第26話 冒険者ギルド登録
私はエレノーラ様の魔法で冒険者ギルド本部入口に転移する。立派な建物が私達の目の前にそびえ立つ。
「前も来ましたがすごい建物ですね。前の世界の建造物にも負けていないです」
「そうですか。ここは国の管理する冒険者ギルド本部ですから。さあ、参りましょう」
エレノーラ様に先導され入口を入ると、多くの冒険者達と職員でにぎわっている。中央奥には勇者と思しき像が立っている。
「さあ、こちらですよ」
エレノーラ様がギルド受付に導いてくれる。もしいなかったら確実に迷っていただろう。
「いらっしゃいませ。お待ちしておりました」
ギルドの受付職員が私達を出迎える。エレノーラ様が職員に伝える。
「こちらが今回登録するタクトです。よろしくお願いします」
「タクト=ヒビヤです」
「かしこまりました。それではこちらの書類に必要な項目にご記入の上、提出願います」
職員の女性が書類とペンを手渡してくれる。書類は前の世界での会員登録と同じような内容だ。
私は一つずつ自分の情報を記入していく。一分後すべて書き終えて提出する。
「ではこれでお願いします」
「ありがとうございます。登録証をお作りしますのでお待ちくださいね」
私とエレノーラ様はその間建物の中を見て回る。天井には豪華なシャンデリアが建物内を明るく照らしている。広い敷地内では様々な職業の冒険者やパーティーが話し合い、受付や掲示板でクエストを探している。
「少し休みましょう」
エレノーラ様とともに休憩室に行き、飲み物を注文する。たくさんあるテーブル席の一つに持っていき休む。
「こう知らない人が多いと気疲れしてしまいますね」
「ですね。エレノーラ様もお疲れになることがあるのですね」
「もちろんありますわ。まあ一番疲れるのは退屈な会議ですけれども」
この世界でも気疲れというのはあるのだなと親近感を覚える。
「そういえば昨日クララとはどうでしたか? あの子ったら何も話してくれなくて」
「え? ああ」
私はひと呼吸おいて答える。
「しっかり案内はしてくれましたよ。それと、付き合いたい気持ちを伝えたのですが、すっかり断られちゃいました」
「まあ、そうだったのですか。それは残念ですわね」
「はい。私では釣り合わないと言われてしまったのですが、さっぱり訳が分からず……。これまで通り身の回りの世話はしてくれるようです」
「そうですか。クララったら、何が不満なのかしら……」
「ですが私からの好意はうれしいと言ってくれました」
私の言葉にエレノーラ様は目を丸くする。
「まあ、あの子ったら。ますますわかりませんね」
「ええ。私も帰ってからずっと悩みましたよ。ハハハ……」
「表向き恋愛禁止の規則がありますから、それかもしれませんわね。ですが聖堂内の恋愛は緩いですからね……」
「そうなんですね」
なるほど、それなら納得いく。配慮してくれたのかもしれない。
ちょうどその時私の名前が呼ばれたので、私達は受付に向かった。
「冒険者証が出来上がりましたのでお渡しします。タクト様はSランクですね。初登録で素晴らしいです」
受付の女性が冒険者証と小型のリュックを渡してくれる。
「ありがとうございます」
「こちらが冒険者セットです。ダンジョン攻略に必要最低限の道具が入っています。マニュアルもございますのでお読みくださいね」
「わかりました」
私達のやり取りが聞こえた周囲の冒険者がざわつきだす。Sランクはよほど珍しいのだろう。まあこの国の勇者を救出したのだから仕方ない。
「まずいですね。一旦この場を離れましょう」
エレノーラ様の機転で私達は建物の二階へとテレポートで転移する。とりあえず冒険者登録することはできた。次はパーティーを探すことになる。
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