表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/112

メイド

 結局(けっきょく)、レオナルドは結論(けつろん)を出せないまま、メイドがレオナルドを起こしに来てしまった。

 ()()()()部屋に入ってきたメイドはレオナルドがベッドに腰()けていたことに一瞬固まる。寝ていると思っていた相手が起きていれば、それも公爵家のメイドになってから初めての出来事(できごと)であれば、そんな反応も仕方(しかた)のないことだろう。

「おはようございます、レオナルド様。起きていらっしゃったのですね」

 それでもすぐに平静(へいせい)を取り戻し、一度お辞儀(じぎ)をして挨拶(あいさつ)をすると、メイドは足音も立てずレオナルドに近づき微笑(びしょう)を浮かべながら話しかける。朝レオナルドを起こしに来るのはいつもこのメイドだ。

「っ、ああ、おは、よう、ミレーネ……」

 突然(とつぜん)声をかけられ、身体(からだ)をビクッとさせたレオナルドは直前まで考え事をしていたせいで無意識にミレーネに顔を向けてしまい、その顔を引き()らせる。


 彼女の顔をまじまじと見て、ここが間違いなく『Blessing Blossom』の世界だとあらためて理解した。

 ミレーネはゲームのサブヒロインの一人。背中まである水色の髪に同系色のアクアマリンのような瞳をしているクール系のできる美人メイドさんだ。()()()()レオナルドの専属(せんぞく)メイド、という訳ではないが、ゲームではレオナルドの入学とともに、レオナルドの専属メイドとして、学園にもついてきて身の回りの世話をしてくれる。だが、レオナルドが徐々に変わっていってしまい、ミレーネに対して権力と暴力による隷属(れいぞく)を求めるようになる。それでも時にはレオナルドを(いさ)め、ミレーネは耐えていた。それには彼女の過去が関係しているのだが、見上げた公爵家への忠誠心(ちゅうせいしん)だ。だが、他の女性にも手を出していることを知り、それを一番近くで見ていたミレーネはついに耐えられなくなって、レオナルドの友人ということで自身も交流(こうりゅう)のあった主人公に助けを求める、といった流れだった。ミレーネルートの綺麗(きれい)だが、悲しい結末(けつまつ)はよく(おぼ)えている。彼女もまたサブヒロインの中で唯一(ゆいいつ)ハッピーエンドとは言えない終わり方なのだ。というか、こうして考えると、悪役令息であるレオナルドに関係するセレナリーゼとミレーネのヒロイン二人が悲しい結末を(むか)えるようにシナリオが作られているとしか思えない。


 そんな風にざっくりと頭の中でミレーネのストーリーを思い出すレオナルド。それだけならよかったのだが、同時に、この一年でミレーネに向けるようになった(よこしま)な感情まで思い出してしまい、レオナルドは自分という人間に絶望(ぜつぼう)した。


 ミレーネと初めて会ったのはレオナルドが五歳のときのこと。

 今後、クルームハイト公爵家で働くメイドだと両親に紹介(しょうかい)されたのだ。

 以降ミレーネは、仕事をこなしながらも、少し年上のお姉さんという感じで、レオナルドやセレナリーゼのよき遊び相手となってくれた。


 レオナルドがそんな彼女に好意を(いだ)くのは自然なことだっただろう。それは普通なら成長するにつれ、異性に対する(あわ)(おも)いとなったかもしれない。

 だが、レオナルドは自分に魔力がないとわかった一年ほど前から、(あせ)りや苛立(いらだ)ちを(かか)えるようになり、それとほぼ同時期にメイドであるミレーネに対して(ゆが)んだ欲望を(いだ)くようになったのだ。メイド相手なら何をしてもいいのだ、と。


(キモっ!俺キモっ!)

 (もだ)えそうになるのを必死で(こら)える。

 ミレーネは姉のような存在だったのだ。なぜそんな発想になったのか、今振り返って考えてもわからない。

 まだガキのくせに、なんともゲスでクズな典型(てんけい)的悪役貴族だ。


 こんな男(レオナルド)からは早く逃げて、すぐ逃げて、超逃げて、と(さけ)びたくなる。

 自分のことだが、発想が気持ち悪すぎる。

 唯一の救いは、レオナルドの考えがまだ幼稚(ようち)で変なことをミレーネに命令していないことだろうか。


「どうかしましたか?」

 レオナルドの様子を怪訝(けげん)に思ったのか、ミレーネが(たず)ねる。

「っ!?あ、いや……」

 一瞬レオナルドの目が泳ぐが、レオナルドという人間の(さが)なのか、彼の目はミレーネの体のとある一点をつい見つめてしまう。ミレーネへ歪んだ欲望を抱くようになってからのよろしくない習性(しゅうせい)だ。レオナルドが十一歳になったばかりだから、ミレーネは現在十四歳ということになる。

 ちなみに、レオナルドは四月生まれ、ミレーネは六月生まれだ。


 成長が早い、いや、成熟(せいじゅく)が早いと言うべきか、ミレーネはすでに大変立派(りっぱ)なモノをお持ちなのだ。


「……そうですか。でしたら、朝の準備を始めましょう?皆様をお待たせしてしまいますよ?」


 だが、さすがは完璧(かんぺき)メイドのミレーネ。(うす)()みを浮かべ、レオナルドの視線なんて気づいていません、とでも言うように、さっさと朝の準備を始めようとする。

 何を考えているのかよくわからないミステリアスな笑顔や冷たい感じのする態度はゲーム通りといった印象(いんしょう)だ。


「あ、ああ。そうだね」

 色々考えていたこと、ミレーネの胸をガン見してしまったことがバレていないことにレオナルドはほっと安堵(あんど)し、ミレーネの言葉に素直(すなお)(したが)って、着替えなど準備を始めるのだった。

お読みくださりありがとうございます。

面白い、続きが気になるなど思ってくださった方、画面下の☆☆☆☆☆から応援していただけると嬉しいです!

【ブックマーク】や《感想》、《イチオシレビュー》も本当に嬉しいです!

モチベーションがとんでもなく上がります!

何卒よろしくお願い致しますm(__)m

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ