修道女アキヤ
とある教会の仮聖職者、アキヤ。
ここの修道女である。
彼女の元にやって来るのは、禁断の愛を犯した者。
今日も一人、やって来た。
アキヤは洗礼の儀式を執り行う。
「今ここで汝の罪は洗い流されることになろう」
「ありがとうございます……ありがとうございます」
涙を流す少女にアキヤは話を聞いた。
気の遠くなるような、長い、長い話だった。
それでも静かに聞いていた。
少女の話が終わった後、アキヤは問う。
「貴女のお名前は」
「星屑真宵と言います」
「まよいさんですか。私はアキヤ。また何かあったら話をしに来てくださいね」
「はい! ありがとうございます!」
星屑真宵は頭を下げて、教会を去っていった。
アキヤは彼女がいなくなるまで手を振って、教会のドアを閉めて鍵をかけた。
ここからはこの教会ならではの、修道女の仕事の時間。
日記をつけるのだ。
教会の奥の部屋、アキヤの自室で。
「さて、今日は……生徒と先生ですか。これはまた甘美なお話ですね。修道女たる私の煩悩が弾けてしまいそうですよ……」
平静を装いつつも、アキヤの胸は高鳴っている。
早く日記をつけたい。
自分の世界に飛び込みたいという思いが、溢れてくる。
自室は書斎。
ドアを開けて、ふうとため息をつく。
「ううん……仮聖職者になって良かった……」
感動のあまり、涙する見習いの聖職者。
万年筆を手に、羊皮紙に文字を記していく。
「さてさて、日記をつけましょう……」
一日につき、たった一人だけしか受け入れない辺鄙なところに位置する教会。
今日もたった一人で懺悔日記を記すのだ。