表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/62

第15話 勇者イグノール

 障壁となる魔物は退治した。四方を(おお)っていた薄赤い膜は消滅したが、水晶はそのままの状態を保っている。


「魔物が死んでも効力が消えないのですか?」


 エレノーラ様に疑問を投げる。彼女も困った顔をしている。


「そのようですね。厄介ですが私達で解除するしかなさそうですね。まあここは私がやりましょう」


 エレノーラ様は水晶に近づき錫杖(しゃくじょう)を向ける。


極上の浄化エクストラ・ピュリファイ


 まばゆい聖なる光が水晶を包み込むと、あっさりと水晶が消滅し勇者達が開放される。


「さすが師匠! ありがとうございます」


「ふふふ。これでも聖女ですから」


 エレノーラ様は続けて魔法を発動する。


範囲高位回復魔法(エリア・ハイヒール)!」


 倒れ伏す四人の戦士達に回復魔法がかけられる。目は閉じているが彼らの表情が穏やかになる。


「お、回復したようですね」


 だがエレノーラ様はしばらく彼らの様子を確認している。何かを感じ取ったのか。


「これはいけませんね…… まだ安静が必要のようです。水晶の毒素が思いのほか溜まっているようです」


「師匠の術をもってしてもダメなのですか」


 すると男性の一人が目を覚ます。


「うっ…… ここは」


「イグノール様、まだ体を動かしてはなりません」


 エレノーラ様の声に気付いて振り向く。


「聖女エレノーラ…… 俺達は……」


「皆さんミノラスに封じられておりました。我々が救出したところです」


「奴はどこへ?」


「我々で倒しましたよ。倒したのはここにいるタクトですが」


「あの怪物を? 君は一体?」


「タクトと申します。一週間前に異世界から来ました」


 私は勇者に挨拶(あいさつ)する。彼は目を見開きじっと私の顔を確認している。これがイグノールとの初めての出会いとなる。


「異世界から? 俺はイグノール。勇者だ」


「お会いできて光栄です」


 私の返答に(うなず)いた後、彼はエレノーラ様に向かって叫んだ。


「せ、聖女様お願いします! どうかミレーヌを助けてください!」


「ミレーヌ?」


 倒れている女性は二人。どちらかのことだろうか?


「あの化け物に食われてしまったんです…… 俺達は何もできなかった」


 イグノールは涙を流して私達に訴える。エレノーラ様が答える。


「つまり、絶命したと?」


「はい」


「遺体もここにないと?」


「はい」


 エレノーラ様が少し考え込む。


「そうですか…… わかりました。ですが今は貴方達の身が第一です。戻りましょう」


「なっ!」


 イグノールの顔が引きつる。それを気にする素振(そぶ)りも見せずエレノーラ様が私に語りかける。


「タクト、戻りますよ。準備はいいですか?」


「はい。彼らの処置は?」


「戻り次第行います。魔物達が復活する前に行きますよ」


「わかりました!」


 エレノーラ様がグレーター・テレポートを発動する。魔法陣が現れ私達全員を包み込み地上へと転移する。


 次の瞬間私達はギルド本部の病棟待合フロアに出現する。転移の完了を確認すると、エレノーラ様は間髪入れず魔法を発動する。


精霊の息吹(エレメンタル・ブレス)!」


 イグノール達を柔らかい光が包み込む。


「イグノール様、安心してください。ミレーヌのことは引き受けましたわ。貴方達は自身の回復に努めてください」


「わかりました。よろしくお願いします」


 イグノール達四人の勇者パーティーは、駆けつけた医療班のメンバーによって医務室へ運ばれていく。私達は勇者を失うという最悪の事態を避けることができたのだった。

ここまでお読みいただきありがとうございます!


「面白いかも!」「続きが読みたい!」「陰ながら応援してるよ!」


ほんの少しでもそう思ってくれた方は、いいねを押して、ブックマークや広告下の「☆☆☆☆☆」から評価していただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ