第13話 勇者捜索
翌日、エレノーラ様との修練に臨んだ私はある提案をする。
「ずっと気になってたのですが、勇者達の救出に行かなくていいのですか?」
「ええ、行方がわかりませんから」
「彼らは王の勅命ではないのですか?」
「いいえ、ダンジョン探索ですね。王宮魔術師団が遠隔で捜索したのですが見つからなかったとの事で」
「なぜ本格的に捜索を出さないのです?」
「彼らが向かった深層の魔物たちが強力で安易に捜索隊を出せないのです。助けに行って被害が大きくなれば意味がありません」
「強い冒険者を募って救出隊を編成できないのですか?」
「ギルドで募集はかけたそうですが、集まらなかったようです」
「そんな……」
勇者が大変な状態かもしれないのに国を挙げて何とかしないのか。それなのに戦争に駆り出すと。勇者がいなくなって困るのはこの国の皆ではないのか……
「どのみち見つけないと大変なことになるのでしょう? なら早く行きましょう。私と師匠でならきっと探せます」
「私達でですか? それは考えもしませんでした。確かに今のタクトとなら、現地に行って探すことはできますね」
「そうですよ。師匠らしくないです。ダメもとで動きましょう」
「わかりました。王宮に許可を取りに行ってきます」
エレノーラ様は王宮にテレポートで向かった。聡明な彼女がここまで後手なんて珍しい。何かあるのだろうか。
しばらくしてエレノーラ様が帰還する。
「タクト、許可が下りましたよ。今から冒険者ギルドに向かいましょう」
「わかりました。行きましょう」
言ってみてよかった。勇者達の安否が心配だ。私達は冒険者ギルドに転移する。
ギルドに到着すると、王宮からの連携のおかげで受付嬢にスムーズに対応してもらえた。
「イグノール様のパーティーは四日前にサルカ地区ダンジョンの第五十層へ向かいました。その後ギルドへの連絡はございません。こちらから連絡もしましたが応答がありません」
「そうですか。もう五十層より深く潜っているでしょうね」
ギルドの受付嬢が丁寧に答え、エレノーラ様は少し思案している。
「師匠、テレポートで行けそうですか?」
「ええまぁ。とりあえず第五十層へ向かいますか」
「わかりました」
エレノーラ様は受付の手続きを済ませると、聖魔法の守護魔法を一通りかける。
「では行きますよ。心の準備はいいですね?」
「は、はい」
「サルカ地区ダンジョン第五十層へ。グレーター・テレポート!」
魔法陣の光が私達を包む。次の瞬間、私たちの身体は一気に第五十層へ転移する。
「うおっ!」
ダンジョンという割にはかなりの広い空間。静寂だが空気がひりついている。
「ここが第五十層……」
「ええ。魔物達がいますので周囲には気を配ってください。ではイグノール達をを感知してみますね」
エレノーラ様は階層に勇者達がいるか探る。一時後彼女の表情が曇る。
「ダメですね、このフロアにはいません」
「そうですか」
私が返事すると辺りがざわつきだす。
「魔物達が私達に気付いたようですね。気をつけてください」
「このフロアの敵の弱点は?」
「火ですね。火力が高くないと効きませんよ」
「わかりました。師匠は防御お願いします」
「了解ですわ」
エレノーラ様はすぐさまホーリーシールドを発動する。私は術の発動に集中する。
「敵を焼き尽くせ、範囲地獄の業火!」
術は正常に発動し、私達を覆う防壁の外に黒い炎が辺り一面に沸き起こる。
姿を現していた魔物はもちろん、姿を隠して忍び寄っていた魔物もまとめて黒い炎に焼き尽くされていく。
「いい感じですね。魔物の気配が激減しました」
「まだ残っている奴がいますか」
国を代表する勇者が潜るような場所だ。効かない強力な魔物がいておかしくない。
「ええ。ですがよくやってくれました。あとは私がやりましょう」
エレノーラ様は錫杖を出現させて詠唱する。
「神の理をここに。聖なる裁き!」
魔法が発動し、天井から数本の太い光が出現し衝撃が走る。轟音とともに断末魔が上がる。
「いいお返事ですね。すべて片付きましたね」
「お返事って、師匠……」
再び一帯が静寂に包まれる。魔物達が一掃されたようだ。エレノーラ様恐るべし。非戦闘員なんてとんでもないですよ。
「では下層に降りましょうか。魔物は強くなりますが大丈夫でしょう」
「わかりました」
「念のため回復しておきましょう」
エレノーラ様はヒールをかけてくださり、魔力ポーションを二人で飲む。準備が整うと、私達は下層への道へと進んでいった。
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