張ります。よろしくお願いします」


 こうしてカーラと私は正式に【勇ましき翼(ブレイブウイング)】の一員となった。すぐにギルドで手続きを終えると、グレッグが近くの酒場へ皆を連れて行き、手厚い歓迎をしてくれるのだった。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【まめちしき】


【ガードタンク】……世間一般的な職業としては無い用語ですが、防衛の役割専門職の意味。アーノルドはパラディンやクレリックのように魔法も使える防衛タイプではないので、この用語を職業として用意しました。


ここまでお読みいただきありがとうございます!


「面白いかも!」「続きが読みたい!」「陰ながら応援してるよ!」


ほんの少しでもそう思ってくれた方は、いいねを押して、ブックマークや広告下の「☆☆☆☆☆」から評価していただけると幸いです。


作者のモチベが上がりますので、ぜひよろしくお願いいたします!

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