4 昼食後
エスぺは、説明の後半を利用することを瞬時に決めた。
「魔力が、二十五、ですか」
ゆっくりと、ことばを区切りながら尋ねる。
「残念ながらそうだ。マスでも五十はあるだろうから、繰り返すが、極めて低い。予想で悪いが、その分をアビリティが補うのだろう」
シルバーがはっきりとした口調で告げる。
「わかりました。自分のことを知ることができ、感謝いたします」
エスぺは残念そうな顔をしてそう答えた。
ターバンの案内で客間に戻る。
正しい応対だっただろうか。エスぺにはそれがわからない。もっと適切な態度があったかもしれない。
行きは遠いように感じたが、帰りはすぐに客間に着いてしまった。途中の光景を覚えていないほどに。
エスぺはふかふかのベッドに横になって、気持ちを切り替えて今後のことを考える。
アビリティは知られてしまった。これはどうしようもない。ただ、魔力が二十五だけあって、あの場にいる二人の反応は冷ややかだった。
陽が高くなったせいで窓からの陽射しはなくなったが、変わらず、小鳥の声は遠くから聞こえてくる。朝と同じ小鳥の声だ。
【えいゆう】からどのようなスキルが派生するのかがわからない……こればかりは考えてもしかたがない。覚悟していたことだ。
なんとかなるだろう。
ドアをノックする音が聞こえ、ポリーニがお辞儀をして入ってきた。
エスペは起き上がった。
「昼食の準備ができました。いつもの部屋にお越しください」
ポリーニの後について食堂に座る。
給仕をしてくれるのも昨日と同じポリーニだ。やはりちらりとエスぺを見て皿を置く。
ご飯の上に、野菜、獣肉を炒めて白いあんとともにかけてある。そしてスープ、サラダ。
食後には紅茶とケーキを出してくれた。
部屋に戻ると、急な眠気に襲われた。耐えきれずにふかふかベッドに横になる。
遠くから、かすかに小鳥の声が聞こえ……
#
#
#
目が覚めると、朝だった。あのまま眠ってしまったようだ。なんだかまだ頭がぼんやりする。ふと横を見ると、昨日と同じようにポリーニが椅子に座っていた。
「おはようございます。よく眠れましたか?」
尋ねながら、ポリーニはじっとエスぺの瞳の動きを観察した。
「おはようございます。とてもよく眠れました。まだぼーっとしますが。昨日の昼から寝てしまったようで、疲れていたのかもしれません」
ペリエのことばに、そうですね、ここに着替えを置いておきます、朝食は昨日の部屋ですので、身支度ができ次第お出でください、そう答えて部屋を出て行こうとする。
ポリーニはドアのところで立ち止まり、振り返ると、
「お疲れのところ申し訳ありませんが、今日は【けんせい】の方がいらっしゃって、稽古があるそうです。朝食はいっぱい食べてくださいね」
そう言ってドアを閉めた。
窓からの陽射しはまぶしく、遠くから小鳥の声が聞こえる。
エスぺは目をこすりながら、ゆっくりと伸びをしたあと起き上がった。




