表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛こそ必要悪で正義 -sins-  作者: 社容尊悟
Ⅰ 生徒と先生
5/96

友達、だよね

 色々な気持ちをいっぱい込めて礼を言った。

 みいこはただ笑っていた。


 教室へ行く途中、みいこは何も聞かなかった。

 その代わり、真宵がいなくなってからのクラスのこと、進路のこと、先生が変わったことを話してくれた。

 みいこに気を遣わせていることが胸に痞えて、どうしようもなく心苦しい。

 友達ならば自分から話すべきだ。

 大丈夫だ、女の子に話せたのだから。

 きっと今回も上手くいく。

「……あのさ、みいこ」

「ん、何?」

「私が学校をずっと休んでた理由はね……」

「待って。言わないで」

 みいこは真宵の口元に手を覆い被せてきた。

 真宵はみいこの挙動に何でと口の中で呟く。


「聞きたくないの。そういう話は」

 解放されると喘ぐように空気を吸い込み、弱々しい声で聞いた。

 あるいは、涙声で。

「どうして……」

「あたしはさ、あんたの境遇とか、全く、全然、これっぽっちも興味ないの。今が良けりゃそれで良いの。過去を聞かないんじゃない。聞きたくないのよ。他人の過去話なんて聞いてどうしろってのよ。え?  同情してほしいの? 涙流して辛かったね……とか言ってほしいわけ? キモッ。バカじゃないの? 頭湧いてる。アホくさ」

 一息にまくし立てられ、何も言えずに呆気に取られる真宵。

 みいこの知らない一面だ。

「みいこって……そういう性格だったんだ……私、知らなかったよ……」

「何? あたしの性格に何か文句あるの? 表面上だけの付き合いってのは、よくあることじゃない。何ショック受けたような顔してるのよ」

「でも私のこと、心配したって」

「それは言葉のあ、や。それにあれは人前だしー。でも今日で終わりだから。誰があんたみたいなキモい奴のこと、心配するってのよ。仲良くしたがるかっての。マジありえない。罰ゲームで仕方なく友達になってあげてただけだしー」

「そんな……嘘。だってずっと優しくしてくれて、今日も手を引いてくれた」

「だーかーらー、今日でちゃんと正体明かしたでしょうが! あんたってホントしつこいのね、もう。っていうか、にぶっ! じゃあこれでわかる?」

 みいこは制服のポケットから紙を取り出して、押し付けた。

「何、これ……“嫌われ者の星屑真宵と友達になる”……?」

「そ。よくできましたー。これでわかったでしょ。元々ここに居場所なんてないんだってこと。だからもう帰れば? ここって辛い思いしてまで来るようなところ?」

 それでもまだみいこのことを信じている。

 罰ゲームで友達になってくれていたのだとしても、さっきのあの言葉は、本心だと思うから。

 それに、自分のことを心配してくれている、心のどこかで友達だって思ってくれていると。


 教室に入ると、壮絶ないじめが待っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ