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異変

 レオナルドがセレナリーゼのいる家屋(かおく)()っ込んですぐのこと。

 男に途中路地裏(ろじうら)で気絶させられたセレナリーゼは目を()まし、パニックになった。

 なぜなら手も足も(しば)られ、口には布を()まされていて、何か布袋のような物に入れられているのか視界が真っ暗だったからだ。声も出せず、全く身動きできない状態だった。


「セレナを返してもらうぞ!」


 だが、布袋越しに聞こえた声で急速にパニックが(おさ)まっていく。ずっと身近で聞いていた声。今は声から怒りの感情が伝わってくるほど(あら)くなっているが聞き間違えることなんてない。それはレオナルドのものだった。そして自分が誘拐(ゆうかい)された事実を思い出す。

(レオ兄さまが助けに来てくれた!?)

 レオナルドが来たということはきっと騎士達を(ひき)いてきたに違いない。セレナリーゼは驚きとともに希望が()いてきた。だが、それは続く男達の言葉によって否定されてしまった。


「おいおい。まさかお前一人で来たのか?」

「マジかよ。このガキ、騎士気取りってかぁ?」

 突然入ってきたレオナルドに(おどろ)き、一瞬固まって、騎士達が続けて入ってくると思い(あわ)てた男達だったが、レオナルドが一人だとわかるとすぐにニヤニヤ笑いを浮かべ始めた。

(レオ兄さま一人!?)

 なんで、どうして、とセレナリーゼの中に疑問や不安が広がる。レオナルドは自分と年の変わらない子供だ。それにそもそも戦うための魔力がない。それでは大人の男達と戦うことなんて無理だと思ったのだ。セレナリーゼの考えはこの世界の常識(じょうしき)だった。そして何よりもセレナリーゼだからこそ感じる疑問が大きかった。

 彼女だからこそ感じるものというのはともかく、常識という部分は男達も同じ考えのようだ。言葉や態度からレオナルドのことを(あなど)っているのがよくわかる。


「……もう一度言う。セレナを返せ!」

 室内には同じような布袋がいくつかあるが、セレナリーゼの魔力を感知してどの袋に彼女が入れられているかレオナルドはすでに把握(はあく)している。袋は全く動く様子がないため男達の言っていた通りセレナリーゼは気絶しているのだろう。

「ぎゃはははっ。お前も馬鹿(ばか)だよなぁ?俺達は知ってんだぞ?お前が魔力なしの無能(むのう)だってな。あのメイドならともかく、お前一人でいったい何しに来たんだ?」

「本当だぜ。俺達は元冒険者だ。そんな俺達と戦うつもりかぁ?」

「……素直(すなお)に返さないって言うなら戦ってでも返してもらうさ」

 レオナルドに魔力がないことなど少し調べればわかることだから本人は全く気にしなかった。ただあのメイドならというのは少し引っかかる。男達はどこまで知っているというのか。が、今は些細(ささい)なことだと考えないようにした。

 そしてレオナルドが覚悟(かくご)のこもった言葉を口にするが、男達はニヤニヤ笑いを止めず、方向性を変えてきた。

「妹がいなくなるのはお前にとっても好都合(こうつごう)だろう?」

「何?」

「だってお前さぁ妹のこと(うら)んでるんだろ?聞いてるぞ?」

「そうそう。出来の良い妹に次期当主の座を(うば)われたってな。お貴族様ってのも大変だよなぁ?けどこのまま妹がいなくなれば()れて元通りだぜ?どうだ?お前にとってもいい話だろ?」

(っ……そうだ。私さえいなければレオ兄さまは……)

 男達の言葉にセレナリーゼの胸が痛む。その通りだと思ったから。

「ふざけるな!それは俺も納得済みのことだ。そんなことで恨んだりしない!」

 だが、レオナルドは即座(そくざ)否定(ひてい)する。

「そうかぁ?ならもっといいこと教えてやるよ。お前とあの妹な、血の(つな)がりがないんだぜ?お前は赤の他人に家を奪われたんだよ!」

「なっ!?」

(なぜそんなことまで知ってるんだ!?なんなんだこいつら!?)

 レオナルドは目を見開いて(おどろ)きを(あら)わにした。セレナリーゼのことを知っているのは王国内でも極僅(ごくわず)かのはずなのだ。

(え……?)

 一方、セレナリーゼは袋の中で呼吸も忘れて呆然(ぼうぜん)としていた。男の言っていることがすぐには理解できなかったのだ。

「ぎゃはははっ!さすがに衝撃(しょうげき)が大きかったか?けど事実だぜ?依頼人はお前らのことよーく調べたらしいからな。そんな他人のことなんてよ、放っておけばいいじゃねえか。なぁ?」

「そうだぜ。そうすればお前は奪われたものを取り戻せるぞ?無能のお兄ちゃん?お前が継ぐ方が都合がいいらしいからなぁ」

 魔力がない無能のレオナルドが一人でやって来たからこそ男達は言葉でレオナルドのことを甚振(いたぶ)って楽しんでいるようだ。

(俺が継ぐ方が都合がいい?誰が?なぜ?)

 新たな疑問が浮かぶが、答えなんて出ないため棚上(たなあ)げする。

「……はぁ。言いたいことはそれだけか?セレナと血の繋がりがないなんてお前らに言われなくても知ってる」

 レオナルドはセレナリーゼが気絶していると思っているため、すんなりと肯定してしまった。

(レオ兄さまは知っていた!?私と本当の兄妹じゃないことを?……じゃあ私は本当に?)

「ああぁ?」

「それでもセレナは大切な家族だ!義妹(いもうと)だ!だから返してもらう!」

 レオナルドは心の底からの(おも)いを言い切ると(かま)えを取った。

(レオ、兄さま……)

 レオナルドの断言(だんげん)を聞いてセレナリーゼの目からは涙が(あふ)れていた。(いま)だ信じられない思いが強く、うまく考えることもできないが、レオナルドの言葉は確かにセレナリーゼの心に(ひび)いた。

「チッ!大切だとかなんとかごちゃごちゃ言いやがって。聞いてた情報とちげえじゃねえか!」

「もういい。相手は無能のガキ一人だ。やっちまおうぜ」

 男達もそれぞれナイフを取り出し構えるのだった。


 二対一での戦闘が始まってすぐにレオナルドは苦戦を()いられた。

 人数差はもちろん、相手は武器持ち、レオナルドは素手(すで)という差もあるが、大きいのはやはり魔力だ。男達は以前、身体強化魔法しかできない程度の底辺冒険者だったが、それすらできないレオナルドとは大きな差だ。

 レオナルドは魔物との戦いのように、相手の魔力の動きを読むことで何とか致命傷(ちめいしょう)()けて戦えている状況だった。それでもナイフによって浅い傷がいくつもできていく。

 そんな中、身長差がいい方向に作用して、レオナルドはカウンターの要領(ようりょう)で主にお腹から下に(こぶし)を当て、()りを入れる。アレンとの鍛錬(たんれん)は確実に実を(むす)んでいるのだ。


 だが、それも長くは続かなかった。

 男の蹴りが思い切りレオナルドの胸元に入る。

「かはっ!!!?」

 身体強化されたその蹴りによってレオナルドは大きく吹っ飛んで(かべ)激突(げきとつ)した。

 胸を押さえて激しく()き込むレオナルド。痛みが強いため骨が折れているかもしれない。

「おうおう。これで終わりかぁ?」

(いき)がってた割に随分(ずいぶん)呆気(あっけ)ないじゃねえか」

 まだまだ余裕があるのか、男達はニヤニヤ笑いながらレオナルドに(とど)めを()すべく近づいていく。

「くそっ、まだだ……」

 レオナルドは(あきら)めることなく男達を(にら)みつけながら何とか立ち上がる。

 そのとき――――。

「ぐぁがっ!?」

「うぐぁっ!?」

 男達が急に苦しみ始めた。

 そしてそれは男達二人だけに(とど)まらなかった。

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