4.修行編突入!
「よし、とりあえず情報を整理していこうか。」
そう言って二人、さっきの木の陰に座り込む。
「まず、俺のスキルとセファーはどこに行ったんだ?」
「残念ながら探し物はボクじゃなくて姉ちゃんの仕事だ。でも、多分爺ちゃんのミスだろうね。」
そう言ってトゥプは首をふる。
爺ちゃんと言うと神様のことだろうか。
あんな有能そうな様子出しておいてこんなミスをされるなんてたまったもんじゃ無い。
「じゃあ、2つ目。この世界について教えてくれ。この世界のことはお前に聞くように言ってたよな?」
トゥプはふっと笑う。
「あいにく、案内も姉ちゃんの仕事だね。ボクは何も分からないよ。」
そんなことを自信たっぷりに言われても困る。
使えねぇと小さな声で呟くとムッとするトゥプ
「どうせお前はわからないだろうが、3つ目だ。俺が強くなる方法はあるか?」
「残念だけど、それはボクの専門分野だ。ボクのスキル【万物の変革】は全分野の基礎的なスキルが複合されたスキル。オマエを鍛えるくらいならわけないさ。」
そう言って勝ち誇ったように笑う。
希望が見えてきたのになんとも言えない敗北感を感じる。
「じゃあ、スキルの習得を当面の目標にするか。」
そう言って俺は伸びをして立ち上がる。
「まぁ、スキルを得られるかは適正次第かな。」
「適正ってどうやったら分かるんだ?」
顎に手を当てて考えるトゥプ
「たしか…ボクの記憶違いじゃなければステータスで見れたはずだよ。」
本当だろうな、しっかりしてくれよ?
そう思いながらステータスを開く。
情報の整理のためにも一度見直しておくのがいいだろう。
能力は、
筋力A・耐久A・敏捷B・魔力B・器用C
器用以外は別に悪くはなさそうだけどな。
「トゥプ。この能力値ってどのくらいか分かるか?」
その言葉にトゥプは笑っている。
何かおかしいことを言ったか?
「能力値なんて気にするやつなんて居ないよ。能力値がなくてもスキルが有れば充分だからね。」
俺は何も面白くないがこいつはツボに入ったようだ。
笑い転げてから涙を拭いて言う。
「まぁ、平均と比べたら良い方だと思うよ。スキルがないから意味ないけど。」
そう言うとまた笑っている。
お前もスキルが使えないの忘れてるんじゃないか?
「で、適正っていうのはどこを見るんだ?」
トゥプはじっと見つめるだけで何も教えてくれない。
多分分からないんだろうな。
仕方がないからステータスを触りまくる。
名前 天城悠斗
ニックネーム ユウ
種族 人間
年齢 16
身長 166.3cm
体重 54.8kg
職業 高校生
星座 かに座
干支 戌年
血液型 AB型
部活 帰宅部
趣味 ゲーム
将来の夢 プロゲーマー
能力値 総合B
スキル なし
加護 なし
装備 量産品の服
守護 トゥプ[能]
無駄に項目があるくせに新情報の量がカスみたいなステータス画面
半分を女子小学生のプロフィール帳が締めている
それぞれの項目の先にも新しい項目を作るというユーザーの気持ちに立てない制作者だ
が、どれだけ探しても肝心の適性を見つけることができない。
それから探し続けること小一時間
「ふぅ、やっと見つけたぜ」
プロフィールにカモフラージュした職業欄にやっとこさ適性の項目を見つけることができた。
職業欄には高校生と書くという認識を隠れ蓑にして隠れていたわけだ。なかなかやるな
適正…というか正確には適性ジョブだった。
もう少し正確な言い方をしてくれればすぐに理解できたものの
トゥプの方を見ると日陰で昼寝をしている。
こいつの存在意義は何なんだろうか
文句を言っても仕方がないのでステータスに目を戻す。
俺が適正を持っているのは剣士と魔法使い(土)
土ってなんだよ土って
炎とか雷とかもっといいのがあっただろう
「おい、起きろよトゥプ」
そうやってトゥプを揺さぶり起こす。
やっと適正を見つけたんだ。早く起きてくれ
大きく伸びをして起き上がるトゥプ
「姉ちゃん、ボク今すごい悪夢を…」
やっと現実を見てくれたみたいだ。
明らかに表情が曇っているのが分かる。
「適性見つけたから見てくれ」
はぁとため息をついて飛んでくるトゥプ
適性欄を見た瞬間驚いたような表情をする。
「おお、良かったじゃないか」
「これ当たりだったりするのか?」
土魔術なんてあんまり聞かないしレアジョブだったりするのかもしれない。
「異世界に絶望するあまりとうとう人間もやめてモグラになることにしたんだね。思った以上に適性が少なくてびっくりしたよ。」
まあ知ってたよ、いい意味で言ってるわけないって。
それでも何も得れないよりかはマシだと信じている。
「最低限の力ぐらいは手に入るんだろ?」
不敵な笑みを浮かべるトゥプ
「ボクに任せてくれれば最低限どころか平均以上まで鍛えてあげよう。」
とはいえ、何が楽しくて異世界に来た初日から修行編を始めなければならないのだろう。
ああ、そうだ。全部神様のせいだ。
こうして、俺とトゥプの特訓が始まる。
神様…あの爺さんへの怒りを糧に。