表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/112

義妹

 準備を()ませたレオナルドは、ミレーネの先導(せんどう)で、ダイニングへと向かう。

 ミレーネが扉を開け、中に入るとすでに両親と妹が着席していた。

 彼らは一斉(いっせい)にレオナルドの方に目を向ける。

「おはよう、レオナルド」

「おはよう、レオ」

「おはようございます、レオ兄さま」

 上から順に、レオナルドの父、母、妹の言葉だ。

 父は名をフォルステッドと言い、金髪碧眼(きんぱつへきがん)優男(やさおとこ)といった印象だが、剣術も魔法も実力が高く、引き締まったいい体をしている。

 母は名をフェーリスと言い、(くり)色の髪に青い瞳で、レオナルドを見る優しげなその表情からわかる通り、おっとりとした雰囲気(ふんいき)(かも)し出している。

 そして最後に妹だが―――、レオナルドはその最後の人物に目を()め、少しの間固まってしまう。

 プラチナブロンドの(つや)やかな髪に、紫水晶のような瞳。髪はまだ背が小さいためか、腰の辺りまであり、成長したら絶対に美人になるとわかるほど愛らしい顔立ちをしている。セレナリーゼは三月生まれのため、少し前に十歳になったところだ。

(わかってはいたけど、本物のセレナだ……)

 前世の記憶のせいで、今までとは違った感じ方をしてしまうレオナルド。近い表現だと感動、だろうか。


 ちなみに、ゲームではプレーヤーにわかりやすくするためか、一週間が七日、一か月が三十日、一年が三百六十日となっていた。そしてこの世界もそれは同じだ。

 加えて、実に日本のメーカーが作ったという感じだが、年度は四月開始のため、レオナルドとセレナリーゼは同級生として学園に入学することになる。いわゆる早生まれというやつだ。


 ゲームで判明(はんめい)している通り、セレナリーゼはレオナルドの(じつ)の妹ではない。今はまだセレナリーゼがその真実を知らないのはストーリーが進んでから知ることなのでいいが、実はレオナルドはつい最近それを知ってしまった。深夜トイレに行ったときに、偶然(ぐうぜん)フォルステッドとフェーリスが話しているのを聞いてしまったのだ。

 以来、レオナルドはセレナリーゼとの接し方がわからなくなってしまい、ギクシャクしたまま今に(いた)っている。同時期に判明したセレナリーゼの魔力量がレオナルドの態度に拍車(はくしゃ)をかけていた。セレナリーゼのことが、自身の立場を(おびや)かす人物に思えて仕方(しかた)なかったのだ。ゲームでは父から聞いたというだけで、具体的にいつレオナルドがセレナリーゼのことを義妹だと知ったかまでは明言(めいげん)されていなかったが、ゲームの補完(ほかん)がされたみたいで今のレオナルドには(みょう)な納得感があった。


(セレナが薄っすら光って見えるのは魔力、なのか?それにしては父上も母上も全く光ってないけど……)

 今までのレオナルドにセレナリーゼが光って見えていたという記憶はない。前世の記憶を思い出したことが影響(えいきょう)しているのだろうか。少し考えたが答えなんてわからなかった。


「どうしたレオナルド?」

 呆然(ぼうぜん)としているレオナルドの態度にフォルステッドが(いぶか)しむ。

「あ、いえ、申し訳ありません、父上。何でもありません。おはようございます、父上、母上、セレナ」

 (あわ)てて謝罪(しゃざい)したレオナルドは全員に挨拶(あいさつ)を返すと、自分の席に着いた。レオナルドの言葉にフェーリスとセレナリーゼは驚きに目を見開き、フォルステッドは一層(いっそう)怪訝(けげん)な顔になった。

 ここ一年のレオナルドの態度から自然に謝罪の言葉が出たことがそれだけ予想外だったのだ。レオナルドだけがその事実に気づいていない。

 ちなみに、席は長方形のテーブルのいわゆるお誕生日(たんじょうび)席の位置にフォルステッド、その左手側、扉の位置から見ると(おく)側にレオナルド、反対側にフェーリス、フェーリスの(となり)にセレナリーゼという形だ。

 給仕(きゅうじ)以外のメイドやフォルステッドの側近執事(そっきんしつじ)、つまり筆頭(ひっとう)執事は待機(たいき)するように部屋の(すみ)で立っている。その中にはミレーネもいる。


 レオナルドも席に着き、家族全員が(そろ)ったので彼らは食事を始めるのだった。


 食事の間は(おだ)やかな雰囲気だったが、食後、フォルステッドが家族四人の紅茶を新しく()がせて、使用人全員を下がらせた。室内が家族だけとなったところで、フォルステッドが切り出す。

「今日は皆に大事な話がある」

 その声は真剣(しんけん)そのものだった。表情も(けわ)しい。家族全員がフォルステッドに視線を向け、姿勢を(ただ)す。フェーリスだけは何かに耐えるような苦しそうな表情をしている。

「レオナルド、お前のことだ。この一年、お前が努力してきたことはわかっているつもりだ。その理由もな。だが、このままではお前は(こわ)れてしまう。親としてこれ以上は見ていられんのだ。よって決断した。レオナルド、お前ではなくセレナリーゼを次期(じき)当主とする!」

 言い切ったフォルステッドは真っ直ぐにレオナルドを見つめる。

「お、お待ちください、お父さま!どうして突然そのようなお話に?私が次期当主だなんて……」

 だが、最初に反応したのはセレナリーゼだった。余程(よほど)動揺(どうよう)しているのか、おろおろとフォルステッドとレオナルドを交互(こうご)に見ている。

 セレナリーゼにとっても非常に重要な話のはずなのに、どうも今フォルステッドが言ったことはセレナリーゼも初耳らしい。

「セレナリーゼ…、突然、ではないのだ。この一年二人をずっと見てきて決めたことだ」

「ですがっ……!」


「はぁ……。まあ、待ちなさい。レオナルド、(だま)ったままだが、今の話を聞いてお前はどう思っているのだ?」

 セレナリーゼがこれほど反応を示しているというのに、先ほどからもう一人の当事者であるレオナルドはずっと黙ったままで少々不気味(ぶきみ)だった。

 だからため息を()きつつフォルステッドから振った。フォルステッドとしては真っ先に()っかかってくるのはレオナルドだと思っていたため意外(いがい)だったというのもある。親として日に日に追い()められていく子を見ているのが(つら)くとも、当人にはそんなこと関係ないだろうから。今後のためにも()き出したい思いがあればすべて吐き出させた方がいい。


 そのレオナルドはというと、頭の中で必死にゲームの展開を思い出していた。

お読みくださりありがとうございます。

面白い、続きが気になるなど思ってくださった方、画面下の☆☆☆☆☆から応援していただけると嬉しいです!

【ブックマーク】や《感想》、《イチオシレビュー》も本当に嬉しいです!

モチベーションがとんでもなく上がります!

何卒よろしくお願い致しますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ