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激おこステラさん

「っ!?」

 まさしく、ステラが言うようにミレーネが元気になった(うれ)しさに(ひた)っていたレオナルドは肩をビクッとさせるとちゃんと現実に戻ってきて、ミレーネと抱き合っている自分に(あわ)てた。

 喜びのあまり勢いで抱きしめてしまったが、女の子相手にこれはよろしくないと力を(ゆる)め、ミレーネの肩に手をやりそっと自分から(はな)す。

「レオナルド様……?」

 ミレーネはそんなレオナルドの態度に小首を(かし)げる。

 するとそのとき、密着していたからこそ何とか(たも)たれていたミレーネの外套(がいとう)がはらりと落ちてしまう。

 そうすると当然レオナルドの目に下着姿のミレーネが飛び込んでくる訳で……、

「ご、ごめん!ミレーネ!」

 レオナルドは心臓をバクバクさせながら外套を(ひろ)いミレーネに羽織(はお)らせて体を隠した。

 ここに来たときにはそれどころではなかったため気にしていられなかったが、こんな風に一度落ち着いてしまったらドギマギしないなんて無理だ。

「……お見苦しいものをお見せしてしまい申し訳ございません」

 ミレーネは羽織らせてもらった外套を手でキュッと(つか)みながら謝罪した。

「そんなことない!むしろごほ…、っじゃなくて!ミレーネだってそんな恰好(かっこう)俺に見られるのは嫌だっただろ。本当にごめん!」

「……レオナルド様にでしたら私はいいですよ?」

「ふぁっ!?」

 レオナルドは()頓狂(とんきょう)な声を上げ、みるみるうちに顔が赤くなっていく。

「ふふっ、お顔が真っ赤ですよ?()()()()

「っ、こんなときにまで揶揄からかうなよ!」

 坊ちゃまという言葉で揶揄われていたことを察したレオナルド。

「ふふっ、ふふふっ、申し訳ございません」

 ミレーネは普段のように、いや普段よりも少しだけ表情(ゆた)かに笑っているが、内心ではレオナルドと同じように心臓をドキドキさせていた。

 さらりと出てしまった自分の言葉を揶揄っただけだと何とか誤魔化(ごまか)すことはできたようだが、()()()()()()()()()()()()()

 ネファス達に見られるのはあれほど恐怖と嫌悪(けんお)しか感じなかったのに、だ。

 ミレーネは自分の気持ちがよくわからなかった。


 そこにステラの()めた声がレオナルドの頭に(ひび)いた。

『……よくもまあ私の言葉を無視して(たわむ)れていられますね、レオ』

(っ!?む、無視してる訳じゃない!ちゃんと聞いてるよ!?今の流れは不可抗力(ふかこうりょく)だっただろ!?)

『わざとやっているようにしか思えませんでしたが?』

(違うって!こいつらをどうするか、って話だよな?ちゃんとわかってるから!)

『ええ』

 レオナルドがチラリと床に(ころ)がったままのグラオムとネファスに目を向けると、視線を感じた二人は短い悲鳴を上げた。

(……本当どうしよ?)

 レオナルドとしてはミレーネがこうして回復してくれたことが大きく、今は二人に対し殺したいほどの怒りや憎しみは(いだ)いていない。もっと()らしめてやりたい思いはあるがそれは殺意ではなかった。

 だがそこで、自分よりも余程強い感情を抱いているであろうミレーネを無視して決めることはできないと思ったレオナルドは、咳払(せきばら)いをして雰囲気(ふんいき)をあらためるとまっすぐミレーネの目を見つめた。

「ミレーネ。俺がここに来たのはミレーネの復讐(ふくしゅう)を止めるためだったんだ。けど実際にはあんなことになってて……。来るのが遅くなって本当にごめん」

 まずは助けるのが遅くなってしまったことを(あやま)るレオナルド。

「いえ、そのようなことは……」

「それでさ……、本題はここからなんだけど……、こいつらのことやっぱりまだ殺したい、かな?」

 グラオムとネファスから再び短い悲鳴が上がる。ミレーネはそんな二人を(さげす)むような目で一瞥(いちべつ)すると、外套を持つ手に力をこめながらレオナルドに真摯(しんし)な言葉を()げた。

「……私は確かに復讐のためにここに来ました。けれど、私は戦いに(やぶ)れました。そしてレオナルド様に助けていただきました。ですから、私にどうするかを決める権利はないと思っています。レオナルド様の判断にお(まか)せ致します」

「ミレーネはそれでいいの?」

「はい」

「そっか……」

(ん~……、あっ、そう言えばさ、黒装束達と戦ってるとき、ステラは何か(ばつ)を与える方法があるって言ってなかったっけ?それってどんなやつ?)

『……今さらそれを聞くのですか?私があれだけ言っても止めようとしなかったというのに随分(ずいぶん)都合(つごう)の良いことですね』

(ステラさ……もしかしてめっちゃ怒ってる?)

 (おそ)る恐るレオナルドが(たず)ねると、

『…………』

 ステラは無言を(つらぬ)いた。レオナルドにはそれが肯定(こうてい)しているようにしか思えなかった。

(ステラさん……?ごめん。謝るから許してくれないか……?ステラには悪いことしたって思ってるけど、あのときはミレーネのことがあって頭に血が(のぼ)ってたんだよ……)

 弱りきった様子でステラに謝るレオナルド。

 するとそこでミレーネが口を開く。

「あの…レオナルド様」

「ん?どうしたの、ミレーネ?」

「レオナルド様が戦われているとき、女性と(おぼ)しき声が聞こえまして……。その声はレオナルド様のことをレオと(した)しげに呼び、何やら与える罰に考えがあると言っていました。今はもうそんな声は聞こえませんが、レオナルド様は何かご存知ですか?」

 ミレーネの言葉に(おどろ)いたのはレオナルドとステラだ。それは(あき)らかにステラの言葉だったから。ステラの声は霊力を持つレオナルドにしか聞こえないはずなのに……。

「あ~~っと、そんな声がミレーネに聞こえたの?」

「はい」

 ミレーネはレオナルドの目が泳いでいることに目ざとく気づき、声の主についてレオナルドが知っていると確信した。

(ステラ!どういうことだよ!?なんかステラの声がミレーネに聞こえてたみたいなんですけど!?)

『……レオがミレーネの体内に霊力を流したことによる一時的なものでしょう。今は聞こえないと言っていますし』

(マジかよ……。けど、そんなことでステラの声が他の人にも聞こえるなんて初耳なんですけど!?)

『……知りませんよ。私だってまさかそんなことが起こるなんて思ってもみませんでした。こんなこと初めて知ったことです』

 ツンとしたステラの言い様にレオナルドはがっくしと肩を落とす。ステラさんは先ほどから激おこのようだ、と。まあそれもすべてレオナルドが悪いのだが。

(わかった……。それはもういいよ。けどさ、ミレーネもこう言ってることだし、俺としてもステラの言う罰ってのがいいかなぁって思うんだけど、どうかな?)

 レオナルドは(うかが)うようにして丁寧(ていねい)に語りかける。すると―――、

『……はぁ、もういいです。わかりました。では倒れている四人にレオの霊力を流してください。私が(のろ)いをかけます』

(の、呪い!?)

 突然物騒(ぶっそう)な言葉が出てきてレオナルドは驚愕(きょうがく)する。

『はい。と言っても、精霊術に変わりありませんが。内容は―――』

(お、おう……)

 ステラが話す内容にレオナルドは思わずぶるりと(ふる)えた。ステラは随分とえげつないことを考えていたようだ。

(でも、それくらいしてもいいかもな)

 だが、グラオム達の所業(しょぎょう)を考えればステラの言うことも妥当(だとう)な気がしてきたレオナルドは覚悟を決めた。

『ええ。これくらいは当然でしょう。むしろ殺されないことを泣いて喜ぶべきです』

 レオナルドは、ステラがドヤっている姿を幻視(げんし)した。

(そだね……)

「……ミレーネ、今からこいつらに罰を与えようと思う。それでミレーネの復讐についても手打ちにしてもらえるか?…俺と一緒にクルームハイト家に帰ってくれるか?」

「はい。承知(しょうち)致しました」

 ミレーネはレオナルドに(うやうや)しく頭を下げた。

 こうして、ミレーネの返事を聞いたレオナルドは、意を決して、グラオム、ネファス、そして黒装束達へと順番に霊力を流し込んでいくのだった。

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