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英雄は悪魔かもしれない  作者: カラフルなステンドグラス
第三章 タキアからの冒険者
26/28

26 遺品

「タキアから来たメリトだ。途中、魔の森でフォレストウルフに襲われていた人を見かけた。助けられなかったが、目についた遺品を持ってきた。門番にこちらに持ってくるよう言われたのだが」

 そう言ってポーチからタキア支部発行のランク3の冒険者証を出し、背中に背負っている袋を一つ下ろした。


 え? どういうこと? この男はエスペじゃないの?


 ラキアは動揺しながら、カウンターに置かれた冒険者証を確認する。特別なナンバー41822もないし、そこには大きな数字の3が見える。


 わたしが渡した冒険者証ではない……


 ふと、思いついて、冒険者証を返却し、ちょっとお待ちください、と言ってラキアは裏に回って魔道具を起動する。


 ごめんなさいと言って戻ってきたラキアに、メリトは袋の一つをカウンターに置くと、

「これが魔の森に残っていた遺品だ。遺体はそのまま魔の森にあるが、おそらく明日にはもう……」

 と最後は言葉を濁した。


 遺品? 誰の? あぁ、魔の森で襲われた人の……この中から[追跡]の発信がある……


「中を確認しますね」

 そう言ってラキアは背負い袋を開けて中身を取り出す。


 着替え、小袋に入った金、洗面道具、水筒、携帯食、剣の手入れをする砥石、タオルなど細々したもののほか、冒険者証も出てきた。ランク2と大きく書かれた、41822のナンバーが入ったカードである。

 そこには自分自身が書き込んだ魔法陣と魔力がのっているのがわかった。


「剣は? 剣はありませんでしたか」

 ラキアが尋ねると、男は、

「見てないが。俺が見た辺りにはなかったようだったが、必要だったか」

 と逆に質問を返してきた。


「あ、いえ、この人はここで一ヵ月ぐらい前に登録した人で、帯剣していたので」

 ラキアがすぐに答えたので、男が尋ねる。

「よく覚えているな」

「えぇ、このナンバーもありますし、指名依頼を達成して昨日ランク2に上がったばかりの冒険者ですから」

「そうか、2に上がったばかりだったのか。それは残念だったな。あ、あと、付近に落ちていた魔石も拾ったのだが、それは俺が売っても構わないか」


 構いません。それからこれもお持ちください、そう言って金の袋をも男の方に押し出した。

 中の金を取らず遺品を持ち帰ったのだ。そのくらいの融通は効かせてもいいだろう。


「悪いな」

 男はそう言って袋を持つとポーチの中に入れた。


「それじゃあ、遺品は預けたから」

 そう言って男は、行きかけたが、すぐに戻ってきて、受け取り窓口の方に歩いて行く。魔石を換金するのだろう。


 ラキアは、剣を、エンチャントの状態を確認したかったと思う。けれど、もう無理だろう。魔の森を探し回るのは危険だ。それに剣がそのままあるとは限らない。持ち去られている可能性もある。

 裏側に回って魔道具の確認をすると、アビリティ【とうぞく】そしてスキルは三種類の表示が出ている。冒険者証もランク3だから相応か。


 ラキアは思う。

 わたしの勘はあの男をエスペだと判断したが、勘違いだったか……

 状況から考えて亡くなったのはエスペだろう。光背1のスキル[剣術]では魔の森は厳しい。死んでしまってもおかしくない。

 しかし、なぜ、魔の森に入ったのか……そこがわからない。


 ラキアはエスペの遺品となった荷物を持って、執務室に報告に向かった。






 ***





 ラキアと眼が合ったときは終わったと思ったが、なんとか切り抜けた。

 メリトは魔石を換金しながらそう思っていた。

 魔石は7ゴールド40シルバーにもなった。



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