友達、だよね
色々な気持ちをいっぱい込めて礼を言った。
みいこはただ笑っていた。
教室へ行く途中、みいこは何も聞かなかった。
その代わり、真宵がいなくなってからのクラスのこと、進路のこと、先生が変わったことを話してくれた。
みいこに気を遣わせていることが胸に痞えて、どうしようもなく心苦しい。
友達ならば自分から話すべきだ。
大丈夫だ、女の子に話せたのだから。
きっと今回も上手くいく。
「……あのさ、みいこ」
「ん、何?」
「私が学校をずっと休んでた理由はね……」
「待って。言わないで」
みいこは真宵の口元に手を覆い被せてきた。
真宵はみいこの挙動に何でと口の中で呟く。
「聞きたくないの。そういう話は」
解放されると喘ぐように空気を吸い込み、弱々しい声で聞いた。
あるいは、涙声で。
「どうして……」
「あたしはさ、あんたの境遇とか、全く、全然、これっぽっちも興味ないの。今が良けりゃそれで良いの。過去を聞かないんじゃない。聞きたくないのよ。他人の過去話なんて聞いてどうしろってのよ。え? 同情してほしいの? 涙流して辛かったね……とか言ってほしいわけ? キモッ。バカじゃないの? 頭湧いてる。アホくさ」
一息にまくし立てられ、何も言えずに呆気に取られる真宵。
みいこの知らない一面だ。
「みいこって……そういう性格だったんだ……私、知らなかったよ……」
「何? あたしの性格に何か文句あるの? 表面上だけの付き合いってのは、よくあることじゃない。何ショック受けたような顔してるのよ」
「でも私のこと、心配したって」
「それは言葉のあ、や。それにあれは人前だしー。でも今日で終わりだから。誰があんたみたいなキモい奴のこと、心配するってのよ。仲良くしたがるかっての。マジありえない。罰ゲームで仕方なく友達になってあげてただけだしー」
「そんな……嘘。だってずっと優しくしてくれて、今日も手を引いてくれた」
「だーかーらー、今日でちゃんと正体明かしたでしょうが! あんたってホントしつこいのね、もう。っていうか、にぶっ! じゃあこれでわかる?」
みいこは制服のポケットから紙を取り出して、押し付けた。
「何、これ……“嫌われ者の星屑真宵と友達になる”……?」
「そ。よくできましたー。これでわかったでしょ。元々ここに居場所なんてないんだってこと。だからもう帰れば? ここって辛い思いしてまで来るようなところ?」
それでもまだみいこのことを信じている。
罰ゲームで友達になってくれていたのだとしても、さっきのあの言葉は、本心だと思うから。
それに、自分のことを心配してくれている、心のどこかで友達だって思ってくれていると。
教室に入ると、壮絶ないじめが待っていた。