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【連載版】死亡エンドしかない悪役令息に転生してしまったみたいだが、全力で死亡フラグを回避する!  作者: 柚希乃愁
第二章

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初対面

 レオナルドがブラックワイバーンと戦ってから一週間が過ぎた。

 この日の朝、食後のお茶を飲んでいるときに、フォルステッドが真剣な表情で口を開いた。大事な話がある、と。

「つい先日だが、黒いワイバーン―――ブラックワイバーンというワイバーンの変異種(へんいしゅ)が発見されたらしい」

 セレナリーゼはともかくフェーリスも知らない話だったようで、二人とも(おどろ)きに目を見開いている。

「っ!?げほっ、ごほっ!!?」

 レオナルドはちょうどお茶を口に入れたタイミングで聞いてしまい、盛大(せいだい)(むせ)てしまう。

「どうした?レオナルド」

 フォルステッドが(あき)れのこもった目を向ける。

「い、いえ。ちょっと変なところに紅茶が入ってしまったみたいです」

「そうか。気をつけろよ?」

「はい。話の腰を折ってしまってすみません……」

「それで、そのブラックワイバーンはどうなったの?」

 いつもならレオナルドに一声(ひとこえ)かけそうなものだが、なぜか強張(こわば)った表情でフェーリスが(たず)ねる。魔物のことなんて興味(きょうみ)がないと思っていたからレオナルドとセレナリーゼはこちらにも驚いてしまう。

(もしかして怖いのかな?)

『どうでしょうね』

 フォルステッドは一度フェーリスに(うなず)いてから答えた。

「ブラックワイバーンはすでに倒されたそうだ。というか、倒されたから冒険者ギルドに情報がいったというのが正しいだろう。しかも、倒したのは、レオナルドやセレナリーゼと年の変わらない黒髪の少年ということだ。名前をトーヤというらしい。ここムジェスタでは今この少年の(うわさ)でもちきりだ」

「たお、された?ブラックワイバーンが?」

 フェーリスは驚きを隠せない様子で呆然(ぼうぜん)(つぶや)く。

 セレナリーゼは素直(すなお)驚嘆(きょうたん)しているようだ。


 一方、レオナルドは心臓をバクバクさせ、冷や汗もかいていた。

『レオ、これは……』

(……ああ、信じたくないけど、間違いなく変装(へんそう)した俺の話だな。そんなに噂が広がってるなんて思わなかった)

『どうするのですか?』

(どうしようもないだろ。このまま(なぞ)の少年トーヤ君でいてもらおう。でももう王都の冒険者ギルドには行かない方がいいかもな。飛べるんだし、これからは色々違うところに行こうか)

『その方が良さそうですね』

 レオナルドとステラがそんなやり取りをしていると、

「そのブラックワイバーンを倒したトーヤという少年はいったい何者なの?」

 フェーリスが少年の正体について尋ねた。先ほどからやけに積極的だ。

詳細(しょうさい)はわかっていない。冒険者という訳でもないらしい。だが、大きな手掛(てが)かりはある。それは彼が黒髪ということだ。一人だけ、私には心当たりがあった。レオナルド達と同じ年で、魔力測定の際、セレナリーゼよりも大きな魔力を(ゆう)していた、歴代(れきだい)でも最高位の少年、スヴェイト男爵(だんしゃく)家のアレクセイ君だ」


「っ!?」

 レオナルドは変な声が出そうになるのを何とか()み込んだ。だが、心臓は今にも爆発(ばくはつ)してしまいそうだ。

 一方、尋ねたフェーリスは考え込むようにアレクセイの名を呟いていた。

「彼が偽名(ぎめい)を使って活動している可能性が高いと私は考えている。そこで、レオナルドとセレナリーゼに聞きたい。二人はアレクセイ君に会ったことがあるか?」


 ()かれた二人は(そろ)って首を横に()り、ありません、と答えた。ただ、レオナルドは目が泳ぎそうになるのを必死に(こら)えながらだったが。


「そうか。もしも(くだん)の少年がアレクセイ君だとすれば、彼は今後もっと注目を集めていくだろう。すでにシャルロッテ様が彼と接触(せっしょく)している。政治の話ではあるが、二人も無関係ではいられないだろう。二人とも心に(とど)めておいてくれ。話は以上だ」

 こうしてフォルステッドの話は終わった。


『レオ?何だか大変なことになってますけど?』

 冷たい。ステラの声が非常に冷たい。ステラの言葉がレオナルドの心にぐさりと()()さる。

(んぐっ、わかってるよ!……すまん!アレク!)

 レオナルドは申し訳なさでいっぱいになり、まだ会ったことのないゲームの主人公に心の中で平身低頭(へいしんていとう)、最大限の謝罪(しゃざい)をするのだった。


 この日の午後、セレナリーゼはミレーネを()れて王城へと来ていた。

 シャルロッテからお茶会の誘いを受けていたからだ。

 セレナリーゼが(さら)われた事件―――、いやセレナリーゼが次期当主になって以降、シャルロッテからお茶会に誘われることが増えていた。そう、自分だけが。この(かん)、レオナルドが誘われたことは一度もない。

 だいたい月に一度程度ある王女からの誘いをセレナリーゼに断ることなんてできるはずもなく、毎回きちんと招待(しょうたい)に応じている。


 そんな訳で、シャルロッテの侍女(じじょ)に案内されてセレナリーゼが庭園に到着(とうちゃく)すると、そこにはシャルロッテの他にもう一人の人物がいた。

「いらっしゃい、セレナリーゼ」

「シャルロッテ様。本日はお(まね)きくださり、ありがとうございます」

 セレナリーゼは綺麗(きれい)なカーテシーを行う。だが、シャルロッテと一緒のテーブルに()いているもう一人の人物、同年代と(おぼ)しき黒髪、黒目の少年が気になってしまう。今朝、フォルステッドから話を聞いたばかりだからだ。

(もしかして彼は―――)

 セレナリーゼの視線に気づいたのか、シャルロッテが面白(おもしろ)そうに笑みを浮かべる。

「そうそう。今日はもう一人招待していたの。セレナリーゼは会うのは初めてかしら?紹介するわね。彼はアレクセイ=スヴェイトよ。()()()、あなたからも自己紹介してくださいな」

(アレク!?)

「ああ、わかってるよ、()()()

(シャル!?)

 王女と男爵家の嫡男(ちゃくなん)愛称(あいしょう)で呼び合っていることに、しかも対等に話していることに、セレナリーゼは衝撃を受ける。自身の価値観ではありえないことが目の前で起きており、頭が混乱していた。


「初めまして。アレクセイ=スヴェイトイと申します。セレナリーゼさんに出会えて光栄(こうえい)です。ぜひ、僕のことは気軽(きがる)にアレクと呼んでいただけたら嬉しいです」

 アレクセイは立ち上がると、セレナリーゼの近くに歩み寄り、その整った顔立ちで(さわ)やかな笑みを浮かべながら自己紹介し、胸元に手を当て正式な礼をした。

「……ご丁寧(ていねい)にありがとうございます。セレナリーゼ=クルームハイトと(もう)します。以後(いご)お見知りおきを。アレクセイ様」

 ゲームでは本編が開始してから出会うはずのアレクセイとセレナリーゼが初めて言葉を()わした瞬間だった。

「そんな。様付けなんてやめてください。僕らは同い年なんですから」

「そうよ、セレナリーゼ。これから親交を(はぐく)もうっていうのに他人行儀(ぎょうぎ)はよくないわよ。そうだわ!(わたくし)もこれからはセレナって呼ぶから、私のこともシャルって呼んでくださいな?」

 それはお願いの形に見えて、命令に他ならなかった。少なくともセレナリーゼはそう受け取った。

「……かしこまりました。……では、シャルさん、とお呼びさせていただいてもよろしいでしょうか?」

「ええ、もちろんよ」

「それでは、アレクさん、とお呼びさせていただきたいと思います」

 シャルロッテの了承を得たセレナリーゼはその流れでアレクセイの呼び方も変える。

「アレクでいいんだけどなぁ」

 あくまで、さん付けするセレナリーゼに、アレクセイは頭に手をやり苦笑を浮かべた。

「アレク、無理を言ってはダメよ。少しずつ仲を深めればいいのよ。でもセレナにも一つ。これから仲を深めていくためにも身分は気にしないこと。いい?」

「……はい」

 これは王族である自分に対して(かしこ)まる必要はない、という意味だけではない。男爵家であるアレクセイに対し、身分を持ち出すなという意味だとセレナリーゼは理解した。

「そうだね、シャル。あ、そうだ。僕もセレナって呼んでもいいかな?」

「……はい」

 話しの流れ上、セレナリーゼに否定することはできなかった。

 だが、何なのだろうか、これは。

 セレナリーゼは疑問でいっぱいだった。

 先ほどからシャルロッテとアレクセイはすでに何とも気の置けないやり取りをしている。同年代というだけで、身分を超えてこれほど親しくなれるものなのだろうか。王立学園は確かにそういう場所だと聞き(およ)んではいるが。しかも―――、

(レオ兄さま以外の男の人にセレナと呼ばれることになるなんて……)

 初対面の男性にいきなりセレナと呼ばれ、セレナリーゼは強烈(きょうれつ)な不快感を(いだ)いていた。


 ゲームでも出会ってから少しすれば互いに愛称で呼び合うようになるアレクセイとセレナリーゼ。だが、出会ったタイミングが違うからか、はたまた別の理由か、セレナリーゼの感情はゲームとは大きく(こと)なるようだった。


 こうして、三人でのお茶会が始まった。

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……この王女と原作主人公の頭大丈夫かな……
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