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第28話 話し合い

 放課後、俺は三年生の教室に行き、月花(つきはな)さんの噂を流したと思われる女子生徒と会っている。


「何? さっさと言って」


「二年の月花さんを知っていますか?」


「あー、やっぱりそうくるんだ」


 それはもう「私がやりました」って言ってるも同然だ。理由は……この人を見れば察することができる。金髪ショートにピアス。パッと見の印象は怖いけど、よく見れば整った顔立ちをしていてけっこう可愛い。ということはこの人も見た目で苦労しているのかもしれない。


 なので自分よりも下に見ている月花さんが、イケメン(扱い)である俺と一緒にいることを許せないのだろう。


「俺が何を言いたいのか心当たりがあるようですね」


「場所変えるか。ついて来なよ」


 今からフルボッコにされるんじゃないかと思ってしまうような言葉だけど、放課後とはいえさすがに教室の入り口は邪魔になるので、俺はその提案を受け入れた。



 受け入れたのはいいんだけど、何故ここ? 甘泉(あまいずみ)先輩に相談をした時に行った、屋外で人通りが少ない場所にある、校内のベンチに俺は二人きりで座っている。


 大丈夫なのか? 物陰から仲間がたくさん出て来たりしないよな?


 俺の右側からは甘泉先輩と同じくいい香りが……しているけど、けっこう強いこともあり特にドキドキしたりはしない。何よりも相手にいい印象を持っていないから。


「で、私に何が言いたいんだ?」


「単刀直入に聞きます。月花さんのよくない噂を流したのは先輩ですか?」


「よくない噂? 噂じゃなくて事実だよねぇー。実際にあいつとあんたがいつも一緒にいるところを私も見てるわけ。あのブサイク、体だけはいいからねぇー。どうせあんたも手を出してんだろ」


「違います。月花さんはそんな子じゃありません」


「じゃあどんな子?」


「本当は明るくていろんな表情を見せてくれて、決して人のことを悪く言わない子です」


「へぇー、そこまで褒めるなんて、そんなにあいつの体がよかったんだ? それなら私ともデキるよね?」


 そう言ってこの女子生徒は、俺の太ももに手を乗せて、俺を覗き込むように顔を近づけて来た。確かにこの人も可愛いと思うけど、全くそんな気にはならない。むしろ話すらしたくないほどだ。


「勘違いしないで下さい。月花さんからじゃなくて、一緒にいて楽しいから、俺から望んで一緒に過ごさせてもらってるんです」


「アァ!? そんなわけねーだろ。私よりもブサイクなあいつがあんたみたいなイケメンを連れているなんて、あってたまるかよ!」


 やっぱりそういう考え方の人か。百本桜(ひゃっぽんざくら)といい、どこの世界にもこんな人っているんだな。


「その前に一度でも、きちんと月花さんと話をしてみようとは思わなかったんですか?」


「ちゃんと話したって。でもあいつ下を向いて何も言わなかったんだよ。だからあいつが悪い」


 確か月花さんは、「身の程を(わきま)えろ」とか言われたって言ってたな。ここぞという時にはハッキリと主張する月花さんだけど、自分のことになった途端に静かになってしまうんだ。だからそんなもの話したことにはならない。


「だから根も葉もない月花さんの噂を流したんですか?」


「そうさ、だって生意気だろ? あんなブサイクとあんたみたいなイケメンなんて釣り合うわけがない。あいつの学校での居場所を無くして、退学してくれれば最高だなーって! だから仲間を使って噂を広めたのさ」


 確か甘泉先輩が、この人は素行がよくない人達のリーダー格だと言っていた。だから人を集めることなんて簡単なんだろう。


 それに俺が気になったのは、仲間を『使って』と表現していたことだ。仲間に『頼んで』なら分かるけど、そんなところからも、この人は好きになれないなと思う。人をなんだと思っているんだろう。


「もし仮に月花さんが学校をやめたとしても、俺は毎日でも月花さんに会いに行きます」


 俺はそう言い放った。

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