28 指輪 ②
情報料がそれだけ高額ということは、装飾品、パチモノの線はない。ホンモノの宝具だ。
払えない額ではないが、ほぼ所持金が尽きてしまう。今日これから稼げばいいか。そう自分に言い聞かせて、所持金から20ゴールドを絞り出した。
いくつかのところからかき集めた20ゴールドを受け取ると、老人が説明してくれる。
「これは精霊の指輪という宝具だ。帝国時代のお宝だな。作られたのは帝国の初期か、それ以前だろう。もうこの指輪を作る技術は失われてしまった。技術ってものは右肩上がりに良くなっていくものだと思われているが、高い技術がまるで放棄されたかのように失われるときがあるんだ。不思議なもんだ。この指輪を魔の森で拾ったのなら、運がいいと言える。
指輪をつけたものの魔力をもとにして、精霊を呼び出すことができるが、必ずしもよい精霊、人間にとって都合がいい精霊とは限らない。そもそも精霊に、善悪正誤はないからな。オマエさんのアビリティが【せいれいつかい】なら役に立つかもしれん。一度はめると、精霊の許しがない限り外せないから、覚悟してはめたほうがいい。質問はあるか」
老人の知識の量はメリトの予想を超えていた。ここまで詳しく教えてもらえるとは思いもしなかった。さすが二十ゴールド取るだけはある。
「どうしてそこまでわかるんだ?」
メリトはオヤジがいじっている指輪から視線をオヤジの顔をに移す。
「錬金術師をしているっていうのもあるんだろうな。ここらへんにあるのもその材料なんだが。長く生きたおかげでいろいろ知ることが多くてな、だが、知識ばかりで技術が伴わないから、あまりうまく錬成できずに溜まっちまったが」
そう言って周りのガラクタを眺める。
錬金術ができるのか? そう思ってもう一度鑑定をかけてみると、なるほど、文字が読めた。
【れんきんじゅつ】と出ている。
「もう聞きたいことはないか? ないなら、ワシから聞いてもいいか?」
オヤジは下から覗くような視線でメリト尋ねる。
自分のなにを知りたいのか、不審に思いながら、かまわないが、と言うと、
「その格好からすると、盗賊か? もし盗賊ならなぜギルドを通さない? 周りには知られたくない指輪か? それなら指輪の偽装もしてやるぞ。カネは取るがな」
メリトは、ホウと思う。
偽装ができるならやってもらいたい。宝石が三つも付いていて目立つ指輪だ。つけるにしろ、このままでは目立ちすぎる。しかし、それは、今は後回しだ。
ギルドか。盗賊ギルドってのがあるんだな。その情報は欲しい。が、支払うカネはもうない。どうしたらタダで教えてもらえるのだろう? 無理かもしれんが、素直に聞くしかないか。
「王都の盗賊ギルドにはまだ入ってないんだ。昨日こっちに来たばかりだからな」
「どこから来た?」
「タキアからだ」
そう言って、メリトは冒険者証を見せた。カネはないが、これを見せれば紹介してくれるかもしれない。なんせ、ランク3だからな、と心の中で思う。
「3か。なら、ギルドに紹介してやろう。紹介料は、その若さで3とやらに免じてサービスだ」
「悪いな、助かる」
メリトはうまくいったと思いながら、それは顔には出ないように指輪を受け取った。
オヤジは紙に簡単な地図を書くと、
「ここに行きな。この紙を見せて、修理屋からギルドを紹介されたと言えば話が通じるはずだ」
と言って紙をメリトに渡した。
メリトは礼を言って店を出たあと、ギルドは明日行くことにして、まずは今日の宿代を稼ぐべく、南門に向かった。




