第25話 師匠からの提案
翌朝、私は複雑な気持ちで目覚める。クララとの仲は近づいたが、もやっとした気持ちが残った。このままでいいのだろうか。
顔を洗って魔法で残った水を飛ばす。シュッと消える音が心地よい。いつもの服に着替えて魔法の復習を始めようとした時、扉をノックする音がする。
「おはようございます。失礼いたします」
クララが朝食を運んできた。丁寧にテーブルに料理の皿を置いていく。
「昨日はありがとうございました。とても楽しかったです」
「こ、こちらこそありがとう。街のことよくわかってよかったよ。また機会があれば案内してくれないかな?」
「わかりました」
クララがニコッと微笑んで答える。直後不意にクララが話し始める。
「あ、そうでした。九時半にエレノーラ様が中広間でお待ちしているとの事です」
「そうか。わかった、ありがとう」
クララがワゴンを引いて退出していった。私は朝食を食べながらこれからの事を想像する。
今日から新しい事を始めるとエレノーラ様から聞いていた。一体何をするのだろうか。
朝食後、魔法の復習をしているとあっという間に約束の時間が近づいてしまう。私は準備を済ませ中広間へ向かった。
「おはようございます、師匠」
まだ時間には早かったが、すでにエレノーラ様が待ってくれていた。
「おはようございます。早かったですね、タクト」
エレノーラ様が早速今日の内容について話し始める。
「本日はこの後ギルドに向かい、登録してもらいます。それが終わったら一緒に冒険してくれる仲間とパーティーに加入してもらいますね」
「そうですか。わかりました」
この前行った冒険者ギルドにいよいよ登録するのか。あの時は緊急だったし。
「今後はパーティーの仲間とともにダンジョン攻略していただきます。目的は魔法の実践と仲間との連携に慣れてもらうことです。いずれ来る魔王軍攻略にも役立つことでしょう」
「わかりました」
「それと、パーティーでのダンジョン攻略時は攻撃魔法の使用を禁じます」
「え?」
なぜだ? 攻撃は必須だと思うのだが?
「タクトの魔法は強力すぎます。きっと仲間の方達が怠けてしまうか、何もできず途方に暮れるでしょう。私からもお話しするつもりです」
「ああ、そういう事ですか」
かなり頭を使わないといけないな。だが防御は使えるか。まあ誰と組むかにもよるな……。
「その代わり、攻撃魔法を鍛えるために私に付き合っていただきます」
「どういう事ですか?」
「毎日パーティーでのダンジョン攻略が終わったら、私の所に来てもらいます。それが今後の新しい修練ですわ」
ダンジョン攻略の後に師匠と特訓するのか。なかなかハードな内容になりそうだ。
「わかりました」
「私と何をするかはその都度説明いたしますね」
エレノーラ様は少しうれしそうだ。何かあるのだろう。
「では今から冒険者ギルド本部に向かいます。準備はよろしいですか?」
「はい、お願いします」
エレノーラ様はうなずき、テレポートを使用する。これから新しい修練の日々が始まる。
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