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第40話 美少女から聞いた話

 夏休み中に月花(つきはな)さんが、俺の家に来て料理をしてくれることになった。これといった予定の無かった夏休みが、一転して楽しみになった。


 その前に期末テストだけど、今回もきちんと勉強していたおかげで、難なく乗り越えることができた。


 そして学校ではまたしても噂が広まっている。その内容とは、ついに百本桜(ひゃっぽんざくら)美集院(びじゅういん)さんに告白をしたというもの。


 もちろん実際に見たわけじゃないから、本当かどうかは分からないけど、最近また特に百本桜が荒れてきていることを考えると、本当のことなんだろう。



 そして放課後、俺と月花さんは今、美集院さんとカフェで同じテーブルを囲んでいる。話があるからと、美集院さんに誘われたからだ。


「まったく、噂というものは迷惑ですわね」


 金髪縦ロールの女の子が、俺の対面でため息混じりに話す。


「美集院さん、あの噂は本当なんですか?」


 俺の隣に座る月花さんが、俺じゃ聞きにくいことを聞いてくれた。


「ええ、本当よ。ただ断りましたわ」


「えっ? どうしてですか?」


「だってあの男、(わたくし)の外見しか見ていませんもの」


 百本桜と美集院さんは学校を代表するような美男美女だ。でもいくらイケメンだからって、それだけで無条件に上手くいくとは限らない。


「私、いい機会だからいろいろ聞いてみましたの。例えばほら、一年生の女の子に酷い言葉を浴びせたこと、あったでしょう?」


 それはあの一年生のたわわ美少女に百本桜がワザとぶつかって、大勢が注目したところで見た目を罵倒したことを指している。


「私はなぜあんな事をしたのか聞いてみました。そうしたらあの男、『俺はブサイクが嫌いだ』って言いやがりましてっ!」


 なんと驚いたことにあの行動には理由など無かったようだ。強いて言うなら、大勢の前で罵倒したかったからか。ただ見た目が嫌いだから大勢の前で罵倒した。ますます最低な奴だ。


「正直に言いますと、私も見た目に恵まれていますわ。ですけどね、だからといって見た目というどうにもできない部分をバカにすることなんて、私なら絶対にしません」


 そうなんだよ、美集院さんがそういった発言をしたことは一度も無い。月花さんにも優しいし、俺が登校初日にいきなり『私の彼氏になりなさい』と言われたこと以外は、実は良心的な女の子なんだ。


「ですから私はあの男に言ってやりました。『あなたのその考え方が変わらない限り、あなたの彼女になる人なんていません!』と」


 俺があいつに言いたいことを、美集院さんが代弁してくれたかのようでスッキリする。


「美集院さん、よく言ってくれたね! それであいつはなんて言ったの?」


「『ちょっと可愛いからって調子に乗るんじゃねえ!』ですって」


 本当に救いようのない奴だ。救う気にもならないけど。俺が転生する前から評判が悪かったみたいだけど、あの一件以来、『いくら見た目が良くてもあの性格じゃな……』ということが校内に広まった。はっきり言って自業自得。


「美集院さんはいい子だね」


「なっ……! いきなり何を言いますの!?」


 あからさまに慌て出す美集院さん。こんな反応だって可愛いと言っていいと思う。


「あなたには月花さんがいるじゃありませんの!」


「もう、美集院さんっ!」


 今度は月花さんが慌て出した。この二人いつの間に仲良くなったんだろう?


「とにかくですわねっ、私はあなたの彼女に月花さんをおすすめしますわ!」


 学校一とされる美少女から、月花さんへ太鼓判が押された。


「美集院さん、そんなプライベートなことを話してくれてありがとう」


「お礼を言われるようなことじゃありませんわ。月花さんには話しておきたいと私が思ったのです」


 こうして一学期が終わり、夏休みへと突入した。そして今日は俺の家に月花さんが来る日だ。

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