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第2話 こんな可愛い子がモテないなんておかしい

 俺が教室に入ると、今朝ぶつかってきた美少女が居た。どうやら同じクラスになったようだ。そして目が合った。


 目が合うといえば、教室の視線が俺に集まっている気がする。


 俺は自分の座席を確認すると、五列あるうちの一番後ろの窓際の席の隣へと座った。前には五人ほど。マンガやアニメの主人公がよく座る席だ。そしてその左隣の窓際の席には、あの黒髪ロング美少女が座った。


 これはもう話しかけるしかない。俺がそうしようとすると、あっという間に女の子に囲まれてしまった。


「君、カッコいいね! なんて名前なの?」


冴島さえじまです」


「なんで敬語? ウチらタメっしょ」


「連絡先交換しようよー」


 いろんなタイプの女の子から話しかけられた。ただ座って名乗っただけなのに。


 念のため確認するけど、俺は冴えない。俺は冴えない。大事なことなので二回確認した。くっ、これがイケメン効果か!


 そんな光景を一部の男子たちは面白くなさそうに見ている。


 もう間違いないだろう、この世界は人に対する美的感覚が元の世界と逆転している。

 だから元の世界で冴えなかった俺は超イケメン扱いで、あの美少女は冴えないということになる。俺から見るとあんな可愛い子はそうそういないのに。


「へぇー、この私に釣り合う男子がいるなんてね」


 女の子の波を強引に突き進んで、一人の女の子が俺の前へと姿を現した。すげえ、金髪縦ロールじゃないか! さては理事長の孫だな! きっとツンデレに違いない!


美集院びじゅういんさん、今日も綺麗よね」


「私も美集院さんくらい可愛ければなぁー」


「美集院さん、俺と付き合ってくれよ」


 美集院! 名前が強すぎる! 『美を集める』って最強では? そしてクラスの男女全員がその美貌を絶賛している。この世界で可愛いということは……そういうことだ。俺の好きなタイプではない。好きなタイプは人それぞれだから、そう思うのは普通のことだよね?


「あなた、冴島と言ったかしら? 私の彼氏になりなさい」


 そして高飛車。あまりに思った通りのキャラクターなので、思わず笑ってしまった。


「ちょっ……! 何を笑ってますの!?」


「美集院さんすみません、ただの思い出し笑いです」


 笑ってしまったことは本当に悪いと思ったので、俺は素直に謝った。理由はごまかしたから素直ではないのかな? 


「それで質問の答えを聞かせていただこうかしら。もちろんオッケーですわよね!」


「美集院さんすみません、今日初めて会ったばかりの人と付き合うことはできません。そういうことはお互いをある程度知ってから、改めて確認するものだと思います。あっ、決して美集院さんに魅力が無いと言ってるわけじゃないですよ」


「なっ……! 分かったような口を!」


 美集院さんの顔がみるみる赤くなっていく。これは怒りかな?


 ここでチャイムが鳴り、全員が席に着いた。俺はあの一瞬で、クラスの一部の男子と美集院さんからのヘイトを集めてしまったようだ。あれでも俺なりに誠実に答えたつもりなんだけどなあ。


 今日は午前で学校が終わるため、俺は足早に帰ることにした。でも、どうしてもあの美少女と話しておきたかった俺は、彼女が教室を出てしばらく経った廊下で声をかけた。


月花つきはなさん、待って」


 クラス全体での自己紹介で名前だけは分かっていた。このタイミングでの声かけになったのは、教室だと目立ってしまい、月花さんに迷惑がかかると思ったからだ。


「はい、なんでしょうか?」


 振り返った月花さんはどこか(はかな)げで、それが美しさに拍車をかけていた。


(こんな可愛い子が全然モテないなんて嘘だよな?)


 美的感覚が逆転している世界とはいえ、まだどこか信じることができない。


「あっ……冴島さん、ですよね? 私に話しかけて大丈夫なのですか?」


「えっ? どういうこと?」


「私といると目立ってしまいますよ。だって私、可愛くないから……」


 そう言った声の小ささが、彼女の自信のなさを物語っているかのようだった。

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