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1.転生

 横には車体が折れた俺の愛車、目の前には派手にフロントをへこませたトラック。

 俺は地面に広がる血だまりの真ん中にいた。


 ……まさか、本当にトラックに轢かれるとはな。




 俺の名前は天城悠斗、ただいまトラックにひかれた高校ニ年生だ。


 話は十数秒前に遡る。


 俺は普通にチャリで下校していただけだった。

 今日は予定より早く授業が終わって最高の気分。

 ルンルンで荷物をまとめ、ダッシュで自転車置場に向かい、颯爽と帰り始めた。


 「今日なら1%くらい余裕で引けそうだな」


 最近入れた新作ゲームのことを考えながら学校前の交差点で信号が変わるのを待っていた。


 ちゃんと青になったのを確認して出発した、そのはずだった。

 信号無視してきたトラックに轢かれて回想THE END、今に至る


 「すり抜けは求めてねぇんだよな」


 消えゆく意識の中そんなしょうもないことを考える。

 たしか交通事故に合う確率って1%もなかったよな。いや、もっと高いか?

 どちらにせよ不要な低確率を引いてしまったことだけは確かだった。


 救急車の音が聞こえる、が目はもう何も映そうとしない。


 「うわぁ、まじでこれ死んだじゃん」


 うるさかった周りの話し声が小さくなっていく。


 そして俺は、気を失った。





 気がつくと、俺は何もない空間にいた。


 重力も感じない真っ白な空間で、床も何も無いのに落ちていかない。

 轢かれたはずの俺の身体はいつの間にか治っている。


「残念だったのぅ」


 声がした方を見る。


 そこに立っているのは荘厳なお爺さん。

 絵に描かれているような体中に布を巻き付けたような恰好をしている。

 直感的にこの人は神様だと、そう理解できるオーラがある。


 「儂はこの世界の神じゃ。残念だがお主は死んでしもうた」


 なるほど…これは確定演出だな。

 異世界物を読み続けてきた俺にはわかる。

 これはあれだ、転生するついでに使命とチートを授けられるパターンだ。


 「そこで提案なのじゃがお主には異世界に行ってもらおうと思う。」


 「はい!何でもやらせていただきましょう。」


 神様のお願いは承諾するに越したことはない。

 難題であればあるほどチートがつくのもお約束だ。

 そもそも転生者に拒否権なんてない。


 そんな俺を見て神様はにやりと笑う。


 「お主、動揺しておらんな。さては異世界物を読み慣れておるのじゃろう。儂としても説明が楽で助かるわ!説明は後じゃ、お主、能力を選ぶのじゃ!」


 理解があるようで助かる。

 異世界転生といえばいろんな特殊スキルが強い……が


 「最強の魔術師になりたいです。」


 やはり異世界のロマンといえば魔術だ。

 魔術なき異世界に価値などあるのだろうか。


 「不老不死や未来予知を望むこともできるのに魔術が使いたいと来よったか!


 手をたたきながら笑っている神様

 だって魔術は男のロマンでもある。

 誰でも一度は右目が疼くのが日本男児なのだ。


 「よいじゃろう。あらゆる魔法を習得できる才をお主にやろう。その名もスキル【魔術の王】じゃ!授けるともう変更はできないが良いか?」


 迷うことはない。

 魔術さえ使えたら何だっていい。


 大きく頷くと神様はまた笑う。


 「それでは使命について説明するぞ、お主には魔王を倒して欲しいのじゃ。彼の世界に住んでいる人々は日々魔王軍の進行に怯えながら過ごしておる。あとの詳しい説明はあちらでこやつらにやらせよう。来るのじゃトゥプ、セファー。」


 神様はそう言って杖を振り上げる。

 光を発しながら何かが表れた。

 妖精みたいな見た目の二人組だ。

 一人は銀髪ツインテールのロリータ、もうひとりは黒髪ショートで貴族が着てそうな服装だ。


 「フッフッフッ。とうとうボクの出番か。ボクの力があればキミの力なんて用無しのゴミスキルだね。」

 「ちょっと、そんなことを言うのはこの口かしら?お姉ちゃんはそんな風に育てた記憶はありません!」


 そうやってギャーギャー言い合っている。

 おそらく銀髪が姉、黒髪が弟なのだろう。

 小さなふたり組が騒いでいる様子は可愛らしい。

 何か聞き捨てならない言葉が聞こえた気がするが、まぁ気にしない。


 「というわけで、お主にこやつらを『守護者』として授けよう。うるさいやつらじゃが、セファーはお主に向こうでの知識を与えてくれる。トゥプの能力はセファーといっしょにおれば敵なしじゃ。まさに、全知全能の仲間となってくれよう。」


 横で弟のほうがうんうんと頷いている。

 多少言動が気に障るが、俺のチートライフのためになってくれるというのなら許してやろう。


 「よろしくな、俺は悠斗だ。」

 「無能な人間の名前なんて覚える価値はないね」

 「こらっ!よろしくって言われてるでしょ。アタシがセファーよ。よろしくね!」


 ある程度のことは寛容に受け入れる心は異世界に行くための必須スキルだ。

 怒りを堪えてにこやかな笑顔を絶やさないようにする。

 そんな様子を神様はニコニコして見守っている。


 「準備もできた様子じゃし送り出そうかのう。気を付けて行ってくるんじゃぞ。」


 足元に魔法陣が表れて光りだす。

 こんなにあっさり出発するんだ。


 「行ってきまーす」


 セファーは手をバタバタと振った。

 俺も、拳を握って異世界に行くことを実感する。


 これが、俺の転生無双物語の開幕だ!




 『スキル【魔術の王】を習得しました』

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