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3.チートライフの閉幕

 澄み渡る青空、あたり一面の野原、跳ね回るスライム

 日本じゃあこんなところ見たことがない。

 ベチョベチョと跳ね回るスライムが本当に異世界に来たのだと感じさせる。


 「身体はもとのままなんだな。」


 勝手に転生するものだと思っていたから転移という形だったのはちょっとさみしい。

 異世界ってのは家柄補正が入るだけで大分楽になるものなのだが。

 

 「なぁ、オマエ、姉ちゃん見なかったか?」


 こいつは弟のほう。名前はたしかトゥプだ。

 確かに見渡してみてもセファーのほうがいない。


 「俺は見てないぞ。」


 トゥプが肩をすくめて首を振りため息をつく。


 「姉ちゃんのことだ。多分迷子にでもなってるんだろうな。オマエ、ステータスって言ってくれ」


 ステータスといえば、自分の能力値やレベル、スキルに加護など様々な物を確認できる物だ


 「ステータス」


 目の前にばっとウインドウが広がる。

 能力値はぱっと見た感じ悪くなさそうだ。

 これも帰宅部エースとして日々の登下校で鍛えてきたからこそだろう。


 「この右下のところの『守護』のところから姉ちゃんの名前をタップすれば位置がわかるはず…」


 俺も『守護』の欄に目を向ける。

 載っているのは「トゥプ」のみ。


 「おかしいな。姉ちゃんがいないなんて何かの手違いか?」


 今思えば、この時すでに俺は嫌な予感がしていたのだと思う。


 それでも、現実を見ないわけにはいかなかった。

 震えながら見るスキルの欄。

 そこに【魔術の王】はなかった。




 「だからボクはついて来たくなかったんだ!」


 ため息をつきながらトゥプはそう言う。

 俺だって最悪の気分だ。

 死んだけどチートライフが送れるならいいかと思ったこの世界。

 何も持たずに来ることになるとは思ってなかった。


 「でも、トゥプ。お前がいただけ俺としては良かったかな。」


 こいつはさっき言っていた。

 トゥプの力さえあればスキルは無用だと。

 つまり、まだリカバリーは可能なわけだ。


 「お前、何かすごい力を持ってるんだろ?見せてくれよ。」


 ふらふらと飛んでくるトゥプ。


 「ボクの力は言葉を現象に変えるスキル【万物の変革】だ。このスキルを使えば天変地異さえも起こすことができる。」


 予想以上の当たり能力だ!どうにか死の淵から戻ってくることができた。

 というか、天変地異起こせるなら俺を連れてこずともトゥプで充分だったんじゃないか?

 とはいえ、今は目の前の幸運を喜ぼう。


 そう思ってトゥプに祈りを捧げる。


 「ただ…問題点があって…」


 またこいつは不穏な空気を流そうとする。

 まあ、それだけ強力な力だ。制約の一つや二つくらいあって当然だろう。


 「…姉ちゃんがいないとろくに使えないんだよね!」


 そう言ってペロッと舌を出す。

 よくそんな条件があってあんな強気な発言ができたものだ。

 また方法がなくなって頭を抱える。


 「まあ、ボクの力を使う素質があれば姉ちゃんじゃなくても使えるよ。」


 素質があればだけど。と呟く。

 そんなものにBetする希望はもう持ち合わせてない。

 とはいえ、情報整理のためにもやれることはやっておこう。


 「で、俺はどうすればお前の力を使えるんだ?」 


 「オマエはボクの主だからね、発言すれば自動で使えるはずさ。試しにあそこの木に向かって燃えろって言ってごらん。」


 使い方自体は非常にお手軽だな。

 そう、使い方自体は。


 「燃えろ!」


 気持ちの良い春風が頬に吹いている。

 はい!まあ知ってたよ。

 何も起きないよな。


 「すごいね。こんなに素質がないやつには生まれて初めて合ったよ。」


 未だに嫌味を言い続けるトゥプをキッと睨みつける。


 「言っておくが、お前も何もできない以上俺と同じ無能だ無能!」


 げっとした顔をするトゥプ。


 「まぁ、一旦無能同志、平等な立場で今後について語り合おうか。」


 異世界に来て一時間足らず。

 こうして、俺のチートライフは幕を閉じた。

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